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ネットで管理されつつある我々 シープルになりつつある我々・・・ 5 電子カルテ

5  電子カルテ 
 我々医療に従事するものにとって、カルテは大変重要なものである。
 同時にカルテに書かれた情報は患者にとっても重要な秘密である。
 それ故に医師には「守秘義務」という厳しい法律が課せられている。カルテ情報をを外部に漏らすこと、あるいは、漏洩することはあってはならないこと、というより、医療機関の敗北であり死滅を意味するものと言っても過言ではなかろう。 
 我々医療者の存在の絶対条件、根底条件である。 

 現在、電子カルテが主流になりつつあるが、ハッキングなどによる情報漏れの危険はないと言い切れるのだろうか。 
 電子カルテが始まった頃、これをネットに繋いではいけない、ということであった。ハッキングを警戒してのことである。
 しかし、この原則はいつの間にか消滅して今やネットに繋いでいろいろな業務をすることが当たり前となった。これを医療DXと人は言う。 
 電子カルテにレントゲンなどの画像診断機器がWi-Fiで繋がっている。
 心電図、検査の結果などもネットを介して流れ込んでくる。
 大病院では自動受付、自動会計があたり前となりつつあるがこれも電子カルテと連動しているのである。その多くはネットを介して繋がっている。 

 私はよく「電子カルテをネットに繋いではいけない。その様な原則を大事にするべきではないか」と医師会でも発言したりする。しかし、今やそのような状況なのでネットに繋がない電子カルテなど考えられない、と言うのである。 

 ハッキングする側からすると電子カルテの情報は「最後の個人情報」と言われ大変価値のあるものだそうだ。
 私が聞いたところによると、氏名、クレジットカード情報、住所の三点セットは1件1万円前後で取引されているそうだ。電子カルテの情報ならいくらで取引されているのだろうか。ハッキングする側からすると金のなる木であるし宝の山でもあるのだ。 

 またハッキング集団はコソ泥集団ではない。厚労省は時々通達でサイバー攻撃に注意との通達を我々に出している。どうしようもないことである。蟷螂の斧である。彼らは大変な専門集団であり、時に国家レベルである。一つの医療機関が「取説」片手に戦える相手ではない。丸腰で素手で戦車軍団、時として空母機動部隊と戦う様なものである。 

 ハッキングされてカルテ情報を盗まれることも大罪であるが、時にカルテを破壊されることも稀ではない。電子カルテが破壊されると診療は1 - 2ヶ月間は滞る。個人経営の医療機関では死活問題となろう。 

 電子カルテは初めは医療機関にハードディスクを置きそこに皆でアクセスして使用する、というタイプのものが一般的であった。このタイプの電子カルテを「オンプレ型」という。
 それに対して現在はハードディスクは医療機関に置かずに電子カルテの業者が一括管理をする。医療機関はそこにネットでアクセスして電子カルテを使用するという「クラウド型」が多くなって来ている。
 クラウド型に関しては専門業者が管理するので我々が管理するよりもしっかりしたものがあり、電子カルテの破壊に対しても対策は講じられている様であるからこれを肯定的に見る方も多い。
 しかし、電子カルテを様々な機器に繋げればそこからハッキングされる危険がある故、情報漏洩の危険からは免れることはないであろう。

 また、クライド型には致命的な欠点がある。これは、先の「4 クラウド」で述べた様にハードディスクを管理する業者はカルテの内容に自在にアクセスできるのである。
 電子カルテの業者が電子カルテのハードディスクを管理しているとは限らない、ということも踏まえておこう。
 実際に私はそれなりの大手の電子カルテ業者の営業マンにハードディスクは誰が管理しているのをお尋ねしたことがあるが、その質問を受けると目は泳ぎ薄ら笑いを浮かべて答えをはぐらかした。

 また、最近は非常に安い電子カルテも出回っている。カルテ情報を略取するのが目的ではないだろうかと疑ってしまうのは私だけであろうか。そのような悪徳業者もいつかは出てくるものと思ってはいたが「すでに」という感じである。 

 つまり、一旦ネットに繋ぐといくら便利でもびっくり箱の様に問題が噴出してくる。

 各個人の病気の情報は異性関係と並ぶ個人の大変な機密である。これが知られると人に好き放題に操られることになる。シープルになってしまうのである。くれぐれも患者さんをシープルにしてはいけないと思う。 

 この様に考えると、政府の推し進める医療DX。その最終ゴールである電子カルテの義務化。それはクラウド型を使う、というが、とんでもない話である。そのクラウドのハードディスクはどこにあるのか、ということである。

 さあ、河野デジタル大臣にお尋ねしたいところである。どこにあるのか? 誰が管理するのか? 
 その人こそが新たな我々の支配者であるからこそお尋ねしたいのである。これは国家規模でカルテ情報丸ごと漏洩であり、国民医療の壊滅、引いては新たな支配者を迎えることによる民主主義の終焉を意味するのである。 

 さて、厳しい話題で語りすぎた。 身近な話題に移ろう。電子カルテを使っていると5 - 7 年で更新の時期を迎える。この時の業者の態度が横柄だと言う話をよく聞く。
 継続して同じ業者に頼まないと電子カルテの継続という点ですごく問題が生じる。電子カルテを使う医療機関としては選択はあまりない。業者を変えるのであればいろいろな不便を覚悟しなければならない。
 故に電子カルテ業者は横柄になるわけである。 電子カルテを使用する際にそのデータを自分で管理しているのか、ということがポイントである。業者任せではないだろうか。クラウド型に至ってはデータをそっくり業者に丸投げして任せている様なものである。

 この状態。「4. クラウド」 で述べた自分の会社のデータをそっくり他人のハードディスクに預けているのと同じである。栄光なき状況である。
 見方を変えるとこれは支配されていることと同様である。故に業者は横柄な態度に出るのである。電子カルテを使う我々は彼らにとってはシープルに見えるのかもしれない。


中締めの記事 6部作

ネットで管理されつつある我々 シープルになりつつある我々

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