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シャトルバスドライバーは本日も快走中です!!#25

9月9日(月)16:53 その(高齢者)ショッピングカート、バスに乗せれます?

平日昼間の「ショッピングモールシャトルバス」のお客様は「高齢者」が多い。

中には「(高齢者用)ショッピングカート」と一緒にシャトルバスにご乗車される方も一定数いる。ただ、数としては、それほど多いわけでなく、肌感覚で言えば、シャトルバスを利用する高齢者全体の「10%前後」くらいである。

 ショッピングカートと一緒に乗車される「お年寄り」の方は、基本的には「周りの手助け」などは必要とはしていない。まるで「体の一部」であるかのように使いこなし、手軽に持ち上げ、座席に座る際にはスッとたたんで着席するなど、「スマート」にご乗車される方ばかりである。

 だが、本当に「ごく一部」の話になるが、「ご乗車する際に大変難儀」をされるかたがいるのも事実だ。そして、周りの乗客の方が、その「状況を見かねて」お手伝いをされる場合もある。

 一方で、「ショッピングカートのお年寄りに対する運転手の対応」は、「運転手ごとに異なってしまう」のが現状だ。

私が、先輩方から教えてもらった「基本姿勢」は

「一切、手伝わない」

だ。理由としては、

「下手に手伝って、お年寄りである本人が怪我をすることになったら責任問題となる」

ということだ。「問題が起こったら、会社からすぐにクビを切られるアルバイト運転手」の悲しい現実である。

 その日は「ターミナル駅のシャトルバス乗り場」の先頭にショッピングカートと共にに高齢女性が待っていた。年齢で言えば70歳は超えているであろう。

見覚えのある「高齢女性」だ。そう、

「ショッピングカートをバスに乗せるのに、とにかく難儀をする」

数少ない「ごく一部にあたる」お客様である。私の乗務では1か月に1回程度しか見かけないのだが、印象には残っている。

乗務当初であった4月頃は、先輩の教えとおり「一切、手を貸さない」姿勢であった。自然と「(たまたま、その時にシャトルバスを利用することになった、赤の他人である)周りのお客様」が手伝いを行ってくれており、私も「親切な周りのお客様の協力に感謝」をしていた。しかし、同時に「気が気でない」状況ではあったのも事実だ。

(何か、いい方法はないか?)

以前から、そう考えていた私は、ターミナル駅にバスを到着させた直後に、すぐさまバスを降り、その高齢女性に駆け寄った。

「ショッピングカートは、僕が後から乗せるから、お母さんだけ一人で乗り降りできる?」

私は「元路線バス運転手」だ。路線バスでは「車いす」の方がご乗車されることもあり、「車いす研修をミッチリ」と受けている。静岡県の地方都市で乗務していた私は、実際に「病院」や「支援学校」経由の路線で何度も「車いすのお客様」を乗せることがあった。バス乗務員が「バスを降りて、お客様対応にあたる」ことには慣れている。

そして、今回のケースでは「本人さえ、自力で乗り降りしてくれれば、荷物は手伝ってあげればよい」。それが「責任問題」の私の答えだった。

高齢女性は、静かに頷くと、ゆっくりとバスに乗り込んだ。私は、他の乗客が乗車を終えた最後にショッピングカートをバスに乗せて、運転席に戻った。

他の乗客の手伝いを期待して待つことなく、かえってスムーズな乗降となったシャトルバスは時間通りの出発となり、それだけでも私的には「嬉しい効果」であった。

ショッピングモールに到着した時、私は高齢女性に合図をした。私の意図を理解してくれたであろう高齢女性は、静かに頷き、一人で最後にゆっくりとバスを降りた。私は、ショッピングカートをバスから降ろし高齢女性の前に置いた。

「助かりました。ありがとうございました。」

そう、感謝の言葉を言われた後、高齢女性は中央入口のほうに歩いていった。

 現在は、「どんな些細なことでも、簡単にクレームに発展」することがある「世知辛い世の中」だ。ちょっとした「善意」のつもりであっても、「思わね結果」となり、足元をすくわれることもある。

 運転手ごとの対応の違いにより、他の高齢者から「あの運転手は、特定の人を手助けして、自分も苦労しているのに、何も手助けしてくれない」などとショッピングモールに苦情が入ることもあるかもしれない。

もちろん、私は

「そんな世の中であってほしくない」

と願っている一人だ。

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