石破茂が金融所得課税の強化に前向き
自民党の石破茂元幹事長は2日のBS日テレ番組で、
首相に就任した場合の金融所得課税の強化について
「実行したい」と述べた。
岸田文雄首相も課税強化を掲げていた経緯に触れ
「後退してしまった感がある。
お金持ちが外に行ってしまうということで
(主張を)抑えたのかもしれない」と指摘した。
課税強化をする場合は
投資が海外に移らないような対応策も
あわせて検討する必要があるとも言及した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA02BF80S4A900C2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1725287191
金融所得課税というのは、
株式の売却益だとか、配当金に課される税金なんですが、
普通の所得税みたいに
所得が高いほど税率が上がっていくという
累進課税制ではないんですね。
そんなことから、
お金持ち向けの優遇税制になっているんですね。
金融所得課税は
一律20%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税を除く)で、
累進制でないため高所得者の恩恵が大きい。
首相は年間所得が1億円を超えると
所得税の負担率が下がる「1億円の壁」を問題視し、
金融所得課税の見直しを主張していた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA02BF80S4A900C2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1725287191
まあ、これは、財務省からみて「もっと税金を取りたい」
とかいうことだけではなくて、
いまの日本の経済や社会を悪くしている株主至上主義の
温床になっているという批判もあるわけなんですね。
株を売るたびに、その利益に対して課税されるわけですから、
ひんぱんに株を売り買いして、その利ざやで儲けている
いわゆるディトレーターの皆さんにとっては
やってられないことになってくるんですね。
株主至上主義についていうと、
先日も、こんな動画を見たんですが、↓
まあ、バブル崩壊以降の日本企業のデータを見ると、
ここ30年ぐらい、売上は横ばいなのに、
利益や配当金、内部留保(企業の貯金)は増えていて、
一方で、従業員の給料だとか、設備投資は
あまり増えていないんですね。
利益はこの20年で2倍にしかなっていないのに、
株主配当金だけは5倍以上になっている
2021/11/26
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89526?page=2
過去10年、私達の給与10%減の一方、
企業から株主への配当金10倍増…意味する真実
2016/08/16
https://biz-journal.jp/2016/08/post_16319.html
で、こういう傾向が続いているのは、
日銀の金融緩和(ゼロ金利政策)だとかの影響で
デイトレーダーとか、海外の投機筋が増えて、
その影響力が強くなったからだというのが
この株主至上主義に対する批判なんですね。
まあですから、少子高齢化の問題とか、
そこからくる財政問題だとか、家庭問題とか、
だいたいの社会問題というのは、お金絡みで、
生活が不安定になっている人が増えているからで、
そこにメスを入れようということなんですね。
しかし、これにはすごい反発があったんですね。↓
株式の配当や売買にかかる金融所得課税を巡っては、
首相が前回の2021年総裁選で
格差是正の一環として「見直し」を公約に盛り込み、
税率引き上げに前向きな発言をしていた。
首相が総裁選で勝った後に
株価が下落したのはこれが一因だ
との指摘が相次ぎ、
首相も「当面は触ることは考えていない」と軌道修正した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA02BF80S4A900C2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1725287191
"株価下落の背景にある要因を挙げればキリがない。"
"つまり、メディアが 足元の軟調な株式市場の動向を
「岸田ショック」などと報じているのは
少なくとも正確ではないと思う。"
https://diamond.jp/articles/-/334767?page=2
岸田首相は、8月14日に退陣表明をしたんですが、
そのちょっと前の5日に、大暴落がありましたね。↓
日本銀行の追加利上げが引き金になったということで、
「植田ショック」ともいわれていますが、
これはでも、河野太郎が言い出したことなんですね。↓
日銀は円安是正のため利上げを
-河野デジタル相単独インタビュー
https://bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-17/SGQYCADWRGG000
