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社会保険料「106万の壁」から「週20時間労働の壁」へ

こんちは!副業社労士まさゆきです。

報道によると、厚労省は社会保険適用4要件から「月額賃金88,000円以上」を撤廃する調整に入ったとのこと。また、社会保険適用拡大の会社規模要件を2025年?に撤廃する方針です。
改正が実現すれば、社会保険料支払の「106万の壁」が無くなり新たに「週20時間労働の壁」が誕生することになります。この影響を考えてみましょう。

【「週20時間労働の壁」とは?】
扶養家族認定を受ければ社会保険料は免除されます。免除の収入要件(扶養認定は収入要件だけOKではありませんが、主たる要件として)は年収130万円、いわゆる「130万の壁」ですが、例外として、次の人たちは社会保険加入が必要です。
①    週労働時間が20時間以上
②    月額賃金が88,000円以上(年収106万円)
③    雇用期間が2ヶ月を超える見込み
④    昼間の学生でない
この社会保険加入4要件(以下「4要件」と言います。)全てに該当する人は社会保険に加入します。
これを世間では「106万の壁」と言います。

今回の改正案は、4要件の内②「106万の壁」を撤廃する案です。国は「社会保険に加入すれば年金が増えます。『106万の壁』など気にせず、もっと働いて保険料も払って老後の不安を緩和して下さい。」と思っています。
もう一つの改正「4要件適用対象の会社規模要件の撤廃」。従業員50人以下の中小企業は対象外でしたが、老後の安定に会社規模は関係ないので社会保険に加入してください、ということです。

ただ、国のこの思惑、通用しないのでは…この方々は「社会保険料が高い(賃金の15%)から扶養家族の範囲で働きます。年金はNISAで老後に備えるのでご心配なく、要は週20時間以内で働けばいいのですね。労働時間を短縮して社会保険料支払対象外になります」と考えます。人手不足の下、この動きは止められません。「週20時間労働の壁」の誕生です。

では、「週20時間労働の壁」で労働環境はどう変化するでしょうか?

【従業員50人以下の中小企業の経営は苦しくなる】
従業員50人以下の会社に勤務し4要件全てに該当する人は60万人です(令和3年経済財政白書)。
会社規模要件撤廃で、新たに社会保険料支払対象となる60万人の会社負担(賃金の15%相当)は、中小企業にとって軽くありません。
また、この方々が週労働時間を20時間未満に抑えれば、会社は労働力補填のため追加の人件費が必要です。社会保険料分賃金を増やして同じ労働時間働いてもらう?キャリアアップ助成金を活用する方法もありますが助成金は3年です。

【収入要件廃止は人手不足を増長するか?】
令和3年経済財政白書によると「週20~30時間働き月額賃金88,000円未満」の人は200万人、収入要件が撤廃されれば社会保険加入が必要です。この200万人も労働時間を抑えるでしょうか?

この200万人、令和6年も存在するか疑問です。令和3年の最低賃金として令和2年全国平均902円で計算すると88,000円÷902円=週24時間未満、週20~24時間働く人は200万人かもしれません。
この計算式で令和6年の最低賃金1054円を用い計算します。88,000円÷1054円=週20.8時間、週20時間~20.8時間働く人は200万人いません。

収入要件廃止は、大都市では労働力供給増に働きます。例えば東京都の最低賃金1163円、収入要件があれば88,000円÷1163円=週19時間以上働けません。収入要件廃止で週20時間まで働けるようになります。

【学生バイト需要増の光と懸念】
「昼間の学生」は社会保険の対象外で今後学生バイトの需要は増えます。「時給を上げても社会保険料より安い」時給も上がります。
懸念は学生バイトの労働環境、労働基準法を知らなければ自分を守れません。労働条件の書面通知、最低賃金、労働時間、時間外深夜手当、休憩時間、有休…学生が知識を得る機会が少ない点を危惧します。

【4要件と「130万の壁」の隙間を狙う人たち】
改正案通りとなっても、扶養家族認定の「130万の壁」内で働き、かつ、社会保険に加入しない働き方を選ぶ方々がいます。

1つ目は「2ヶ月以内のパートを繰返す」働き方です。4要件「雇用期間が2ヶ月を超え」なければ社会保険加入は不要です。2ヶ月間フルタイムで働き40万稼ぎ、次の1ヶ月は休み。その後別会社でまた2ヶ月フルタイム…これを繰返し年収130万円内で働きます。

2つ目は「複数の会社で働く」どの会社でも4要件全てを満たさず働けば社会保険加入は不要です。

注意するのは「130万の壁」対象となる収入の範囲です。「106万の壁」では基本賃金と諸手当だけですが、「130万の壁」では①通勤手当②残業代③賞与④他の会社からの賃金も対象となります。

あくまで私見です。ではまた次回。


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