マークの大冒険 古代エジプト編 | 青き春の思い出
授業が終わり、次の授業までの移動時間、マークたちはキャンパスの中を歩いていた。そして、どの大学でも恒例と言える男子学生の間の女子の品定めトークが行われていた。
「あさみん、良いよな。普通に可愛い」
「俺はながれんかな」
「ながれん彼氏いるで」
「マジかっ!それどこ情報?」
「一週間くらい前に増田から聞いたけど」
「ショックなんですけど!」
「女子なら幾らでもいるだろ。次はフラ語の子狙えば?」
「あそこは敷居が高すぎだろ。俺ら史学科はお呼びじゃないって感じ」
「入る学科間違ったよな。史学は芋しかいないからな」
「それは失礼!まあ、ほんとだけど」
「けど、リサちゃんはフラ語と張り合えるじゃね?」
「あれは神。芸能界にいてもおかしくないレベル。ちな、彼氏はいない。チェック済み」
「だけど、既に突撃した先輩とタメ合わせて何十人も振られてるんだろ?」
「望みないじゃん。脈なし確定」
「あれじゃん、いないと言って実は彼氏いるパターンだろ」
「かもな」
「マークは?」
「何の話?」
「どの女子が良いかって話」
「雑魚どもが。ボクはジェシカさん一択だ。男なら一途しか勝たん」
「誰?」
「マジで誰だよ」
「知らないのか?アレクサンドリアネキを」
「知るわけないだろ」
「アレクサンドリアネキって、なんか強そう?」
「アプリゲーのアカウント名にいそう」
「古書店の爆美女店員だ」
「なんだ、うちの大学の子じゃないのかよ!」
「絶対に狙うなよ!?」
「その本屋も知らないし、誰やねん」
「何歳?」
「歳は知らん」
「知らないのかよ」
「レディに年齢は聞くもんじゃないぜ。まあ、たぶん23、4だと思うけど」
「おばさんじゃん」
「おばさん?このコンプラと多様性の時代に何て発言だ。炎上するぞ。ロリコンどもが。まあ、キミらじゃ到底相手にされんと思うがね」
「いや、お前もだろ」
「まあ、確かに。だが、ボクは話せるだけで良いんだ。推しの幸せを遠くから見守るのが、粋な作法ってもんだぜ」
「いや、付き合えなきゃ意味ないじゃんか」
品定めトークが盛り上がる中、授業の始まりを告げる校内の時計台の鐘が鳴り響いた。
「やべっ、チャイム鳴っちった!マーク!2限終わったら、方食に集合な!」
「うい。ボクは次、空きコマなんで食堂で先に席取ってるよ」
「ナイス!さすが」
同級生グループから別れたマークは、方舟食堂に向かった。
「今日はランケの人名辞典を読破するぜ!」
マークは方舟食堂に入ると、一番奥の4人席に腰掛けた。漆喰が施された高い天候と壁、大きなステンドグラスに日光が差し込み、床を虹に染めていた。鞄を置くと券売機に向かい、アイスティーのボタン押して食券を取った。提供カウンターから飲み物を受け取ると、マークは席に戻った。食堂には女子グループやカップルが点在し、楽しげに会話していた。マークは鞄を開けるとA4のコピー用紙の束を取り出した。大きなクリップで止められたコピー用紙は、ウェブ上にPDFで公開されているランケの人名辞典を印刷したものだった。
「この前、大学の博物館で見た棺に記されていた人名は複数登場するが、綴りが安定しなかった。パシェリまでは読めるんだが、その次は不鮮明で、綴りも登場箇所によってブレる。末期王朝かプトレマイオス朝のものであることは間違いないし、上手くすれば家系図が復元できそうだ。親がジェドホルというのははっきり読める。棺の身が浅い特徴も後期の特有だし、凝った造りからも神官家系の棺には間違いない。香油が変色して真っ黒になった部分が多過ぎて読めないが、スキャナーにかければ解読できるはず。文学部の研究費割り当てが少な過ぎて、検査に出せないのは惜しい。文系の永遠の悩みだな。いずれにせよ、夏休みの発掘調査までにいろいろと勉強しておきたい。どんな発見があるのか楽しみ過ぎる。ひょっとしたら、ボクらが世紀の大発見、ツタンカーメンの黄金のマスクと並ぶお宝を発見してしまうかもしれない」
Shelk🦋
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