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【展評】飯沢耕太郎詩集『猫島からの帰還』刊行記念高橋克之 挿画展(2025.1.31-2.23|ふげん社)

 自分の詩集にかかわる展示なのでちょっと書きにくいのだが、『猫島からの帰還』(ふげん社)の刊行記念展として開催された高橋克之の挿画展には、とても素晴らしい出来栄えの作品が並んでいた。詩や小説の挿画は、けっこう難しいジャンルではないかと思う。テキストの内容をそのままなぞってもつまらないし、かといってまったくかけ離れてしまっては挿画にならない。つかず離れずの距離感と、テキストへの深い理解力が必要になるのだが、その点で今回はとてもうまくいったのではないかと思う。詩を高橋自身の解釈で読み込み、思いがけない角度で絵に落とし込むことで、アフリカの大地を彷徨う「わたし」と「猿の顔をした子」という二人の主要な登場人物たちの造形がくっきりと形をとってきていた。合成うるしで立体的に描いた絵に、絵の具、色鉛筆などで着色していく彼の独特の手法も、ぴったりとはまっていたのではないだろうか。テキストに挿画を寄せるというのは、高橋にとってもはじめての経験だったようだが、大きな可能性を感じる。いいテキストを選んで、ぜひまたチャレンジしていただきたいものだ。

レビュアー:飯沢耕太郎


飯沢耕太郎詩集『猫島からの帰還』刊行記念
高橋克之 挿画展

会期:2025年1月31日(金)〜2月23日(日)
会場:ふげん社
関連リンク:https://fugensha.jp/events/250131izawa/


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