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冬の始まり 3

黒のオフショルダーにミニスカート
網タイツとこの日のために買った黒のエナメルブーツ
黒のロングコート

久々にした韓国風の巻き髪を、シルバーアクセを付けた手で何度も整えて彼を待った。
元彼と付き合っていた時は出来なかった黒く背伸びをした服装。彼の好みだと聞いていた私は自信に満ちていた。今日はイルミネーションを見に行く日。

日比谷のイルミネーションを提案してくれたのは彼。彼が来ると、イルミネーションを探し回った。思ったよりだったので、私がミッドタウンのイルミネーションが見たいと言うと、彼は行く予定があったのにも関わらずOKしてくれた。今思うと、こんな優しい彼は想像がつかない。

イルミネーションを見てから、ご飯屋を探すために渋谷に行った。外の凍えるような寒さにやられた体に、温かいラーメンが沁みる。

「このまま帰るか、泊まるかどうする?」
私がこう聞いたのだけれど、帰って欲しいわけが無かった。

結局私たちは渋谷のホテル街へと向かった。寒い夜の中料金の安いホテルを探しながら煙草を吸った時、私は煙草の美味しさというものが分かった気がした。

その日から私は、彼のことがタイプになって、好きかもしれないと思うようになった。

最中、彼は言った。
「クリスマス一緒に過ごしてくれる?」

私は「うん」と言った。

この口約束を、私は学校にいる時もバイトをしている時も忘れたことは無かった。

12月23日、私はバイトだった。そういえばあの約束はどうなっただろう。もしかしたら予定埋まってしまったかな。そう思いながら私はクリスマス予定埋まった?とLINEを送り、スマホをポケットに入れてバイトに向かった。

仕事中何度も画面を開くが、通知は一向に来ない。開いても開いても通知が来ないことに悲しくなった。

バイトが終わると、通知が来ていた。
埋まっていないという返信がきていたので、私は「これは私で埋めてもいいやつ?」と返した。すると、すぐ返信が来た。
「これは」「いいやつだね」

私は涙が出るほど嬉しかった。バイトの更衣室だったのにも関わらず、久しぶりに嬉し泣きをしてしまった。

12月25日、朝起きるとLINEが来ていて、私は嫌な予感がした。
「急アルで入院することになっちゃったから行けないごめん😭」

まぁ、そんなもんだよな。そう上手くはいかないんだよな人生って。私は結局これだよ、と思いつつも期待して起きたこともありやはり落ち込んだ。

その日の夕方、家族がイルミネーションがある所にドライブすると言った。予定が突如消えた私は、家で留守番をすると更に憂鬱になってしまうことを危惧して、それよりかはマシだと思い着いていった。
車の中でひたすら音楽を聴きながら考え込んだ。
元々私は彼氏とも別れたし、クリスマスは1人で過ごす運命だったんだよ。それを無理やり男で埋めようとしたツケが回ってきただけ。来年は幸せでいられるように頑張らなきゃなぁ、とか色々。

すると、彼からLINEが来ていた。
「○日と○日と○日だったらいつがいける?」

まさかの向うから代替案を提示してくれるという、予想外の展開に私は思わず声が出てしまった。しかし、ここで期待するのは危険だと思い、返信するのをやめた。

するとしばらくして電話がかかってきた。私は家族がいるのにも関わらず車を下ろしてもらい電話に出た。
「思ったより回復したから出てきたんだよね。今日行ける?」
「えー、めっちゃ遅くなっちゃうよ。着替えたりメイクしたいから9時半とかかな」

予定が決まると私は車に乗り、「今から用事できたから渋谷駅で下ろして!」と言った。
私は急いで帰宅し、急いでメイクと着替えをして、これ以上ない幸せな気持ちで町田駅まで向かった。これが、19年間生きてきて初めて異性と過ごすクリスマスとなるのであった。

続き↓

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