自分用メモ
・ちいかわ
・妹・サブスクリプション
・人類の半分がちいこになった
・地元最高!
・みぃちゃんと山田さん
等、SNS漫画でちょくちょく見る絵柄とギャップのある物語(ほわころがし系バズ漫画)に関する所感。まとまりのないまま書いていきます。
ゆるふわな絵柄で闇(ないし病み)を孕んだ物語、というカテゴリ自体は個人的に80~90年代の「ヘタウマ」の系譜も多少あるのかなと思っていましたが、専業漫画家が紙媒体で月刊なり週刊なりのペースで何人もアシスタントを抱えることで作れる絵と、兼業漫画家がフルタイムの仕事の後で独りでSNSで毎日上げる絵とでは単純に書き込み量が違ってくるという点、ぬこー様ちゃんという漫画家さんがSNS時代の漫画における「自分の伝えたい物語に最適化された絵」について書いていました。
https://x.com/nukosama/status/1825825175486738858
これは制作側の話ですが、読み手側にもエンタメ一作品あたりにかけられる時間が減少していることも考え合わせると、(少なくともSNSのTL上で読む場合は特に)「軽い」絵への需要は増してきていると考えて差支えないのかもしれません。そして、書き込み量と作業時間がある程度相関する「絵」に対してストーリーの方は軽い話も重い話も構成する所要時間自体にそこまでの差は生まれない(これは私自身が物語を作る人間なので極論を言ってしまいますが、「ダークであること」だけに振り切るなら穴だらけの設定でも闇は作れる訳で、明るいエンタメと暗いエンタメ、どちらも「エンタメ」ジャンルという面で所要時間は変わらないというか、軽いか重いかの差より個別の物語による差の方が所要時間に影響するというのが実感です)と考えると、「軽い」絵に「重い」ストーリーにでバランスを取ったりギャップで読ませる効果もある程度期待できるのだろうなと感じます。70年代熱血漫画や微細に書き込んだ情報量の多い絵柄で緊密に編まれた重苦しいストーリーを展開されると一冊読むだけでぐったりしてしまう、それももちろん充実した読書体験ではあるだろうけれど、毎日TLに流れてくる物語を受け取るには簡略化された絵柄の方が入ってきやすい、そんな中で絵柄と大きな落差のある物語がフックになる側面はありそうです。また、犯罪実録ものは文章が粗い方がリアリティがあると言われるように、ダークな物語には一歩間違えると「雑」とも取られかねないくらいのシンプルな絵柄の方が想像の余地を残してくれる効果もあるでしょう。(ダークな物語+緻密な絵柄の漫画を否定している訳ではありませんので為念)
とはいえゆるふわ絵柄+闇を感じる物語という組み合わせもかなり定番化してきて、ちいかわのようにシンプルな線ながら粗くはない、読者の補完の余地を残しながら細かい表現や仕込みが隠れているものもどんどん出てきているので、新しい媒体が出始めのころは手探りで出来ることも限られていた中で表現していたのが少しずつ一般化・陳腐化して皆が慣れていくにつれて結局創作者の労力は増えていく、そしてまた新しい道具や媒体が出てきたらまた新しいサイクルが始まる、というループは創作活動においては今までもこれからもずっと続いていくのだろうなと思ったりします。
これはどこに入れようか迷ったので最後に。SNS以外の「絵柄とギャップのある物語」の流れとして、ワンパンマンやオーシャンまなぶ等の個人サイトで発表されているネット漫画というジャンルは確実にあって、なんなら棒人間FLASHもこの系列に入れてもいいかもしれませんが、このジャンルはどちらかというと同人誌に近い系統なのかなと想像しています。絵柄に関しては「ネーム・下書き系」も一定数あって、ページ数も個人サイトなら自由にできる、そこも同人誌っぽさを感じる一因かと思います。もちろん人によるとは思いますが、個人サイトのWeb漫画は総じて自分の構築したい物語世界が先にあって、それを発表している印象が強いです。
SNS漫画の場合は(これも今のように市場がある程度成熟してきてからだと最初からある程度作ってある場合も多いとは思いますが)最初の一枚を発表した時点でどこまで物語が出来上がっているのかという点もよく分かりません。「こぐまのケーキ屋さん」や「ちいかわ」はおそらく最初は一枚限りのその場のワンアイディアで、思いがけず好評で連載化して様々な設定が後付けされていく内に世界観が積み上げられていったのかなと想像しますが、そんな風に「何気なく」描いたワンアイディアが思いがけずバズって連載化したことで、図らずも物語と絵柄がミスマッチして、それが却って受けたことで「ミスマッチ系」というジャンルが発展した側面も多少はあるのかなとも思います。
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