行政書士試験合格者が語る「現役通関士の時に知りたかった行政手続法」(前編)
皆様が思っていることを当ててみましょう。
「コイツ、また『わけのわからん』テーマだよ・・・」
現在「現役通関士」の皆様、また「これから通関士を目指そうと志している」皆様にとって勉強されている「主要な法律」と言えば
「通関業法」
「関税法」
「関税定率法」
「関税暫定措置法」
では、ないでしょうか?
いやいや、最近は「(税関長に対する)再調査の請求」や「(財務大臣に対する)審査請求」を始めとした「行政不服審査法」や「行政事件訴訟法」関連も通関士試験で出題されていたから、私はシッカリ勉強してましたよ
という「強者(ツワモノ)」の方が、もし、いらっしゃるのであれば、
「スゴっ!!その勢いで、行政書士試験の受験も、ぜひ検討してみては、いかがですか?」
と、オススメしたくなってしまいそうです。
そして、これらの法律知識を頭に入れながら「通関実務」となる「輸出入申告書」を作成することが「通関士」のメインとなる仕事であることは、私が説明するまでもありません。
ここで、私が今回、皆様にお尋ねしたいのが、
皆様が「通関士として作成した申告書」を「税関という『お役所』である行政庁に提出する」という「申請手続き」をするにあたって、ルール(=法律)があるのを知ってますでしょうか?
ということです。
「申請手続きのルール」も何も、税関申告なんて「NACCS」で「ポン」と送信ボタンを押せば、勝手に「区1」「区2」「区3」が出てくるじゃん!!それが「通関士」の仕事でしょ?
と「通関士」の皆様が「当然に答えてしまう」何気ないことも、実は「法律として条文となっている」のです。
ここで登場するのが
「行政手続法」
となります。そして、「NACCSの送信ボタンをポン」という話は行政手続法上の
「申請に対する処分」<第2章(第5条~第11条)>
に該当することになります。私も「行政書士試験勉強をして、初めて知った」法律であり、通関士時代は「全く、気にも留めてなかった」法律でした。
ところが、この「行政手続法」は「通関士である『あなた』」が「行政庁である『税関』」と正しく向き合っていくために必要と思われる
「重要な条文がズラリと並んでいる」
ことを、今回、ぜひ知っていただきたいと思っています。
例えば、通関士の皆様は、こういう「あるある」を経験したことは、ありませんでしょうか?
顧客から「急ぎ」と言われている貨物に限って、「区分2(税関書類審査)」になり、税関の書類審査にも時間がかかったことで、2時間たっても、3時間たっても、許可にならなくて焦った。
皆様は、きっと心の中で、こう思っていたことでしょう。
(税関に「急ぎ」である旨を伝えれば、対応してくれるのだろうか?逆に、通関士が、こんな事を言って「税関に怪しまれる」ことで、さらに審査時間が長くなったら、逆効果にならないか?)
では、行政手続法の条文を引用しながら、通関士である「あなた」が取るべき「正しい行動」を考えたいと思います。
行政手続法第9条〈情報の提供〉
行政庁(=税関)は、申請者(=顧客の委任を受けた通関士)の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分(=輸出入許可)の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
つまり、「申請してから、結構な時間経ったんですけど・・・許可は、いつ頃になりそうっすかね?」と、(輸出入者である申請者の委任を受けている)「通関士」である「あなた」が税関に確認する行為は、
「なんら、問題のない行為」
となり、このことで「税関が申請者に対し、嫌がらせをして、故意に審査を遅らせる」ことは、ありません。
ただ、行政庁である税関は「努めなければならない」という「努力目標」にあたるため、必ずしも「あと30分以内で許可に出来ます。」などと答える必要はありません。
このような場合の税関からの解答としては
「今、順次に審査を行っていますので、もう少しお待ちください。」
と言われることとなり、これが「(税関からの)模範解答」である以上、「通関士として」それ以上の深追いはできないことになります。
たとえ、切羽詰まった顧客から「通関士さん、お願いですよ!税関さんに早く許可にして欲しいと言って下さいよ!」と言われたとしても、
「審査の進行状況は、税関に確認しました。あとは、待つことにしましょう。」
と「毅然とした態度」で顧客に伝えることにより、「(通関士として)顧客対応することが正解」ということになります。
※実際、こういった場合においては、私の経験上では「税関さんが(特段の義務はなくても)気を利かせて」審査や許可を早めてくれることが多いです。
このように、「行政手続法」を知れば「通関士として、自らの取るべき行動」が見えてくるのです。
後編では、「もう一例の通関士あるある」をご紹介しながら、行政手続法を身近に感じてもらいたいと思っています。
後編に続く