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12第一回口頭弁論

白根弁護士は移送申し立てと同時に答弁書も提出して、「移送申立が却下された場合には第一回口頭弁論については擬制陳述をする」と書いてきました。

白根弁護士の「移送申立」


擬制陳述」というのは「陳述したことにするからね」という意味のようです。こう書けば第一回口頭弁論だけは出廷しないでいいのですね。(後に、第一回口頭弁論は出廷しない弁護士がほとんどだと聞きました。)
 
結局、延びてしまった第一回口頭弁論も電話会議ですることになりました。そこで、井上君と相談して、裁判官に電話会議ではなく毎回相手方に横浜地裁に来てもらいたいと話そう、ということにしました。後は答弁書に対する反論文を作って第一回口頭弁論の日を待っていました。
 
 
その間に、北村三郎さんの分の答弁書も来ました。北村さんの分は第91民事部(ぢ)係の扱いになっていました。事件番号は平成23年(プ)666号です。内容は、西村さん南村さんの答弁書と全く同じです。
北村さんの分は移送申し立てが来なかったので、担当書記官に電話して(もちろん井上君が、です)第24民事部で同一の事件をやっていて、こちらは移送申し立てがないです、という話をしました。すると、書記官にしばらく待つようにと指示されました。

しばらく経ってから
「裁判所の判断で併合するのは如何ですか?」
との連絡がありました。つまり、同じ内容なのだから一緒に裁判をした方が良いでしょう、という事ですね。
「えっと?そうしたら訴額はどうなりますか?払った印紙代も…」

私たちは、北村さん南村さんに500万円、北村さんに500万円の請求をしました。当然、それぞれの訴状に500万円に応じた印紙3万2千円ずつを購入して貼ったのですから、一括にされたらイヤです。(他に切手代も支払っています。切手代は相手方に書類を郵送するためだそうで、裁判終結後、余ったら返してくれるそうです。)

と、思ったら、「併合」とは、単に「一緒にやる」だけであって、事件番号も変わらないとの事でした。請求額も西村・南村さんに500万円、北村さんに500万円、これも変わりません。裁判が併合されたら、弁護士さんにとっては稼ぎが少なくなるから面白くないでしょうけど、私にとっては裁判所に行く頻度が2分の1になるのでラッキーでした。もちろん、私たちは(正しくは井上君は)併合を了承しました。
 
すると、北村さんの分も西村さん南村さんを訴えた第24民事部(ん)係でやる事になりました。裁判官は「ご母堂」です。ご母堂なら、とにかく親切な裁判官ですから私たちも安心です。
運良く第24民事部に併合してもらえたので、改めて第91民事部の裁判官の偵察(傍聴です)に行かなくて済みました。さらには、この後の裁判で、ずっと西村さん南村さんの分の書類と、北村さんの分の書類を書かなければならないはずだったのが、随分楽になりました。

ただ、ちょっと残念だったのは同じ内容でも裁判官によって対応や判決内容が違って来るのかな?という私の好奇心が満たされなかった事です。
 
ちなみに、併合すると準備書面にも事件番号を併記するのですね。
併合の後の準備書面のタイトルはこういう書き方になりました。


2つの事件を併合したらタイトルの書き方が変わりました


ここで、法曹界の方々は「準備書面に対する反論」?バッカじゃねぇのw
と、お嘲笑いになる事でしょう。ですが、後に書きますが、バカの一念岩石粉砕という事もあるのですよ。バカをバカにすると常識外の結果になる事もありますのでご注意をw


そして平成23年5月19日。とうとう横浜地裁の第一回口頭弁論の日がやってきました。
本来ならば、3月17日にやるはずだったのですから、約2ヶ月遅れたのですね。だいぶ暖かくなって、春コートもいらないくらいの陽気でした。通りの植え込みにはピンク色のサツキが咲いていて、お散歩日和の季節でした。今回は井上君は、私が指定した紺色のスーツです。あのダサいモスグリーンのスーツは不許可です。ましてやオッサン臭いニット素材のネクタイなど絶対禁止!ネクタイは、以前井上君がつけていた無難な青とグレーのストライプのものにしてもらいました。
もちろん前日に美容室に行ってもらいました。少しでも、ほんの少しでもいいから「好青年」寄りに見えるようにしないと、です。
 