河野太郎はまた、最近も、こんなことを言ってるんですね。↓
河野太郎氏、解雇規制緩和に意欲 「流動性高めるため」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA29CTL0Z20C24A8000000/?n_cid=SNSTWP&n_tw=1724961941
この他にも、こんなことも述べていますね。↓
河野太郎氏「効率が上がらない企業は終わりにする」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900007391.html
中小企業というのは、大手企業の下請けが多く、
労働者と同じで、買い叩かれていて、お金がないんですね。
ですから、設備投資をする余裕はあまりなくて、
生産性を上げる余地も、あまりないんですね。
あるとしたら、奴隷貿易の推進で、
人件費から取るぐらいですね。
一方で、日本の株式市場の構成比を見ると、
海外からの投資というのが非常に多いんですね。
外国人の日本株保有比率、過去最高31.8%に 2023年度
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022T70S4A700C2000000/
たとえば中国の投資家からすると、
日本の中小企業の技術力というのは
投資先として魅力的なものがあるんですね。
そこで思い出されるのが、
竹中平蔵の中小企業淘汰論なんですね。↓
竹中平蔵が日本経済にトドメを刺す。
トヨタら大企業を支える中小企業の「淘汰」を叫ぶ
売国奴の恐ろしさ
https://www.mag2.com/p/news/616758
金融所得課税を強化した場合でも、
株価が暴落して、日本の上場企業が
それこそ海外に買収されてしまう
という意見もありますね。
こないだのセブンイレブンの買収検討騒ぎだとかも
こういう動きを牽制するためのもの
なのかも知れないんですが、
一方で、こんな意見もあるわけなんですね。↓
だが金融所得課税の強化を行えば、
当然、裕福層のマネーが海外に逃避するリスクもある。
筆者は、この一つのヒントになるのは
14年の証券税制改革だと思う。
これは、13年度の税制改正大綱で決まったもので、
NISAの拡充とセットで
上場株式の配当や譲渡益等の税率などが見直された。
これにより14年1月1日から
上場株式の配当や譲渡益等の税率が
10%から20%に変更され、かなりの増税となったが、
その後の株式市場への影響はどうであったか。
税率引き上げ前の13年12月1日終値で、
日経平均株価は1万6291.31円だったが、
14年1月1日は1万4914.53円。
確かに、株価は一時的に影響を受けたが、
日銀の異次元緩和の影響もあり、その後の株価は上昇、
現在は2万9000円前後で推移している。
これを踏まえれば、
金融所得課税の強化を行ったから
直ちに株式市場が暴落するというのは暴論であり、
冷静な議論を行う必要があると思われる。
https://cigs.canon/article/20211207_6430.html
"「金融資産は足が速い。
課税強化すると富裕層の金融資産は海外に逃げる」"
"しかし、2015年から
1億円以上の株式等を保有する居住者について
国外転出時課税制度(出国税)が導入されたことから、
国外転出時点の時価で 課税が行われることとなっている。"
"また、金融庁の発表によれば、
個人の非課税口座(NISA)は 2020年12月末現在
1500万口座・買付け額21.7兆円の規模となっている。
これらのことから、 金融所得増税は株価を冷やす、
貯蓄から投資の流れに水を差す、と断ずるのは
やや乱暴な議論だろう。"
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3876
経済界からも、少しならいい、という意見も出ていますね。↓
金融所得課税「25%まで上げていい」 同友会・新浪氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA037ZS0T00C24A9000000/
問題なのは、ひんぱんに売り買いすることですから、
配当金に関しては増税しないとか、代わりに減税するとか、
そういうのでもいいと思うんですけどねぇ。
総裁の任期が切れるのを前にして
岸田首相が解散をした場合は、
任期がグッと延長されますから、
その間に、金融所得課税の強化に踏み切る可能性も、
あったわけなんですね。
岸田内閣は昨年中、
こんなことをやっていたんですね。↓
"その後2023年に、
所得が30億円を超える超富裕層に対して
一定以上の税負担を求める、
いわゆる「ミニマム課税」が創設されたことで
「1億円の壁」はある程度是正されたが、
これを以って課税強化の議論が終わった
とは考えにくい。"
"金融所得課税の強化は、
新NISAが創設されたことで
