コントローラーが故障[後]

コントローラーや人びとはコントロールしたいと絶えず言う。

すべてコントロールしたいだって?

現実の人間を支配したところで、ただ虚しいだけだ。支配などしたがるのはそれは己が弱いからだ。こんなものに興味はない。

僕は無言でコントローラーを川底めがけて勢い良く橋から落とす。

あぁ......素晴らしい。あらゆる人々の意思が溢れている。欲望で満ちて、熟している。支配の究極の形は、「趣味」だろう。力を求めたその先など、何もないことを歴史の中で人類は嫌というほど悟っただろう。人の支配はやがて虚無を生み、停滞し、滅亡する。人々の欲望の壺など、簡単に満たされてしまう。満たすのは簡単だ。快楽を与えてしまえばいい。究極的には、支配されたがっているのだから。


でも......僕には飽くことのない欲望が渦巻いているのを自覚している。それは快楽でもあり毒でもある気がする。魂のカタチを知りたくて。僕は......僕自身が分からない。だから、自分の魂のカタチを確かめてそれが美しいものなのだと感じたい。そのために魂を飲み込んで、僕と同じか違うかを確かめる。


満たされない......。僕と同じ魂が存在しない限り、この探求は終わらない。自分自身について考えるたび、問われるたび、僕は僕を忘れて、虚無に沈む。そして目を開くと広がるのは惨状だ。それを引き起こしたのが自分だと意識するたび、僕の中の「決まり」が、植え付けられた善性が泣き叫んで、ますます僕は飢える。


そもそも僕は生きているのか、死んでいるのか。死体で歩き回っている気分だ。もう何年も前から。生き残ってしまった、という感じもする。血も肉も本質ではない。そう、まさに表現するなら、人間の条件を知らないみたい。僕はその条件を壊してみる。すべて壊した先に、破壊の結果生まれる感情も全部飲み込んで、捻れて、痙攣さえしないほど繰り返し感情に犯されたとき、僕は僕の姿を見ることができる気がする。

生きているのか、それとも。人間なのか、それとも。僕は僕なのか、それとも。

コントローラーは故障した。

今、真に人間的な世界が広がっている。泣き喚き、怒り狂い、喜び踊り、なんとうるさく醜く、純粋な世界。この惨状を祝福しよう。人間芸術に味付けされた、恐ろしいほどに純粋な魂たちが己を忘れ、今、透明な恐怖に包まれている。
自分自身の存在を脅かす、穏やかな膜のような得体の知れない「感情」が僕を刺す。

生きているのか、死んでいるのか。人間なのか、そうでないのか。僕は僕なのか、それ以外なのか。

全部ぜんぶ、どうでもいイ。

虚無が滲む。何も無い。求めた代償、孤独な祈り、呼吸を殺すネクタイ。ああっ、自己が割れる。カーテンの揺れが収まる。削られる痛みも、喪失の悲しみも、遠く色彩を欠いテ......。

痺れる。手足を動かすことさえ、ままならない。一歩歩くたび崩れる。痛い......のか?形成と崩壊が進ミ''ッ......言語が渦巻いて、言葉がうまく.....。
朽ちていく。内側から壊されて、ガラスの笑顔が熱を失う。

僕のことを愛していますか?

良心と悪意が混ざる。

生命ばかり。

パラパラ、パラパラパラパラ。
広くて暗い。

パラパラ、パラ。
あ〜っはっは。ふっ......ぅあっ、あはあははあはあはあはははっ......うぅ、あぁ......。

もぉ......どして。

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