そして、結構いいお値段の黒い革靴。この革靴は、私がプレゼントしたものです。勝負事をやるには、靴はとても大事なアイテムなのですから。良い靴は姿勢がよくなるので、猫背気味の井上君も背筋がピシッと伸びました。それに、私の経験ですが、革靴を磨いている時って無心になれるのです。勝負の前にリラックスするのは、とてもいいのですよ。私はおしとやかなので大事な事なので3回書きますおしとやかなのでおしとやかなので格闘技などはやりませんが、仕事も「勝負」のうちです。
 
私もパンツスーツで行きました。ですが、弁護士でもないタダのオマケですから、あまり固い雰囲気だとかえって変なので、パステルカラーのスカーフをネクタイ結びにして、ちょっと柔らかい雰囲気にして行きました。
 
最初に第24民事部の部屋に行って、井上君が書記官のOさんに、
「この人(私)が現場検証に立ち会ったので、証人になってもらうつもりな ので一緒に入って話を聞いていいですか?」
と、尋ねました。するとOさんが裁判官に聞きに行ってくれて、相手方の弁護士がいいならOKとしてくれました。
そこで、指定された部屋へ行きました。法廷ではなく、会議室のような部屋でした。

時間前に部屋に入るとスーツ姿の男性2人と女性1人がいました。皆20代くらいに見えましたので、聞いてみたら彼らは「司法修習生」、つまり将来の裁判官や弁護士、検事だそうです。法律家の皆様は、こうやって実際の裁判を見ながら仕事を覚えていくのですね。
 
部屋の中には大きなテーブルがあり、割と高価な事務用椅子が置かれていました。ブラインドが開けられた大きな窓からは、はるか遠くの風景まで見えます。確か8階でしたか、高いので見晴らしがいいし、明るくて素晴らしい5つ星…おっと、当たり前ですね。県庁所在地の「お役所」なのですから良い場所でないはずがないですねw。
 
まず書記官Oさんが部屋に入ってきて「電話会議」用の機器などを用意しました。第24民事部の室内にいた時は、カーディガンを羽織ってカジュアルな服装だったのに、会議室では黒い法服でした。電話会議であっても、法服なのですね。ちなみにネットで調べたら、法服は裁判官用は絹で、書記官用は綿だそうです。絹だったら高いでしょうね。どんなに安くても10万円くらいはするでしょうねぇ…。
 
三者通話用の機器はスライムみたいな形です。灰色で太いタコ足みたいなのが3本ついている大型スピーカーフォンなのですが、私はPC画面で相手の顔を見ながらやるネット会議だと思っていたので、ちょっと拍子抜けしてしまいました。しっかりメイクして来て損したw
井上君はテーブルの、ドア側の席に座り(下座ですね)、私は部屋の隅のパイプ椅子にちんまりと腰掛けて裁判官を待ちました。私の向かい側には司法修習生達が、同じようにパイプ椅子に座りました。
 
そして、とうとう裁判官が登場しました!と言っても、普通に部屋に入って来ただけですけれどねw
それでも、井上君と私は、起立、礼!
司法修習生達には変な顔で見られましたが、会議室とは言え、裁判は裁判だから、私達は
「ルールどおりにやろうね」
と、事前に打ち合わせをしていました。

ご母堂(裁判官です)はニコニコしながら、
「それじゃ、始めますね。」
なんて言ってくださって、なごやか~に第一回口頭弁論が始まりました。
まず白根弁護士事務所と電話がつながりました。白根弁護士と、正常に会話が出来ている事を確認してから、ご母堂が井上君に
「原告は訴状及び甲第1号証から甲第3号証まで陳述されますね?」
と、聞きました。
井上君は、当然
「はい。」
ですが、今回は特に緊張はしていない様子です。神奈川簡裁の件もあり、私は井上君があがってしまわないか心配していましたが、さすがご母堂。台詞は裁判官そのものですが、優しく微笑みながらおっしゃったので、井上君もリラックスしたようです。
 
それから、白根弁護士に、私が会議室にいていいか聞いてくれました。白根弁護士は、いいと言ってくださいました。白根先生、本当にありがとうございました。やっぱり、敵の味方は味方です!本当に感謝しています。何しろ争点整理の現場を、準備書面を書いている私自身が実際に見ておかないと、作戦立てられませんからね~w。
 
