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【展評】鵜川真由子「海辺のカノン」(2025.1.7-1.26|ふげん社)

 鵜川真由子は2020年から神奈川県茅ヶ崎に住むようになり、その住居の近くの海辺の光景を撮影し始めた。それまでとは異なる環境に触発され、光、風、波などの自然現象、建物や砂浜の漂流物、出会った人々など、あまりあらかじめ計画をたてることなく、目についたものから撮影していった。それらの写真を集成した写真集『海辺のカノン』(Case Publishing)の刊行に合わせて、企画・展示されたのが本展である。

 町口景デザインの写真集には、かなりたくさんの要素を詰め込まれていたのだが、展示は、人の営みに視線を据えたことで、すっきりとまとまった印象を受けるものになった。出会いを大事にして、フレキシブルに撮影を進めていく鵜川のスタイルが、写真の選定、配置によくあらわれている。海辺で生きるということの歓び、解放感が、それぞれの写真からヴィヴィッドに伝わってきた。彼女の写真家としての経歴において、一つの区切りであるとともに、「次」への期待感も十分に感じさせるいい展示だった。

レビュアー:飯沢耕太郎


鵜川真由子個展「海辺のカノン」
会期:2025年1月7日(火) 〜1月26日(日)
会場:ふげん社
関連リンク:https://fugensha.jp/events/250107ukawa/

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