HANOWAの課題認識の変遷。
HANOWAは、少し風変わりなサービスです。
ちなみに、ほぼ全ての社長は「自分の会社は他と違っている」というバイアスを持っています。
採用コンサルだった頃、
「うちは少し特殊なんで...」
「うちの地域は少し特殊なんで...」
「うちの業界は少し特殊なんで...」
「うちの顧客は少し特殊なんで...」
「うちのスタッフは少し特殊なんで...」
と、歯科医院以外のいろんな顧客と話しても、みんなそう言ってました。
登場人物の全員が「自分は違っている」と思っている場合、それは「違い」にはなりません。
人はそれを「普通」と呼びます。
その認識に立ったとしてもやっぱり、HANOWAは、少し風変わりなサービスです。
以前役員の南部が、社内の風土やカルチャーみたいなところについて述べたので、今日は少しサービスの部分について書きます。
プラットフォームとは
今では市民権を得た言葉ですが、メルカリやUber、AirBnBなど、
また国内の未上場先輩スタートアップならタイミーや助太刀、CADDIなどのいわゆる「商売をして頂く為の商売」と言えるようなものですね。
HANOWAもここに属します。
歯科医院で働いて欲しい人と、
歯科医院で働きたい人をマッチングして、
単発なら日当の33%の手数料を、
直接雇用契約なら33万円の手数料を頂戴します。
ニワトリタマゴ問題とその解決策
通常、このような顧客が二方向に分かれるプラットフォームは「ニワトリが先か?タマゴが先か?」という、ニワトリタマゴのジレンマを抱える。と言われます。
しかしこれは正直シンプルです。
解決策としては「最も欠乏した資源」をプラットフォーマーが集めてやればいいだけです。
Uberなら、「余った車を運転してスキマ時間にお金を稼ぎたい」ドライバーはいても、「他人の車に乗って移動したい」顧客はなかなかいませんでした。後者が「最も欠乏した資源」です。
AirBnBも、「家の余ったスペースを貸し出してお金にしたい」家主はいても、「アプリで出会った他人の部屋に泊まりたい」顧客はなかなかいませんでした。後者が「最も欠乏した資源」です。
助太刀もタイミーも、各市場の中で「最も欠乏した資源」である建築職人やスキマ時間アルバイト人材を、企業に代わって集めてあげることで成長しているはずです。
ただ、社長の僕も謎だったのが...
「最も欠乏した資源」の論理が成立しない
HANOWAの場合、統計的な数字やニュースを見る限り
さも、歯科医院で働く人が不足しているように見えます。人材が「最も希少な資源」のように見えます。
普通、プラットフォームビジネスでは、「最も希少な資源」を集める為に運営がアレやコレやお金や知恵を費やします。
なんなら勝ち残るプラットフォームの創業者はココに何かしらの「門外不出の秘伝のタレ」的なノウハウを持っています。
しかし、実際のところHANOWAの場合、人材よりも歯科医院を集める為に毎月の広告費を5倍くらい多く払ってます。
足りない人材を集める為のコストよりも、人が足りなくて困ってる歯科医院の方を、圧倒的にコストをかけて僕らは集めています。
というかむしろ、人材不足の業界で、人材不足を解消しようとして始めたスタートアップのくせして、ローンチ以来3年近く、ほぼ人材を集める為に広告費を使ってきませんでした。
?
Say again.
人材不足の業界で、人材不足を解消しようとして始めたスタートアップのくせして、ローンチ以来3年近く、ほぼ人材を集める為に広告費を使ってきませんでした。
実はインサイトを捉えきれてなかった説
今日ここで、上記に記したHANOWAの不思議さを、俯瞰的に述べることが出来ているのは、僕自身がこれまでと異なる解釈をHANOWAのビジネスに対して持つことがようやく出来るようになってきたからでもあります。
実は「最も欠乏した資源」とは歯科医院で働く人材ではなく、
職場としてまともな歯科医院の方だったのでは?というオチです。
ええ。
カッコつけてアインシュタインを引用しておきながら、それかい。
採用コンサルやっとった7年前から知ってたわと、新井の中のゴーストがそうささやいてます。
「歯科衛生士に至っては国家資格者およそ30万人のうち、およそ14万人程度しか就労していない!」
「実に16万人もの人数が現場を離れて休眠資産として眠っている!」
「彼女たちの多くが30代前後で離職率が一気に上がり、ライフイベントと共に滑らかに働くことが出来ないでいる!」
散々僕自身が投資家向けのピッチで、さも「人が足りてない!」かのように話してきました。もちろん、「人材が不足している」と「まともな職場が不足している」は二項対立の概念ではなく、因果律です。これこそニワトリタマゴです。2つは分断できるモノではありません。
「課題」が変わるとミッションも変わる。TAMも変わる。
ちょっとだけ「まともな職場」についての補足です。分かりやすいのは公衆衛生面。
滅菌とか専門用語もありますが、要は不衛生ってことです。
(人の口の中に入れるものが、まぁ、えぇ。。)
公衆衛生面しかり、労働法の遵守状況しかり、保険診療の細かなルールの遵守状況しかり、あまりにも労働者たちが、疑問を呈さざるを得ない環境が多いのが今の歯科業界の実情です(*採用コンサルタントとして、人材紹介会社社長として7年間関与してきた経験を元に)。
また更にややこしくしているのが、雇用主vs労働者というイーブンな関係性ではなく、どうしても歯科医師>歯科衛生士=歯科助手=歯科技工士というヒエラルキー構造ゆえに、適切な労働者からのフィードバックループが機能せず、経営者が裸の王様化する業界構造の一因にもなっています。
既出ですが、「人材が不足している」と「まともな職場が不足している」は二項対立の概念ではなく、因果律です。2つを分つことはできません。
しかし、企業がどちらに狙いを定めるのか?で、課題解決のストーリーは変わります。ストーリーは戦略です。戦略が変われば、求められる組織体も、必要とする兵站も、時間軸もそして自らが戦場として定める市場(TAM)も何もかもが変わります。
ある意味では、本質的なインサイトを捉えきれてなくても
こんな感じで年次300~400%成長をずっと続けているのも、HANOWAが風変わりなサービスの証明かも知れません。
. . . .
そんなこんなで、とても地味と分かりつつ、創業者が対面する市場の「課題」をどのように捉えているのか?その変遷と最新の認識を書き示しました。
事業上のはっきりとした形になって顕現するのはしばらくタイムラグはあるでしょうが、我々は
歯科業界の人材不足を解決する会社
ではなく、これからは、
歯科業界の公衆衛生面、労務環境面、保険診療のルール面などにおけるバラツキを標準化する会社 = 全ての歯科医療体験を標準化する会社
として不可視な部分での明確な変貌を遂げたいと思います。
企業とは公器であり、ガバナンスが求められるものです。
しかし一方で企業とは創業者の総合アート作品でもあります。
「我々は今後、どう"在る"か?」の次。
来月は「我々はどうこれを"成す"か?」を書き記したいと思います。
では。
あらい