そしてご母堂、白根弁護士には
「答弁書を陳述されますね?」
「はい。」
次に両方に
「争点整理は今後も電話会議でよろしいですね?」
白根弁護士は即答OKでした。ところが、井上君は答えにつまってしまいました。後ろから私の刺し殺すような視線を感じたのでしょうねぇw。何しろご老人たちに散財させる作戦ですから、白根先生には毎回、G県M市から横浜地裁まで来てもらうのが目的の1つです。

井上君は私の方は見ないで、下を向いて黙っていました。
そして、1分間くらい(だったような気がします。)経ってから
「はい。お願いいたします。」
と、小さな声で言いました。
 
そうして次回期日を決めて、第一回口頭弁論が終わりました。10分もかかっていませんでしたが、ご母堂ったらこんなド素人に
「お疲れ様でした。」
なんて言ってくださって、もう何という人格者なのだろうと、改めて感動してしまいました。
私達が深々と頭を下げると、裁判官が軽く頭を下げて、ニコニコしながら部屋を出て行きました。そして、書記官がスピーカーフォンを片付けながら、
「もう、お帰りになっていいですよ。」
と言ってくださいました。(O書記官も女性です)
そこで、私達と司法修習生達も部屋を出ました。将来の「偉いさん」達がエレベーターに乗り込んで行くのを見送ってから、私達は次のエレベーターを待ちました。
 
周囲に誰もいない事を確認してから、私が井上君に
「ちょっと!何で今後も電話会議でいいって言ったのよ!話違うじゃん   よ!」
と小声でささやきました。
「だって、ンな事言える雰囲気じゃなかっただろうよ!」
「いのっちさぁ、連中に散財させてやるって言ったの自分じゃん!二人で、 あの暗ぁい空のお星様に誓った事はナンだったの!」
「うううううううううう…」
「今からすぐ行ってきなよ!次の人の裁判始まる前に話つけて来なよ!」
井上君は、マッハで走って裁判官のところへ行きました。
おやおや?随分素直じゃん?…そう言えば、神奈川簡裁の初回に似たようなトラブルがあったような気がしますね~…www。
 
ちょっとして、井上君がトボトボと戻ってきました。
「あのさぁ…ダメだって。あの移送申し立ての棄却の理由が電話会議ができ るから、だからだって…。」
「あ~!うん。そっか。それならわかるゎ。」
そうですね、電話会議の件は、ご母堂の「移送申し立ての却下の判決理由」に書かれていましたね。


「移送申立」に対する「決定」1ページ目


「移送申立」に対する「決定」2ページ目


要するに「電話会議ができるから、裁判所はG県でなくてもいい」でした。それなら仕方ありません。私の鬼の形相が、ほぼ人間に近くなったらしく、井上君の顔がホッとしたように緩みました。
 
こうして第一回口頭弁論の帰りは、無事にファミレスでお茶して解散しました。これまでの井上君だったら、私が口数が少ないだけでも
「何だよ?何か言いたい事でもあンのかよ!」
などと喧嘩になっていたでしょうねぇ。
少しは成長したかい?若くねぇのw。


目次
1大家が泥棒(Ⅰ)
1大家が泥棒(Ⅱ)
1大家が泥棒(Ⅲ)
2オタ友のために(Ⅰ)
2オタ友のために(Ⅱ)
2オタ友のために(Ⅲ)
3現場検証したら(Ⅰ)
3現場検証したら(Ⅱ)
3現場検証したら(Ⅲ)
4仕事しろよ(Ⅰ)
4仕事しろよ(Ⅱ)
5本もない(Ⅰ)
5本もない(Ⅱ)
5本もない(Ⅲ)
5本もない(Ⅳ)
6お宝20号
7普通が一番
8下準備(Ⅰ)
8下準備(Ⅱ)
9暴走簡裁(Ⅰ)
9暴走簡裁(Ⅱ)
9暴走簡裁(Ⅲ)
9暴走簡裁(Ⅳ)
10私のメンタル大震災(Ⅰ)
10私のメンタル大震災(Ⅱ)
10私のメンタル大震災(Ⅲ)
11民事訴訟法17条うぇ~い