5本もない(Ⅱ)
そして待望の月曜日が来ました。イザ我らが横浜地裁へ出陣だぁっ!!
横浜は昔は貿易港でしたから、レンガ造りの古い美しい建物も残っていますが、横浜地裁は平成13年に建てられたのでデザインも新しい、地下2階、地上13階建ての大きなビルです。
驚いたことに、何と!県庁所在地なのに
駐車場がタダです~~~~!!!!!
そして、裁判所の敷地内の駐車場がいっぱいでも、隣の法務局の駐車場を
タダで!!!!!
使えます。何この神々の住む場所!!
入ってみると意外にカジュアルな服装の人達が歩いていましたのでちょっと安心しました。きっと裁判の当事者や傍聴人なんでしょうね。当然、胸にバッチをつけている弁護士さんもあちこちに…。弁護士先生達は、スーツ姿です。トレーナーにジーンズとか、上下ジャージというような奇人変人弁護士は、いないのかもしれませんね。
まぁ何とか裁判所の中に入る事まではできましたが、「裁判のやりかた」を、どこで聞いたらいいかわかりません。壁に色々な部署の名前が書いてある巨大プレートはあるけど、どの部署が何をするところかさえも、さっぱりわかりません。そこで訴状を受け付けるのかなぁ、と思った部署に行ってみました。
「シッシッ!」っと追い返されるのは覚悟の上で
「すみません…」
と言いながら、重いドアを開けました。もちろん井上君が。
この私が矢面に立つはずないですからねw。すると、部屋の中のデスクに座っていた男性が
「はい?」
と顔をあげてくれました。あぁ、よかった。ムシされるかと思った…。
井上君が
「すみません、本人訴訟をしたいんですが、手順とか訴状の書き方がわから ないものですから…。とりあえず来てみました。」
と言うと、その男性が、アッサリと
「あ、そちらにパンフレットがありますから、どうぞ。」
と言いました。
えっ?パンフレット?
指し示された方に行ったら、よく区役所などに置いてあるパンフレット専用棚がありました。数種類のパンフレットの中から「民事訴訟の提起について」というパンフレットを手にとってみました。
すると!あったんです!訴状の書き方が!
でも、そのパンフレットって、たった数枚なんですよ。その数枚に訴状の書き方が書いてあったのです。難しい用語の解説もなく、ごくごく単純に。ちゃんと「訴状記載例」もついていて、訴状を提出した後どうするか概略もサラッとわかりやすく書いてあります。これはスゴいですよ!難しい事をわかりやすく説明できる人が本当に優秀なのだそうですが、どれだけ優秀な人が作成したのでしょう。「訴状を出したい人がどうすればいいか」だけに絞って必要な事だけ書くなんて、本当に「本人訴訟」をやる素人の立場に立って作ってあります。
そう、「訴状」を出せなければ裁判はできないのですから、まずは、それだけわかればいいのです。どこぞの弁護士先生がお書きになった難解な「訴訟の流れ」も、訴訟が始まれば勝手に流れるでしょう!
後になって、他にも色々知らなければならない書類や書式がある事がわかりましたが、そういうものは裁判が始まらなければ必要ない訳ですから、本当にそのパンフレットだけあれば十分でした。本やネット情報を探し続けた今までの苦労は何だったんだ…。
それにしても、裁判所って親切な事をするんですねぇ。私、もう面倒だから裁判所の人に教えてもらおう、というロクデナシ根性でよかったと、心から思いました。どこまでも自分で努力して書式を探そうなんて言う努力家だったら、提訴するまで何年かかったことやら…。
「いや~、言ってみるもんだねぇ!」
ではない、行ってみるもんだねぇ、なんて言いながら裁判所を出た時には、あんなに巨大に見えた裁判所の建物が、心なしか縮小されたような気がしたものでした。
そのパンフレットにも著作権があるのでしょうから、ここには載せられないので、もしも本人訴訟をやりたい方がいたら、裁判所でもらって来てくださいね。
裁判所と法務局は同じ建物です。法務局の食堂で昼食をとって、急いで家に戻り、その日のうちに訴状を書き上げました。
パンフレットによると、訴状は裁判所用、訴える相手用、自分用、同じ物を3冊作成するそうです。
パンフレットを見ながら最初に作った訴状は、冒頭に「訴状」と書き、そのすぐ下の左側に「横浜地方裁判所御中」、次は右側に訴状を出した日付、その下に「原告 井上准一」と書き、続いて井上君の住所と電話番号を書き、もう一度「原告 井上准一」と書きました。
2行空けて、西村いちろうさんの住所、その下に「被告 西村いちろう」。同じく南村二江さんの住所、「被告 南村二江」
