ストリート・グルメを求めて
屋台料理というのはどうしてこんなにも人の心をワクワクさせるのか。
このご時世で屋台を見かける機会もだいぶ減ってしまったけど、花火大会や初詣、コンサートの帰りなどでごった返す人の流れに沿ってずらっと並んだ屋台を見つけると、ただそれだけで無性にワクワクする。
上の写真は、年末神社にお詣りに行った時に見かけたはしまきの屋台。はしまきって存在を今まで知らなくて、「なんておいしそうな食べ物なんだ!」と衝撃を受けて思わずパシャリ。中国地方や九州ではポピュラーな屋台料理なんだとか。
午前中に行ったからまだ屋台が準備中で残念ながら買えなかったけど、今度見かけたら迷わず全部乗せを買おうと固く心に決めた。
さて、なぜいきなりわたしが屋台の話をしているのかというと、Netflixで最高の番組に出会ってしまったからだ。
「ストリート・グルメを求めて」
これ、超良作だった。
Netflixオリジナルシリーズの食をテーマにした作品が好きでよく観るんだけど、この番組がもう大当たりだこと大当たりだこと!
そのタイトルの通り、世界中の屋台料理を巡ってその土地に根ざした伝統や文化を紹介していくドキュメンタリー番組。
でも、ただ単純においしそうな屋台料理が紹介されていくだけじゃない。
現在出ているのはアジア編とラテンアメリカ編。
アジア編では全9話、
「タイ バンコク」「日本 大阪」「インド デリー」「インドネシア ジョグジャカルタ」「台湾 嘉義市」「韓国 ソウル」「ベトナム ホーチミン」「シンガポール」「フィリピン セブ」。
ラテンアメリカ編は全6話、
「アルゼンチン ブエノスアイレス」「ブラジル サルヴァドール」「メキシコ オアハカ」「ペルー リマ」「コロンビア ボゴタ」「ボリビア ラパス」。
ぱっとイメージしやすい都市や有名な場所ばかりではなく、あまり聞き馴染みのない地名にも結構スポットを当てられていて、ストリートグルメと銘打つだけあって出てくる食べ物も超ローカル。
どんな味で、どんな食感なのかもさっぱりわからない食材が毎回ぽんぽん出てくるのでそれだけでも観ていて楽しいんだけど、何よりわたしがこの番組に感動したのが、屋台料理人たちのそれぞれの人生のドラマ。
毎回一話に一人軸となる料理人がいて、その人がそのお店を生業とするに至るまでの経緯や半生を語ってくれる形式。その密度の濃さと、人生に対する真摯な姿が本当に美しくて。
どん底から這い上がるためにどうやって気持ちを切り替えたか、何がきっかけでターニングポイントを迎えたのか。思わずメモを取りながら見ちゃうほど毎回ハッとさせられる言葉が出てくる。
仕事に対しての熱意が皆はんぱじゃなくて、出てくる人たち皆働き者。でも嫌々仕事をしてるわけじゃなくて前を向いて我が人生を生きてるって感じがひしひしと伝わってきて、心が揺り動かされる。自分のことを「私なんかができるわけない」って卑下したりする人は一人もいなくて、皆創作意欲と上昇志向に溢れて輝いていた。
皆全然違う国や文化の中で生きているのに、そこに出てくる人たち全員が共通して「おいしいものを作る」「祖国の伝統や文化を大切にする」「人を笑顔にしたい」ってことにひたむきで、誇りを持って生きている。
そして料理を生み出していくその手の所作ひとつひとつがもう目を見張るほど美しい。
皆優しい手をしてて、漲るエネルギーがすごい。
「料理をするって、手を動かして何かを作るってすごいことだ!」とそんな当たり前なことに改めて感動させられたし、人を笑顔にしたいとか誰かのためを想って作ったものが人の心を突き動かす力ってなんて大きいんだろうと圧倒させられた。
けしてお涙頂戴的な構成ではないのに、その姿の説得力と言葉の重みに目頭が熱くなる。
煌びやかな生活や物質的な豊かさなんかじゃない、人間の真の豊かさとはなんなのか教えてもらった気がする。
「自分の子供には自由に生きて欲しいから継がせないで自分の代で終わり」という人もいれば、「伝統や文化はこれから先も守っていかねばならないものだから継承していきたい」と言う人もいる。それぞれにあるその儚さにも人生を考えさせられるところがあったり。
親や家族から代々受け継いできたお店の背景には、黒人奴隷貿易や日系ペルー人の歴史、移民の侵略による先住民殺戮や残酷な戦争の歴史が切っても切れない現実として存在していて、それが今現在もリアルタイムで続いてるのだということを食を通じて知ることで、自分の生きてる世界と想像力のちっぽけさに気づかされる。
本当に良い番組でした。
それで料理人の皆さんがまた、本当に良い笑顔なの。それ見るだけで元気になれちゃう。
わたしが特に心に響いたのがラテンアメリカ編の、ブラジル回とペルー回。
おすすめ、「ストリート・グルメを求めて」。
続編出て欲しいなー!
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