マークの大冒険 百年戦争編 | ジャンヌ・ダルクの最期
ランスでの王太子シャルルの戴冠式を境に、ジャンヌ・ダルクの運命は雲行きが怪しくなって来ていた。ジャンヌは首都パリの奪還を主張したが、シャルル7世はこれに乗り気でなく、ジャンヌは十分な兵と物資を与えられない状態で出陣する。首都パリの防衛は堅く、フランス軍の結果は無惨なものとなり、彼らは撤退を余儀なくされた。
その後もジャンヌは積極的な攻撃を主張し、各地を転戦した。だが、その強運も尽き、コンピエーニュ包囲戦でイングランドと手を結ぶブルゴーニュ軍の捕虜となった。そして、ブルゴーニュ勢はジャンヌの身代金をシャルル7世に要求するのだった。
🦋🦋🦋
1431年、フランス王国、シャルル7世の居間にて____。
「ジャンヌには感謝している。だが、身代金には応じない。正直、今は国庫に金がない。それに彼女が戻ってきて、また私たちの外交を引っ掻き回されても困る。残念だが、身代金の取引には応じることができない。とても心苦しいが、そうする他ない」
「それがキミが出した答えなんだね」
「マーク、そう私を悪く言わないでおくれ。私にとっても苦渋の選択だった」
「仕方ないさ。それが王としての賢明な判断だ。身代金の支払いは、敵を潤わせることになる。それは結局、敵軍の強化にも繋がってくる。ボクはキミを責めないし、否定もしない。それがキミが出した答えなのなら、ボクは何も反対しない」
「でも、本当にジャンヌには感謝している。そこに嘘偽りはない。こうして私が王として認められたのも、彼女の功績が大きい。だが、今はタイミングが悪すぎる。仕方ないが、見捨てる他ない。本当に、本当に、心苦しいが。許してくれ」
「分かった。それが聞けて良かったよ」
🦋🦋🦋
1430年、ブルゴーニュ公国領アラスにて____。
マークはジャンヌが囚われているブルゴーニュ公国領のアラス赴き、ジャン2世・ド・リュクサンブールと対峙していた。
「王太子の遣いか?それで、身代金の件はどうなった?」
ジャン2世・ド・リュクサンブールは、眉間に皺を寄せながら言った。
「シャルル7世は、ジャンヌの身代金には応じない」
マークは、ジャンヌの救出意思がシャルル7世にないことを淡々と告げた。
「は?」
「支払わないと言っている。今までの回答への沈黙が、その答えだよ」
「そうか」
「だが、ボクがジャンヌの身代金を払う」
「どうゆうことだ?」
「言葉の通り、そのままだよ。金がほしいだろう?だが、条件がある」
「条件?」
「彼女は死んだことにしてくれ」
「なんだそりゃ」
「彼女は歴史から消えなくてはいけない。だが、死ぬにはあまりにも若過ぎる。それはボクの心が痛む」
「意味が分からん」
「ルーアンの地で、早朝にジャンヌの火刑をひっそりと決行したことにしてほしい。そして、彼女の身体は火刑によって全て燃え尽き、骨は川に捨てたので、何も残っていないと報告するんだ。そうすれば、キミらが要求した身代金10,000リーヴルは、金貨できっちりと満額支払う。それが条件だ。それと、彼女が軍に復帰することは二度とない。ボクがそうさせない。それはキミらにとっても安心材料となるはずだ。悪くはない条件だと思うが」
「何が企みだが知らんが、まずは支払いが先だ」
「分かった。明日、荷台に乗せて身代金を運んでくる。それでいいか?」
「破ったらどうなるかは分かるよな?お前の首をはね飛ばし、その亡骸を市中で引きずり回してやる」
「ああ、必ずまたここに来る。でも、このことは内密に。それは必ず守ってほしい。必ずだ。誰にも知られないようにしなくてはならないんだ。誰にも。そう、神にさえも、ね。もし約束を破ったら......」
「え?」
気づかぬ間に天空神ホルスの長く鋭い爪がジャン2世・ド・リュクサンブールの首の皮に食い込んでいた。何者かの気配はないはずだった。背後からナイフのような爪を突きつけられたジャン2世・ド・リュクサンブールは、驚きと恐怖で硬直する。彼は身動きひとつできない状態だった。一歩でも動けば、ホルスの鋭利な爪で喉が裂けるだろう。
「ボクには亡骸を市中で引きずり回すような悪趣味はないが、約束を破ったら少なくともキミの首は吹き飛ぶかもしれない」
「悪魔だ。ハヤブサの悪魔。貴様、邪教にすがって、ここまで這い上がったか」
To Be Continued...
Shelk🦋