それから真ん中に「損害賠償請求事件」と書き、また2行空けて「訴訟物の価額 5,480,080円」これは500万円+盗まれた物の価格+印紙代です。
そして、その下に印紙代「貼用印紙額 32,000円」と書きました。
それから本文です。
第1 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、連帯して次の金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決及び仮執行の宣言を求めます。
第2 請求の原因
ここには、井上君の裁判ですから、井上君を「私」にして、ご老人たちとの事件の経緯を書きました。普通の作文のような文章でした。
そして、その翌日、同じ窓口に書き上げた訴状を持って行くと、職員さんが「直すべき点」を教えて下さいました。ここは箇条書きにしますね。
1, 訴状の文章は、訴える方の「私は」としたところを「原告は」にす
ること。訴える相手は「被告」にする。相手が数人ならば「被告
ら」とすること。
2, 相手の住所、氏名が特定できないと訴えられない事。
(訴えたい相手は、昭和A棟に窃盗に入った全員でした。西村いちろう
さん夫妻と、南村二江さん、それから名前のわからない、もう一組の 夫婦。印紙代がかかるので世帯ごとにしました。西村いちろうさん は、本人から井上君が住所を聞き出していたので、わかります。南村 二江さんは、M署で鍵を渡された時に受け取った「引き渡し書」に書 かれた、自称「大家」の「東村和美」さんの住所があります。「東村 和美」さんは南村さんの実の娘で、同居していると言っていましたか ら、その住所がウソでなければ間違いないはずです。残りの夫婦につ いては住所も氏名もわからないため、提訴は諦めました。)
3, 住民票のある所と別のところに書類を送ってほしい時は「送達場 所」を書く事。
4, それから今回は窃盗事件ですから、盗まれたものと価格は別紙にす
る事。その別紙の名称を「動産目録」として、訴状には「別紙動産 目録記載の物品を」などと書く事、盗まれたものは特定できるよ う型番などできるだけ詳しい情報を書く事。
これらはパンフレットには書かれていませんでした。4,の「動産目録」は特に大事ですよね。この日は朝、できるだけ早く裁判所に行き、ノートPCと、井上君のモバイルプリンターも持って行きました。私は仕事がありますから、使える休日を最大限活用しなければなりません。職員さんにアドバイスを頂いた私達は、急いで駐車場に戻りました。私は車の中でノートPCを開きました。文章の手直しは、たいした作業ではありませんでしたが、動産目録には手間取りました。表にしますので、A4の幅に合わせてつくるのが面倒…。(ちなみに、後で書記官から教えて頂いたのですが、各ページには、一番下にページ番号を書かなければならないそうです。ですが、この段階では指示されませんでした)
約2時間かけて修正し、3冊プリントアウトして、もう一度窓口に持って行きました。窓口で対応して下さる方は、毎回変わりました。2回目の方には
1, 盗まれた物の金額を記入すること。
2, その金額は、購入金額ではなく、時価の2分の1にする事。
3, 証拠はあるだけ出すと良い
4, 訴状も、証拠写真をプリントした紙も、提出する書類はすべて左に 3cmの余白をとる事。上下と右の余白は特に気にしなくていい。
以上を教えて頂きました。
盗まれた物の時価…。10年以上前に購入したものばかりですから、こればかりはヤフオクなどで調べるしかないですね。そういう作業は当事者の井上君自身がやるべきですし、その日の裁判所の閉所時間まで、とても間に合いそうにないので、明日また来よう、と言う事になりました。
この日は法務局の駐車場に車を停めましたので、帰りに地下の本屋さんに寄ってみました。小さな本屋さんで、特に専門書などはありませんでしたが、その隣の酒屋さんが凄かった!珍しい日本酒が沢山あって、しかも官公庁ビル内とは思えないほどの風情のある古民家風の内装でした。ついつい長居してしまいそうな高級店です。「お役人」御用達でしょうか。しかし、ゆっくりお酒を眺めるのは「やる事をやってから」です。とにかく、訴状を出してからですね。
目次
1大家が泥棒(Ⅰ)
1大家が泥棒(Ⅱ)
1大家が泥棒(Ⅲ)
2オタ友のために(Ⅰ)
2オタ友のために(Ⅱ)
2オタ友のために(Ⅲ)
3現場検証したら(Ⅰ)
3現場検証したら(Ⅱ)
3現場検証したら(Ⅲ)
4仕事しろよ(Ⅰ)
4仕事しろよ(Ⅱ)
5本もない(Ⅰ)