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私の戦場日誌③

富国強兵の国策に乗せられて

私の入隊した時の聯隊砲中隊の中隊長の姓が
小田という中尉であった。
 入隊して間もない頃、末永軍曹が内務班に来て小田中隊長が小田二等兵をよんでいるからすぐ
中隊長室に行く様にと、同行してくださった。
 私が「小田二等兵はいります。」と大きな声で呼称したら、中から「入れ」と言う声がいたので中に入り、末永軍曹は恭しく「小田二等兵を連れてきました」と報告した。中隊長が末永軍曹に「ご苦労であった。下がってよい」と報告した。
中隊長は私に「椅子に腰を掛けてよい」と言うので、私は「はい」と言って着席した。私が入営前に提出していた身上調査書を前に広げながら、
一人言の様に「ウンウン」と頷いていた。
酒の欄に目を落とすと初めて私の顔を見て
「オーお前は酒はいけるんだな。」と言われた。
私は、酒の欄には最高の一升以上の所に丸印をつけていた。その次に入営前の賞罰の欄に目を落とすと、中隊長は「お前は入営前に地元の聯隊区司令官により二度受賞しているのだな。」と驚いた様にして言われた。そして、「一度の受賞者はいるが、二度というのは初めてである?」とも言われ、「お前は将来小田中隊の幹部になってくれ」と強い調子で言うので、私は「はい」と言ってしまった。
小田中隊長は大変満足しておられた様だったが、その3ヶ月後位して聯隊砲の中隊長を辞したが、聯隊内にはおられた様だ。

賞罰(しょうばつ)何らかの功績を称えられた受賞歴や表彰歴」である「賞」と「刑法犯罪を犯したことによる犯罪歴」である「罰」を組み合わせた言葉です。

福島県郡山市では、その当時 国会議員であった
原孝吉氏が資金をだされて 郡山市国防少年団が結成させれた。
300人を市内の6つの小学校の5年生、6年生の
中から選抜されたもので、軍帽軍服を着せられ足には当時海軍の陸戦隊の兵隊が付けていた 白いキャハンを付けて、帯剣を着用し小さな小銃を持たされていた。

キャハン ズボンの裾が障害物にからまないようにズボンの裾を押さえ、脛を保護し、足の鬱血をも防いでくれます。

各小隊ごとに夕方 小学校が終わってからとか
朝は登校前とか、週3回位 徒歩訓練や各個教練
小隊訓練、小銃の射撃訓練等各種訓練、学科では
歩兵の一般四則や、軍人の勅諭等などの学習を入営する迄の8年間も続けてきた。

一般四則 たし算・ひき算・かけ算・わり算の4種類の計算 のこと。

軍人の勅諭 1882年、明治天皇が発した訓告。 正式名称は、「陸海軍軍人に賜(たま)はりたる勅諭」とされ、軍人の精神教育の基本となった。 「一(ひとつ)、軍人は忠節を尽(つく)すを本分とすへし」など、忠節・礼儀・武勇・信義・質素の五つの徳目を説いた。

8年間と言うと小学5年から高校3年までの様だ。祖父は高校もでている。


そのために初年兵としては一般の戦友よりは
一歩先を歩いていたが、聯隊砲中隊の初年兵の体格は皆んな大きく頑強な者が多く、私は34名中1番非力であった。
夜 消灯後床につき目を閉じると目の前に大きな輪の様なものご出来て、それがぐるぐると回っていたものであった。何回か弱気になった事もあったが、佐藤軍曹の励ましを受けながら同年6月1日付で一期検閲も無事終了し、同年兵34名中10名位が一等兵に進級した。私は1番で名前を呼ばれることができた。
また上等兵候補者も10名中1番で指名され、
精勤賞6名中1番で受章することができ、また
同年9月1日には同年兵の内3名の精勤賞(これは2回目であったが)私が1番で受章することができた。

精勤賞は欠席が1回までの生徒に贈られる。 但し、精勤賞は少しややこしく、「遅刻・早退の合計が6回で欠席1回とみなす」というルールがある。

その時には中隊内では四年兵でも一等兵で精勤賞を腕につけていない兵隊も多かったので、古年兵からは非常に厳しくあつかわれた物だった。同年10月1日には、昭和19年度の現役兵が入隊してきたので、念願のの二等兵となり 直ちに初年兵係をの助手を拝命した。二年兵からは茂木一等兵と私の2人であった。その時の初年兵はほとんどが宮城県登米郡の旧制中学校を卒業した幹部候補生34名であったと記憶している。
10月の下旬より師団の演習が約半月の予定で始まり、この演習が終了すると同時に四年兵が除隊できるとの事で非常に張り切っていたことが
思い出される。当時の四年兵には召集兵と現役兵とがおり、両者は同じ年の微集で召集兵のほうご早く入隊し、現役兵が後から入隊をしてきたとのことで四年兵の数が非常に多かった。
師団の演習から帰隊すると同時に書簡留めになってしまった。
第十九師団もいよいよ何処かの戦線に投入されるとの噂が広がり、四年兵の落胆は大変に大きかった。

左が祖父。右が祖父のお兄さん。

とうとう、戦争に送られるんだね。
やっぱり、みんな行きたくなかったんだよな。
と思い知る。

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