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有給は景気対策として拡大してきた

こんちは!副業社労士まさゆきです。
今回は有給休暇(以下有給)です。「労働しなくても給与を貰える」お得な制度ですが日本の取得率は52%(2019年)と低い状況です。有給取得が景気対策になる事は歴史が証明しています。政府は有給取得率100%促進にもっと注力すべきです。

《有給の始まり》
1851年、イギリスで工場法が成立しました。産業革命後の過酷な労働環境を是正する法律で「土曜は半日の労働で1日分の給与を払う」と規定されました。有給の始まりです。

《労働者に対する有給の拡大》
19世紀、欧米のバカンス(長期有給休暇)はフランスやドイツ、イギリス等の貴族や富裕層のものでした。バカンスの語源は「金持ちが何もしないこと」です。

労働者の有給の始まりは1873年、ドイツで上級公務員に年6週間の有給を付与する制度が導入されました。
イギリスでは1871年、休日が年4日だけの銀行員に,国家が年4回の連休を贈る「銀行休日法」が成立、「バンクホリデー」と呼ばれました。19世紀末には下層中産階級(ホワイトカラーのサラリーマン)に1週間の有給が認められましたが、工場労働者には認めらませんでした。

《第一次世界大戦・世界恐慌と労働者に対する有給》
第一次世界大戦で兵器の大量生産に貢献した工場労働者の地位は向上、1日8時間労働が実現し年1週間の有給の権利を得ました。

1929年の世界恐慌の景気対策として有給は拡大します。
1933年、ナチスドイツは余暇のための組織「喜びを通しての力」を作ります。労働者に余暇という飴を与え、低賃金でも労働意欲を維持する目的でした。ドイツの国民車「フォルクスワーゲン」はこの時普及しました。
アメリカではルーズベルト大統領がニューディール政策を進める中、フランシス・パーキンス労働長官は、労働者と使用者の労働契約交渉に有給付与を加えるよう働きかけました。

アメリカでは現在でも法定有給はありません。使用者と労働者の契約に国が必要以上に関わる事は契約自由の原則に反するとの考えからです。アメリカの有給は現在2週間の付与が多いようです。

1936年、年6日間の有給付与を定めたILO第52号条約が締結されます。賛成のフランスは2週間の有給休暇を法制化します。反対のイギリスも遅れて法制化しました。

《有給は景気対策として拡大してきた》
1871年イギリスで成立した「バンクホリデー」は列車による行楽を大流行させました。

世界恐慌の景気対策として有給は拡大します。ドイツの組織「喜びを通しての力」は景気回復に大きく寄与しました。アメリカでも有給付与の働きかけは景気回復を助けます。フランスでは1936年8月「年次休刊国民切符(鉄道割引切符)」が発売され、1937年にはバカンスに出掛ける労働者の数は3倍になりました。

上記の通り「有給拡大⇒旅行に出掛ける人が増える⇒消費が増加し景気拡大」サイクルに経済効果があると証明されています。

《日本の休日+有給の国際比較》
日本の有給は法律で年20日付与されていますが、2019年の労働者取得日数は10日(取得率52%)です。2019年4月から企業に「労働者に有給を5日間取得させる義務」が課されてなおこの低さ、各国の状況はどうでしょうか。日本は祝祭日が多い国です。「有給でも祝祭日でも休みなら経済効果は変わらない」前提で「祝祭日+有給(取得実績)」を比較してみました。

日本は法定有給付与日数20日を100%取得すれば「年間祝祭日+有給取得日数」は35日となりドイツ・フランスと同レベルです。景気対策として政府は有給100%取得促進を進めるべき。その上で更に経済効果を高めるため、下記を提案します。

①    厚労省は有給を「心身の疲労を回復する休暇」と定義しますが、「疲労回復」では遊びに行きづらい。「リフレッシュ」「モチベーション回復」と前向きな目的に変えませんか?
②    「有給でも祝祭日でも休みなら経済効果は変わらない」と前述しましたが、「全国民が休む祝祭日」より「個人がバラバラに取得する有給」の方が経済効果は高い。大型連休時、行楽地は人手不足で観光客の受入ができない状況です。バラバラに休む方が行楽地の受入余力が出来、経済効果は高い。祝祭日を減らして有給を増やす事を提案します
③    ②と同じ理由で、一斉年休に工夫が必要です。「5日間の有給取得義務」を果たす為、GW中の平日(今年なら4/30や5/2)、お盆、年末年始に企業は一斉年休を指定します。皆同じ休日となるため、バラバラに休むより経済効果が低くなる。GW、お盆、年末年始の一斉年休付与を禁止しては如何でしょうか?

ではまた次回

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