夏をロケハン
ちょっと外に出たら、だれがどう見ても夏だ。
まっさおい空に、あまりにも3Dの入道雲。「ドン」っていう書き文字が、わたしには見えるぞ。
道行く人の影は濃く、壁という壁が日光を受けてくっきりとそびえ立つ。
柔らかそうな帽子をかぶったママと、ペタペタサンダルの子供たち。
その横を自転車でがむしゃらにはしりぬける、半袖ジャージの小学生計3人。
そんな彼らとすれ違ったり追い抜かれたりしながら歩くとうの私も、白いTシャツを着た自分の姿を確認したくて、お店のガラスをチラッと見てしまう。
夏らしい自分に満足してすこし口角を上げた私の右半身を、室外機が灼熱の息で焼く。
こんな具合に夏の描写を並べてはみたものの、ぜんぜん上手くいかない。夏ってほんとにこれで合ってる?
というのも、わたしは長いこと「夏が好きじゃない人」をやらせて頂いてきたからだ。
夏の思い出といえば、部活の練習にうちこんだこととか、地元の小さなお祭りで同級生に会いたくなくてソワソワしてたこととか、花火の音が鳴り響く中部屋でシャーペンを握ってぼーっとしてたこととか。
思えば私は、手放しに謳歌する夏の感覚を、小学生以来完全に忘れてしまっている。
というわけで8月は、夏を探しにいってくることにした。友達を巻き込んで。
白いワンピースと麦わら帽子の似合う、吉岡里帆みたいな顔した夏の化身を探しに、海に行こうと思う。
汗を滝のように流しながら潮風の中を歩いて、吉岡里帆を探しに行く。
友達は小松菜奈を探すらしい。
果たして…。