増税の網にかからない層が増していることから、
必ずしも増税になるとは限らない。"
https://www.dlri.co.jp/report/macro/367591.html
"財務省では
「年間総収入金額が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上の
多国籍企業を対象に、
一定の適用除外を除く所得について
各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組み。」が、
グローバルミニマム課税であると定義付けています。"
成立に至った背景として、
海外事業などを展開するグローバル企業を中心に、
課税が免除されるようなタックスヘイブン国へ、
企業の資産等を移転させる取り組みが横行していた
ことが挙げられます。
"こうした背景からグローバルミニマム課税を導入し、
今後、企業はいかなる場所で事業を行っていても、
負担すべき法人税の割合を最低15%で設定しました。"
https://thefinance.jp/law/240227
まあこれは、何年か前に国際会議で決まったことですから、
成立するのは当然といえば当然のようにも思えるんですが、
岸田首相は、「新しい資本主義」について熱弁を振るってましたから、
この会合で担った役割も大きかったんじゃないでしょうかね。
G20ローマ・サミット
イ 世界経済
(ア)岸田総理大臣から、
自身の内閣では「成長と分配の好循環」を基本理念とし、
人々の所得を増やし、誰もが経済成長の恩恵を実感できる
「新しい資本主義」の実現を目指していく旨紹介しました。
(イ)岸田総理大臣から、
経済のデジタル化に対応する国際課税原則の見直しの合意を歓迎し、
この歴史的成果の着実な実施に向け迅速に取り組んでいく旨述べました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_000622.html
国際保健、枠組み強化を G20サミット開幕、岸田首相が呼び掛け
https://www.chunichi.co.jp/article/357275
日本は自由で公正なルールづくりを主導すると唱える見通しだ。
首相は自由貿易と国際的なルールの重要性を訴える。
国際的に保護主義的な動きが広がっているためだ。
自身が掲げる「新しい資本主義」にも言及する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA289AV0Y1A021C2000000/
![](https://assets.st-note.com/img/1725371558-Q2uAo5WGvwU48JsdFClNcmDp.png)
この時はうまい具合に、この会合の直前に、
こんなことがあったんですね。↓
「パンドラ文書」は、
G20ローマ・サミットに先立つ10月4日未明(日本時間)、
ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)によってリークされた。
「パンドラ文書」には、G20参加国元首も名を連ねる。
国際企業の租税回避を論じ合う国の為政者が、
租税回避の当事者だったわけだ。
https://diamond.jp/articles/-/290644
まあ、このタックスヘイブンの問題というのは、
以前から話し合われてきたこと
ではあったようなんですが、
かなり追い風になったのではないかとは思うんですね。
ちなみに、この「新しい資本主義」というのは、
原丈人さんの「公益資本主義」ではないか
という説があるみたいですね。↓
"「米国は成長し、日本は停滞しているから、
米国のように政策を動かすべきだ。
そうすれば日本国民は豊かになる」。
株主資本主義を信じる人たちは こう主張してきました。
でも現状を見れば分かるように、そうはなっていません。"
https://diamond.jp/articles/-/286154
まあこれは、原さんが主張しているだけなのかも知れないんですが、
2017年の衆院選だとか、2019年の参院選の時だとかに、
こういった批判があったり、消費税も上げないといけないしで、
与党はちょっとピンチだったんですね。
そういうこともあったのかも知れませんね。
それから、金融所得課税(の一体化)というのは、
2013年、安倍内閣の時に決まって、
2016年からスタートしていたんですね。↓
"2016年1月から
「金融所得課税の一体化」として、
上場株式、株式投資信託、債券、公社債投資信託の
税制が統一されます。
債券や債券投信も株式等と同じ
特定口座の中で管理できるようになります。"
"譲渡益にも課税されることに
これまでは債券や公社債投信(MMFなど)の 譲渡益は非課税、
償還差益は総合課税(累進課税)、
利子や分配金は20.315%の源泉分離課税でした。
これがすべて 「20.315%の申告分離課税」に統一されます。"
