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vol.2 マインドセット

前回の「中国深セン教育事情vol.1幼児教育」では、深センにおける幼児教育は過熱しており、月5万円もの投資が行われている事実があり、そこに見えてくるのは中国における苛烈な大学受験による強迫観念だけではないということをお伝えしました。今回はそのマインドセットについてプログラミング教育を例にとってまとめたいと思います。

中国深センの状況を理解する前に、日本の現状を改めて見直すことで中国がはっきり見えてくるので、まずは日本について考えます。

日本では2020年に必修化するプログラミング教育。真っ先に耳にするのが「プログラミング教育ってどうなるんだろう?」、「全然決まっていないけど大丈夫かな?」と言った声ではないでしょうか。
この不安の声だけでも日本のプログラミング教育に対するマインドセットがある程度理解できます。
それは、多くの人々がこの教育に夢を持っていないということです。

プログラミング教育を受けることで、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのように世界に革新的なサービスを生み出すことは夢のまた夢としても、IoT、AI、EduTech、Fintech、MedTechが世界を劇的に変化させるであろうことが予想されるなか、「○○×Tech」で自己実現、世界をよりよくする、というような夢を持ってもおかしくないはずです。

ところが、今の日本でこのプログラミング教育に対してどれだけ夢を持っている人、期待をしている人がいるでしょうか。今、日本では「プログラミング教育とは何か」、「なぜプログラミング教育をするのか」という哲学問答を相変わらず繰り広げています。
プログラミング教育の必修化が発表されてから、この問答は収束にいたっていません。これに対して明確な回答をお持ちの方も多数いらっしゃるかと思います。文科省も「小学校のプログラミング教育の手引」の中でも明確にしていますが、「プログラミング的思考」、「問題解決能力」の育成のためであったり、「日本のIT人材が不足している」という理由が挙げられています。

しかし、上記の理由で学習者の動機付けとして圧倒的に不足しているのは「夢」です。「日本のIT人材が不足している」と聞いた小中学生がそこに夢を見いだせるとは到底思えません。高校生や大学生ともなれば、そこに逆に自分にとってはチャンスになるという理解の仕方があるとは思います。

中国深センはどうでしょうか。

多くの深セン人には夢や希望があります。そもそも移民(中国国内からの)の都市である深センには、一攫千金を夢見て来たような人が多いわけですから、夢の塊のような都市なのです(もちろん影もあります)。
漠然と夢と言っていますが、具体的なロールモデルやサクセスストーリーが深センにはそこら中に転がっています。Tencentの馬化騰、DJIの汪滔、Makeblockの王建軍と深セン代表する人物の例を挙げるのに事欠きません。特に馬化騰は深センの名門高校である深セン中学(高校)から深セン大学へ進学し、深センで巨大IT企業となるTencentを立ち上げた功績は大きいです。
上記の企業もそうであるように、深センで成功している企業(世界でも)とITが切っても切り離せないことは周知の事実で、「プログラミング教育=成功」という方程式はいたって簡単に成立しうるのです(中国での成功の定義の1つとしてお金持ちになるということがあります)。

ジョブズやザッカーバーグは異国の人ですが、中国には馬雲(ジャック・マー)のような英雄が自国に存在していることも非常に大きなファクターで、日本もかつて松下幸之助や本田宗一郎という英雄が日本人のロールモデルとして存在していたのです。

そういったモデルが多数存在する中で、中国政府が「中国製造2025」、「新一代人工智能発展計画」、「中国STEM教育2029行動計画」でイノベーション、AI、IT、STEMを重視し世界を牽引していこうという国威発揚は見せかけではなく、多くの国民にとって明るい未来を描かせることに成功しています。

中国政府が作り上げたこのポジティブなマインドセットは、プログラミング教育に限らず、教育への出費は親自身と子供の夢をかなえるための投資であるため、それを惜しむようなマインドセットは存在しにくい状況にあり、逆にマインドセットをうまく作ることのできていない日本政府はプログラミング教育において言えば、出だしで躓いたといえると思います。

以上が私が感じている中国深センの人々の教育(習い事)に対するマインドセットです。日本の教育にも世界に誇れる素晴らしい点があると思うので、夢・希望が持てるような空気が醸成されることを期待しています。

※中国を語る場合、日本とは異なり、非常に人口が多いこと、貧富の格差が大きいこと、地域による格差が大きいことから、私が見ている深センもごく限定的であることをご理解ください。

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