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フリーランスと労働者の違いを新法が問う
こんちは!副業社労士まさゆきです
フリーランス新法が2024年11月1日施行されました。フリーランスは弱い立場で安い報酬・業務途中の故無き不利益変更等厳しい環境に置かれています(2024年公正取引委員会調査「十分な協議なく一方的に報酬を決められた」が67.1%でした)。
中小事業者を保護する法律として下請法がありますが発注者の資本金が1千万円以下の場合適用対象外です。「フリーランスが個人事業者」ならば労働法(労働基準法、最低賃金法等)対象外。フリーランス新法は下請法と労働法の隙間を埋める法律です。ただ、フリーランスの中には実質労働者と言える働き方があります。
【フリーランス新法とは】
フリーランス新法は、発注者の資本金に関わらず受注する個人事業者を保護します。「仕事内容・報酬の書面・メールによる明示」「報酬の60日以内支払義務」「報酬の不当な減額や買いたたき禁止」の経済的保護と、「育児・介護への配慮」「ハラスメント相談体制整備」の労働環境保護を発注者に義務付けます。
フリーランス新法はギグワーカーも対象です。「1か月以内のスポット受注」では発注者の義務は限定的ですが、フードデリバリー等6か月以上継続受注する仕事では全義務を発注者が負います。詳細は添付リンク参照。
【労働法が適用されるべきフリーランスがいる】
フリーランスの中には「働き方が実質労働者でフリーランス新法ではなく労働法を適用すべき」仕事があります。上リンクでも「働き方の実態として労働者である場合は、この法律は適用されず、労働基準法等の労働関係法令が適用されます」と記載されています。
労働法の保護はフリーランス新法より強い。労働者には労働組合を結成し団体交渉する権利がありますが、個人事業主にも、事業協同組合を結成し、発注者と団体交渉する権利が「中小企業等協同組合法」で認められています。ただ、交渉が不調の時取れる手段が違う。労働組合は都道府県労働委員会に救済命令を請求できます(不当労働行為救済制度)。事業協同組合に出来るのは中小企業庁へのあっせん請求、労働者か否かで法の保護に大きな差があります。
【労働者と認定する労働者性判断基準は】
労働者と認定される判断基準は?厚生労働省労働基準局の労働者性判断基準は以下の通り。
1)指揮監督下の労働か
「仕事の依頼を断われるか」「仕事内容・実施方法に具体的指示があるか」「勤務時間・場所の指示があるか」「発注者の了解なく仕事を他者に替わる自由はあるか」等が問われます
2)報酬の労務対償性があるか
「作業時間を基準として報酬を決定しているか」「作業時間単価を決めているか」等が問われます
3)事業者性・専属性
発注者の事業に実質組込まれている、兼業が出来ない状況なら労働者性は強いと見られます。他者に比べ報酬が著しく高ければ、労働者性は弱いと見られます。
【ウーバーイーツの配達員は労働者】
ウーバーイーツ配達員を労働者と認めた令和2年東京都労働委員会判断を見ます。
「指揮監督下の労働か」ウーバー社が「配達パートナーガイド」に禁止行為を定める等、仕事の内容や実施方法を具体的に指示し労働者性が強いと認定しています。
「報酬の労務対償性」配送員の報酬は「件数配送距離で成る基本料金」「インセンティブ」で規定され労働者性が強いとしました。
「事業者性・専属性」ウーバー社の事業に配送員は組込まれ労働者性が強いと認定しています。
これらを総合的に判断、東京都労働委員会はウーバーイーツ配送員を労働者と認定しました。
東京都労委令和2年(不)第24号 Uber Japan不当労働行為審査事件(概要情報)
最高裁も「ウーバー社が報酬、契約内容、サービスの提供内容、顧客とのコミュニケーション方法まで管理しており配送員が事業者と言えない」と認定、ウーバー社は配送員に最低賃金法に則った報酬を支払うことになりました。
【労働性判断基準は見直されるべき】
フリーランス新法施行を契機に、労働者性判断基準の議論が始まります。
「指揮監督下の労働か」労働者が出社し使用者の監視下で仕事した時代の風習、テレワークが定着した今実態と乖離しています。
「時間を基準とした報酬の決定」昨今の「時間での労務管理は生産性向上の妨げ」論と相反します。
議論は「労働を時間で測るのは正しいか」労働の本質を問います。
ではまた次回