「中国Edtechでは何が起こっているのか」イベント参加後のまとめ。創客教育のストーリーについて。
2019年1月16日Plug and Play Japanの主催で「中国Edtechでは何が起こっているのか」というテーマのイベントが開催され、私は「中国深センの創客教育について」、以下の4項目に分けてお話させていただきました。
1.創客教育とは
2.創客教育のストーリー
3.創客教育とエコシステム
4.創客教育企業
このイベントに参加された、中国で開催のGET(教育科技大会)、GES(未来教育大会)、SmartShow(国際智慧教育展覧会)や香港・深センの現場を視察された方々は、どなたも日本のEdtechにも深く関わっていらっしゃる方ばかりでしたので、私が持っている中国のEdtechに関する情報をあらためて見直すいい機会となりましたので、今回感じたことをまとめておきたいと思います。
創客教育のストーリー
私の見る限り、日本のプログラミング教育と中国の進めているプログラミング教育(STEM教育、創客教育、IoT教育などを含む)の大きな違いは教育の中身ではなく、その新しい教育をいかにして始めるか、その始め方の手法にあると思っています。
多民族国家で人口の多い中国では、教育に限らず何事でも物事を始めるには、イメージしやすい「ストーリー(大義名分)」を国民が脳裏に描けるようにする必要があります。ストーリーなしには国民は動きません。ルールを決めたら、ルールを遵守する日本人とは行動の原理が全く違うのです。
日本では、2016年にプログラミング教育が2020年に必修化されることが発表されました。文科省からは「小学校プログラミング教育の手引き」などスタートさせるための一定の情報が提供されていますし、文科省、経産省それぞれの動きは評価に値すると思います。
しかし、そういった政府の苦労も虚しく、その教育を受ける国民はおろか、実際に指導を行う学校の多く先生でさえもこの教育の必要性を理解できていません。「学校の先生は忙しいから」という話はよく聞きますが、いくら忙しくても時代に即した教育が目の前にあるのであれば、それを実践する先生が多くいるはずです。
実際に、私がヒアリングした日本の先生でも「たぶん必要な教育なんだろうけど正直わからない」という回答が多く、その教育の先にある将来像を描くことができない状況にあります。
さらに、プログラマー不足を理由にプログラミング教育を必修化するにも関わらず、「プログラマーを育成するのではなく、プログラミング的思考、思考力、問題解決能力を身につける」という批判のしようのないゴールを設定したばかりに、そのボヤけた教育に対して肯定的にはとらえにくい状況に陥っています。
それに対して中国では、国策としての「中国製造2025」という大戦略や「大衆創業、万衆創新」というスローガンを掲げ、文字通り「みんなで起業して、みんなでイノベーションを起こそう」という意識を高揚させ、それを支える教育としてのプログラミング教育があり、プログラミング教育を経て、起業家、イノベーターになってビジネスで成功しようという、1つのストーリーを描いています。国策と個人の幸せ、成功の形が1つのストーリー上にあるため、国民の賛同を得た形でプログラミング教育をスタートさせることができるのです。
そして、時代の寵児でもあり中国のIT界の英雄ジャックマーは自らの理念をもって学校(雲谷学校)を設立し、その特徴の1つとして科学技術分野の強化をあげていることも、国民がプログラミング教育を支持するのに大きな役割を果たしています。
またアメリカをとってみても、プログラミング教育、STEM教育の重要性について、ビル・ゲイツ(マイクロソフト会長)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)、ジャック・ドーシー(ツイッター創業者)といったIT界のスターがそろって国民にその重要性を訴えかけているのです。
しかも、Code.orgが公開しているプログラミング教育普及のためのビデオは、スタイリッシュでカッコイイ仕上げ方なのです。
中国はサクセスストーリーを国民に提示し、アメリカでは世界を変えられる、自己実現のカッコイイツールとしてプログラミングを国民に伝えています。
日本のプログラミング教育は何のための教育なのか?
お金持ちになるためなのか、自己実現のためなのか、世界をより良くするためなのか。
日本の描くべきストーリーとは?
今まさに、日本の目指す理想の国家像が改めて問い直されているのだと私は思います。
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