不老不死の歴史
古代中国では生に対する執着が強かったために、 古くから不老長寿のための技術や方法が模索されてきました。それは後に養生術と名づけられた導引、服気、食餌、房中などを内容とする一連の技法で、 数千年を経た今日でも人々の健康長寿のために役立っています。
しかし、 古代中国の人々の生に対する執念は単に健康で長生きするだけでは飽き足らず、 さらに不死永生への願望となり、 それを実現するために養生術に加えていろいろな技法が工夫されました。それが不老不死を目的とする中国の神仙術で、今日の仙道の前身です。
神仙術は、渤海の沖合に浮かぶ三神山に住む仙人が、不死の薬を持っている という話から始まりました。そしてこの噂を信じた秦の始皇帝や前漢の武帝が、不死の薬を入手すべく何度も探索を行いましたが、元から幻のお話であり、当然失敗しました。そうこうするうちに李少君という神仙術を学んだ方士の提案で、丹砂などの卑金属を化学処理して金丹を作り、これを服用することによって、こわれやすい肉体を金のような不変の物質に転換しようという研究が始まりました。これが錬金術です。しかし錬金術は原料として使用する鉱石に砒素や水銀などの毒性の強いものが多く、その為に中毒死するお高校帰属が続出しました。そこで登場したのが練丹術です。小説やアニメでしか聞いたことがないと思いますので、練丹術に関しては改めて後述します。
神仙術はやがて中国古来の宗教である道教へと変わっていきますが、当時広まりつつあった仏教に対抗できなかったので、老子を教祖にして、老子道徳経を経典とする宗教へと体裁を整えて行きました。
老子は元々諸子百家の思想家の一人で、道家の代表であり神仙術や仙道とは関係がありませんでした。しかし道家思想が説く道(dao)が神仙術の不老不死と繋がりを持たせやすかった為に結び付けられて道教という形になりました。仙道で言う不老不死とは肉体が死なない、亡くならない、衰えないということではなく、生老病死におびえることなく、心を平穏にして世の中の雑事やストレスから自由になって生きるということです。これが仙道の不老不死そして真生=真実の生き方という考えと合致しました。
道教は徐々に衰退し、17世紀頃には大きな宗教団体として存在しなくなりました。その上文化大革命で迷信、まやかしの類の古い習慣として弾圧されました。しかし前述したように、本来は仙道や道教と関係ないものでしたので、台湾を中心に仙道・神仙道は人から人へと伝えられて、今もなおその技術体系を残しています。