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冬の始まり 1

頭が痛い。
鉛色の空が私を憂鬱とさせる。
携帯電話をしきりに見ては彼の通知が無いことに苛立ちを覚える。彼女でもない私には何も言う権利がない。


彼と出会ったのは11月のことである。
私は、別れることなど頭に無かった彼氏と突然別れた。失恋を何度もしてきたからこそ、今回の彼氏のことはそう引きずらないだろうと思っていたのだが、思いのほか引きずってしまった。世間はクリスマスムード一色となり、街を歩けばより一層孤独を感じた。このままでは終わりが見えないと思った私は、元彼となってしまった彼氏と出会ったインカレに、再び1人で向かう事を決意した。男の傷を男で埋めるのが1番手っ取り早いことが分かっていたので、元彼によってぽっかりと空いた心の穴を新しい出会いで埋めようとした。

いざインカレに向かうと、私の好みの見た目の人は一人もいない。外見至上主義だった私は、元彼のことが大好きだった。黒髪のセンター分けをした髪型。肌が色白で清潔感があって話がとても面白い。しかし、私に話しかけてくる男の見た目は元彼を超えることがなく、元彼の良さを再認識させられた気がして涙が出そうになった。
やはり新しい出会いは求めず、暫くは元彼を好きでいることにしよう。
終盤に差し掛かると、その場にいることが耐えられなくなり、涙をこらえながら私は1人で帰ろうとした。

「あの、」
「インスタ交換しませんか?」
その声は足早に帰ろうとした私を引き止めた。早く帰りたいのにな、と思いながらもQRコードの画面を読み取り、私は颯爽と帰って行った。

彼はとても奇抜な見た目をしていた。
私に話しかけてきた男の見た目はほとんど思い出せないのに、インスタを交換しただけの彼の見た目は強烈に覚えている。それは私が運命を感じたからとかそういうことではなく、全身黒い服を着て、サラサラしたシルバーのマッシュヘアに、リップにピアスを開けていたからである。1番目を引く見た目をしていたため、あの人派手だなぁー、、と思いながら、私は何度も彼を目で追ってしまっていた。しかし彼は最後まで男友達と喋っていて女には興味がなさげだった。それに、こんな人は平凡な私に目もくれないだろうな、と。

何も持って帰らぬまま帰宅し、インスタを開くと彼からDMが来ていることに気がついた。

「もっと話したかった!」
1度も話さず、受けを狙った地味な服装で行った私のことを覚えているはずがないだろう。きっと皆に送っているんだろうな、と思いながら私はこのDMに適当に返信した。

2日程たわいも無い会話が繰り広げられたDMを続けていると、話の流れを遮るように急にご飯に行こうというDMが来た。
DMをするのはまだ良いが、実際に2人で会うとなると話が変わってくる。しかも、あの奇抜な見た目をした男とご飯だなんて、果たして会話が続くだろうか。関わったこともない類の男。少々不安になったものの、別れたことで空いた休日を埋めるのにはこの人しかいないと思い、不安を募らせながらも 渋々「いいよ」と返信をしてしまったのだった。


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