レバノン・ワインは紛争の香りがする
ド・マイナー映画、『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』という映画を見てきました。
なんと日本で見れるのは、アップリンク吉祥寺のみ、、、。
Filmarksでも「見た」としているのは、現時点で7名のみ、、。
ただそんな映画だからこそ、レビューを求めてこのnoteに辿りつく人もいるはず。そんなコアな人にむけて。全国のワイン好き、レバノン好きに、届け、、。下記レビューです。
「レバノンワインは紛争の香りがする」
ブドウ畑からワイナリーまでトラックでブドウを運ぶ間に、イスラエルのドローンに爆撃される可能性がある。レバノン内戦の最中、南側からはイスラエルの侵攻、北側かららシリアの侵攻、その間にブドウ畑があった。そんな環境の中で諦めずにワイン造りに尽力した人々のドキュメンタリー。
「レバノンワインは紛争の香りがする」という劇中で述べられたこの一言が、強烈に印象的で記憶にこびり付いた。
味覚や嗅覚はといった主観的なものは、知っている情報や知識に大きく影響を受ける。この映画を見た後で飲むレバノンワインは、静かに、ゆっくりと味わい、一滴も無駄にできない。そんな気がする。
戦火の中でワイン造りに尽力した人たちの、その一滴一滴を、決して無駄にはしないし、余計なウンチクで台無しにしたりはしない。静かに、、戦地の黒煙、火薬、砂塵、血、涙、、の香りをくみ取ることになるだろう、、。
「その香りはまるでレバノンのワインのよう」
聖書でもそのように書かれているように、レバノンワインは古くから評価が高い。レバノンワインはフェニキア人によって、古代エジプトや古代ギリシャに輸出された。西洋ワイン文化はレバノンワインから始まったと言えるかもしれない。
劇中でも、レバノンで同国最古の紀元前に作られたワイン圧搾機の遺跡が見つかったこと、またフェニキア人によってレバノンワインが古代エジプトのファラオのもとまで届けられてたことが紹介される。
鑑賞後は、現代のレバノン情勢から、レバノン内戦、また紀元前にフェニキア人がワインを貿易していたころまでの歴史を、その舌の上で味わうことになるだろう。
「味を判断するのはまだ早い」
『食べて、祈って、恋をして』の著書エリザベス・ギルバートが、レバノンワインの父 セルジュ・ホシャールとワインを飲んだ時のことを思い出しながら語る。
このセルジュという人は映画冒頭のインタビューから拘りの強さが全開であるが、エリザベス・ギルバートと飲んだ時もワインの1本のボトルを3時から9時までゆっくり味わって飲むという、クセのある独特な飲み方をする。
そして味についてエリザベス・ギルバートが語ろうとすると「味を判断するのはまだ早い」と制止する。ボトルを飲み切るまでに味が変わる可能性もあるし、季節の変動によって味が変わる可能性もある。それらを全て味わってからでないと、味を判断するのはまだ早いと、、。
それを受けてエリザベス・ギルバートは「人との接し方まで変わった」という。人のことを勝手に決めつけなくなったと。そして画面には、「ワインとは人の様である」という名言が映し出される。
これほどにまでこだわりの強いセルジュ・ホシャールがとことん拘ったであろう、シャトー・ミュザールのワインをぜひ飲んでみたくなる。
日本ではレバノンワインが飲めるレストランは限られていると思うが、今度レバノンワインを飲みに出かけようと思う。
それでは。