https://allabout.co.jp/gm/gc/460705/
で、2019年には、課税を強化する動きがあったんですが、
見送られていたようです。↓
賃上げ促進税制の一方で金融所得課税強化は見送り 22年度税制改正大綱
https://www.tokyo-np.co.jp/article/148141
2024年9月4日追記
東証株が一時、1500円超安
米半導体大手「エヌビディア」株が急落、
一部に「石破ショック」の声も
https://www.zakzak.co.jp/article/20240904-QL5USYCKNJLZZMLCFSNEQO5HRI/
2024年9月5日追記
石破氏、金融所得課税強化の真意 新NISAは対象外
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA30DRI0Q4A830C2000000/
【解説】自民党総裁選「石破氏支持」が28%で1位 党員・党友に独自調査
https://news.yahoo.co.jp/articles/e60269d6fd419ac37583a0d82a8a50f3af1102c2
あとまあ、アトキンソンさんが、
こんな話をしてますね。↓
初の100兆円台。日本企業の2023年度
— デービッド・アトキンソン David Atkinson (@atkindm) September 4, 2024
経常利益が106.8兆円になった。初の100兆円台。
12.1%の増益。
過去の対売上比率の倍。また史上最高水準
大企業だけではない。
大企業は81.4兆円の史上最高。12.3%のい増加
中小企業も史上最高の25.4兆円。11.2%の増加… pic.twitter.com/FjNK3Poled
政府は「貯蓄から投資へ」というが、企業は「投資から貯蓄」をしている。
— デービッド・アトキンソン David Atkinson (@atkindm) September 3, 2024
政府は、企業に対して、「貯蓄から投資へ」と主張するべき
企業が貯蓄を増やしている以上、経済は成長しないし、「投資」は増えないし、NISAも成功しない。
政策転換を! pic.twitter.com/Qr2ScObYua
設備投資は8.5%増でバブル以来の伸びなので、その批判は当たらない。ってか何でも緊縮財政のせいにしすぎ。企業の内部留保はGDPを超えてる。つまり支出を抑えてたのは政府でなく企業の方。https://t.co/2ZRafjmR4d pic.twitter.com/DkGMTQzfPV
— Tomy😃 (@TMT69J) September 4, 2024
まあ、設備投資をしても、
消費者が財布のひもを緩めてくれないと、
売上は伸びて来ないと思うんですね。
そういう不安はあるんでしょうね。
あと、設備投資が進まない理由の一つに、
事業継承、担い手不足の問題もあるみたいですね。↓
"後継者が不在の企業は、
設備の老朽化が進んでいる場合が多い。
特に製造業の場合、設備の老朽化がそのまま生産性低下と、
それによる競争力低下につながっている場合が多い。"
https://cs-navi.or.jp/column/%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E6%89%BF%E7%B6%99%E3%81%A8%E8%A8%AD%E5%82%99%E6%8A%95%E8%B3%87/
工場をやめちゃったあと、
売り払いたいという人もいるみたいで、
そういうのの仲介業者もいるみたいですね。
創価学会だとかが好きなリサイクルショップの
中小・零細版みたいな感じでしょうね。
それから、アメリカ大統領選挙でも、
キャピタルゲインへの課税が
話題になっているみたいですね。↓
ハリス氏、キャピタルゲイン課税28%提案-年収100万ドル以上
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-04/SJB03DDWLU6800
膨張する超富裕層の資産、30年には1370兆円に-ヘッジファンドに匹敵
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-04/SJAIN3DWLU6800
2024年9月15日追記
2024年9月16日追記
林芳正官房長官は3日に国会内で記者会見し、
自民党総裁選への出馬を表明した。
総裁選の争点の一つに浮上した金融所得課税の強化に関し、
超富裕層に対する是正措置が施行される2025年の状況を見定めて、
さらに何かする必要があるか検討すべきと述べた。
同時に貯蓄から投資への流れと調和を取ることも必要と強調した。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ANPXA6FVQRNIPJ4QVA2KL2FIYQ-2024-09-03/
それから、
タックスヘイブン擁護論者としては
こんな人がいますね。↓