10私のメンタル大震災(Ⅲ)
その日、仕事が終わった午後8時に井上君から電話が来ました。
「おい!!やったぜ!移送申し立て却下だぁあああああああああ!!!!」
定番の「もしもし」も「もっしー」もなく、イキナリ本題です。
「ウソッ!!」
この瞬間、私にスイッチが入ったみたいです。
「ちょっと!何それ!!マジ?却下?却下だとぉ?」
「んだ!却下だっつの!!今、書類持ってそっちに行くから。会社で待って なよ!」
「よし!10秒待ってやる!!」
これまで津波鬱で冗談を言う余裕もなかった私ですが、秒で鬱が治っちゃいましたw
と、言う訳で、井上君は「決定」という文書を持って、私を迎えに来てくれました。
これが、その決定です。
この書類を手にとった時の私の感激と言ったら!
「おお…これが…モーセの十戒か…」
「じゃねぇよ、でも神々しいのは確かだよなぁ~~~~~っ!!!」
私と井上君は、とりあえず私のアパートに帰って、神棚にこの判決文を飾って二礼二拍手一礼しました!宗教に国境ナシw
この「決定」は、本当に奇跡のような出来事でした。何という優しい裁判官なのでしょう!!傍聴した時も、とても親切な裁判官だとは思いましたが、私達は、この裁判官を心からの尊敬を込めて「ご母堂」と呼ぶ事にしました。傍聴した時に思ったのですが、とても面倒見が良く、裁判官と言うよりは黒い服を着た「お母さん」という感じでしたので。
さて、この「決定」の、移送申し立てを棄却した理由について、素人なりに思った事を書いてみましょう。
『それまでの争点整理においては、電話会議の利用も十分考えられること』と書いてありますね。争点整理というのは、要するに裁判所で「取り上げるべき事」は何か、を決める事、のようです。
争いごとですからお互い言いたい事も、相手のやった事で罰してほしい事もありますよね。でも、裁判で争っている事で、どちらがどのくらい「ダメなのか」を決めるのに「必要のない事」は裁判所では扱わないらしいです。
その「必要のない事」を削除していくのが「争点整理」という事と思って良いと思います。
「弁論準備手続」という言葉もありますが、素人レベルでは同じ意味くらいにとらえておく程度でいいと思います。
(もちろん、法律家の方には『それは違う!』と怒られてしまうと思います が、ただ単に裁判をしたいだけならば、この程度の感覚でいいのではない かと思うのです。だって、裁判中に「争点整理」とか「弁論準備手続」な どという法律用語は全っ然、出て来なかったのですからw)
この争点整理は、本で読んだ所、原告、被告(弁護士をつければ弁護士)が書面で主張を出し合うそうです。この書類を「準備書面」と呼ぶらしいです。そして裁判官が「必要のない」部分を省いて行く、こういう流れのようです。
実際に本人訴訟をやって知ったのですが、民事裁判は、ほとんど準備書面のやりとりだけで終わってしまうものなのですね。テレビに出て来るような、弁護士が法廷で相手方を追求する、などという場面など、最後の証人尋問の時だけです。しかも淡々と質問するだけです。
後日、他にもいくつか傍聴しましたが、どの証人尋問も静かなものでした。弁護士が法廷を歩き回って演説をするような事もありません。ドラマとは全然違いますね。
そして「電話会議」とは何かな、と思って、井上くんに、書記官に電話して聞いてもらいました。電話会議は、専用の電話機器を使って三者通話をする事だそうです。ですから遠方の裁判所まで行かなくても争点整理ができるのですね。
具体的には横浜地方裁判所の中の一室で、裁判官と井上君が、相手方はM市の白根義隆弁護士事務所内で通話する、という方法をとるとのことです。
私が本で読んだりネットで探していた限りでは「電話会議」などという言葉は一言もありませんでしたので、時代が変わった、と言う事なのでしょうね。
ところが、この電話会議は、後で書きますが私たちにとってすごく有利だったのです。
それがわかるまでは私たちは不満でした。私達の思惑は、ドケチなご老人衆に散財させてやる事です。横浜地裁で争点整理をすれば、毎月相手方の弁護士がM市から横浜まで来なくてはなりません。日帰りで来れる距離ではありませんから、当然宿泊費も必要。と言う事は、ご老人衆は毎月弁護士が裁判所で争点整理するのに、交通費が少なくとも4万円、弁護士先生なのですから格安ホテルなどありえない、宿泊費は最低でも2万円くらい。毎月5、6万円は払い続けなければならない事になります。それに様々な報酬がかかりますから、プラスアルファですね。