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年金財政検証2024年と106万の壁撤廃の関係
こんちは!副業社労士まさゆきです。
2024年の財政検証結果が厚労省より発表されました。前回の2019年に比べ改善、併せて財政検証と106万の壁撤廃の関係にも触れます。
【財政検証とは】
財政検証は、年金財政の長期に渡る健全性(概ね100年)を5年毎に検証するものです。年金は20歳から死亡するまで60~70年の長期に渡るので、持続可能でなければいけません。社会・経済の変化を踏まえながら長期的な健全性を検証します。
財政検証では「“所得代替率”が将来も50%を超えるか」検証します。「所得代替率」とは「モデル世帯年金額」の「現役男子の平均手取り収入額」に対する割合を示しています。「モデル世帯年金額は現役世帯収入額の半分を切ってはいけない」国の目標です。
【2024年財政検証結果は改善】
[積立金総額の推移]
年金積立金を原資としGPIFが運用する積立金総額は2019年の169兆円から2024年246兆円に大幅に増加、年金財政は安定しました。特に令和5年度の運用実績は45兆円の黒字で、過去最大です。国内外の株式市場等の活況が運用益を押し上げました。
[所得代替率]
安定した年金財政を背景に所得代替率の見通しも現実的です。“現実的”と感じるのは、デフレ経済脱却の兆しが強くなり、2019年と比べ好転しているためです。「2060年に所得代替率50%」となる経済前提条件を、2019年と2024年で比較すると下記の通りです。
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2019年の前提条件は非現実的でした。デフレ経済のもと日銀目標の物価上昇率2%は未達、賃金は上がらず、運用利回りも芳しくない。更には「出生率1.35⇒1.44に上昇」「高齢化率40.4%⇒38.4%に上昇」現実離れした前提条件でした。対して2024年、「過去30年投影ケース(過去30年の経済状況~失われた30年が今後も続くケース)」現実的前提条件で所得代替率50%を達成し“とりあえず”一安心です。
ただ、年金積立金の運用が悪化し、経済前提条件が暗転すれば年金財政も再び不安定になります。
【モデル世帯の見直しに舵を切る?】
かねて批判があった「モデル世帯の見直し」にも言及しています。財政検証の基準として「夫婦のうち一方が働き40年間厚生年金に加入する世帯」を「モデル世帯」と設定し「モデル世帯(夫と妻2人)の基礎年金+厚生年金額」を「現役世代の平均手取り収入額」と比較し評価します。
このモデル世帯、1965年からずっと変わりません。当時、総務省家計調査で標準的とされた世帯ですが、世帯構成が変化する中50年以上そのままです。
2020年のモデル世帯数(専業主婦世帯)は571万世帯、全世帯の10%に留まります。1980年当時、モデル世帯は1100万世帯(全世帯の31%)を占めましたが今は少数派です。世帯構成比でも、令和2年は一人世帯が全体の40%、「モデル世帯」は容易に変えられませんが現実離れしています。
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今回厚労省年金部会で、毎年の年金受給見込額を保険料の支払パターン別に提示することになりました。①男性会社員②男性自営業③女性会社員④女性自営業⑤女性専業主婦、の5パターンです。「モデル世帯」見直しとはなりませんでしたが、現実に一歩近づきました。
【財政安定化に向けた社会保険適用拡大案】
今回の財政検証では「過去30年投影ケース」から更に悪化した「ゼロ成長ケース」を示しています。本ケースでは、国民年金積立金は2059年にゼロになり、その後所得代替率は「33~37%」になります。「ゼロ成長ケースに備えた年金財政拡充案」として財政検証に書かれた「パート社員の社会保険適用拡大からの会社規模要件と収入要件撤廃(106万の壁撤廃)」が政策課題として提案されています。
この「106万の壁撤廃」年金財政拡充に繋がらないと私は思っています。詳しくは前回noteをご覧頂けると幸いです。
社会保険料「106万の壁」から「週20時間労働の壁」へ|副業社労士まさゆき
ではまた次回