ど素人のピュアオーディオ入門 Astell&Kern AK HC4を試す
TGVはたとえ一等客室でもかなり手狭だ。日本の新幹線がいかに素晴らしいか改めて再確認する。
マシなのは電源が取れることだが、この電源もしばしば弱まってストールする。ほんの2時間程度の旅程でも、MacbookProでAIを推論させているとあっという間にバッテリーがなくなってくる。
バッテリーが空っぽになってしまって手持ち無沙汰になったので、日本から届いたUSB-DACを試してみることにした。
USB-DACとしてはAstell&KernのHC-4を使うことにする。理由は、僕が旅行に持ち歩いてるSHURE 50がバランス入力に対応していないからだ。これまでは同じくAstell&KernのHC-2を使っていたが、これはバランス出力オンリーなのでSHURE 50で聞くことができない。
HC-4の先にはアンプとしてやはりAstell&Kernのポータブルアンプ、AK PA10を繋ぐ。出張に持って行くには随分と邪魔に思えるが、いざ試してみると次元の違う音質に改めて驚いた。
HC-4は3.5mmステレオプラグに直接SHURE50のプラグを繋ぐこともできる。試しにやってみると五月蝿すぎて慌ててヘッドセットを放り出してしまった。この設定でちゃんと聞くためには相当本体のボリュームを絞らないといけない。
それではそもそもオーディオをやってる意味がないではないか。
そこで、HC-4からアンバランスの3.5mmケーブルでAK PA10に接続して見るとぐっと音がジェントルになった。この状態ではSHURE 50はパッシブモードとなり、ノイズキャンセリングなどは一切効かないのだが元々の密閉型ヘッドフォンの特徴が生きて余計な雑音は弾いてくれる。
その上で、HC-4からAK PA10に音声を流し込むと、今度は物足りないくらいの音量になったので、iPad miniの音量を思い切ってMAXまで上げる。
予想通り、MAXまで上げても全く煩くならない。これがA級アンプの実力か。
AK PA10のボリュームを少しずつ上げていっても、違和感なく音のスケールが大きくなる。煩くはならない。良いオーディオはどれだけ音を大きくしても煩くならないというのはどうも本当らしい。自分が時速300キロメートル近くで移動しることなど忘れてしまう。
これは間違いなく極上のオーディオ体験だ。
しかしこれは同時にとてつもない沼でもある。
なぜならこれではSHURE50では物足りなくなってしまうからだ。
やはりバランス入力に対応したヘッドホンが欲しくなる。ただ、それは流石に出張に持って行くのはやり過ぎだろう。
SHURE50はBluetoothヘッドホンとしても優秀なだけでなく、マイクを内蔵したBluetoothヘッドセットとしても優秀だ。万能選手であることは間違いない。出張先でオーディオを楽しむセットとしてはこれで我慢するのが大人というものだろう。SHURE50 Gen2も出たけど、そんなに大きく変わらないように見えるし。バランス入力に対応したわけでもなさそう。
バランス入力用にはリケーブルしたイヤホンのほうがいいかな。
試しにHC-2とHC-4のバランス出力をリケーブルしたAONIC215で聴き比べてみた。敢えて安物のAONIC215で比較してみたのだが、これが全く性格が変わって驚いた。
HC-2とHC-4ではそもそもDAC(デジタル-アナログ-コンバータ)に用いられているチップが異なる。HC-2ではCirrus Logic社のDAC CS43198を二つ使用しているが、HC-4ではAKM社のAK4493Sを採用している。
CS43198がサポートするのは最大384kHzのサンプリングレートで、AK4493Sがサポートするのは最大768kHzと二倍の差があるが、スペック上ではHC-2、HC-4ともに最大384kHzのサポート。強いて言えばAK4493Sのほうが処理に「余裕」があると言えるのかもしれない。
あとの違いは、HC-4で搭載されたDAR(Digital Audio Remaster)機能によるアップサンプリングか。これはオフにしても音質がそれほど劇的に変わるわけではない。聞く曲の種類や、好みの問題だろうか。
ただ、今回改めて驚いたのはPA10の威力だ。
あるとないとでは明らかに違う。音の「質」が根本的に変化する。
旅先でどんなにヘトヘトになった時でも、HC-4とPA10を通してお気に入りのジャズを聞けば、一発で疲れが吹き飛んでしまう、そんな活力を与えてくれる組み合わせではないかと思う。
こうなると、イヤホンも上位機種が欲しくなってくる。
そもそも僕が敢えてエントリー向けのイヤホンを最初に買ったのは、上位機種にアップグレードした時にその違いを感じ取るためだった。バランス入力はイヤホンでこそ威力を発揮しそうだし、そもそもイヤホンはヘッドホンに比べると嵩張らないから(当たり前だが)出張族向きでもある。
しかしSHUREのイヤホンの最上位機種はハイエンドのヘッドホンの二倍近い値段がする。それだけ上の性能を持っているということなのかもしれないが、単純に容積が少ないものが二倍以上の値段がすると普通にビビってしまう。
さて、どうするかなあ。
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