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雇用の流動化促進を考える;対策は退職金控除改定ではなく女性登用促進

こんちは!副業社労士まさゆきです
政府の骨太方針によると、同じ会社に長く勤めると退職金所得控除が増える退職金控除制度を改定するそうです。退職金は勤務年数×40万円が所得控除されますが、20年を超えた年数から年70万円に控除額が増えます。具体例を挙げると下記のようになります。

《退職金2500万円を①同じ会社で25年勤務した場合と、②2つの会社で計25年勤務(15年と10年)した場合の退職金(今回住民税は計算しません)》
①    課税対象の所得額;{(2500万-(40万×20年+70万×5年)}÷2=675万円
  所得税額;675万×税率20%=135万円
②    課税対象の所得額;(2500万-40万×25年)÷2=750万円
  所得税額;750万×税率23%=172.5万円
⇒①と②では税率も変わるため、②は37.5万円税金が増えます

つまり、勤続年数が長い方が有利となり、転職意欲を削ぐということです。
「関係ないのでは」と思います。そもそも退職金所得控除制度を知っている若い人がいますか?退職金の額すら知らない人がほとんどでは?周りに聞きましたが、皆退職金控除など知りません。意味があるとは思いません

「雇用流動化が経済構造の変化を促し経済成長に繋がる」という考え方が万能とは思いませんが、流動化を阻害する要因には、昇格に在籍年数と年齢を考慮する人事制度の影響が大きいと思います。

取引先の方と会っていると、時折「何故こんなに優秀な人が課長じゃないの?」と思う時があります。理由は①転職組でその会社の在社年数が短い②年齢が課長になるにまだ若い、の2つが多い。疑問に思います。

人事制度に職務グレード制(以下「職務G制」)を採用している会社が多いようです。課長職は「課長G1」「課長G2」等複数の職務Gに細分されます。職務Gは昇格ポイントを積み上げ昇格します。1年で取得できるポイントには上限があり、職務Gを上げるには数年かかるため職務Gアップには一定の年数が必要です。ポイントが基準に達してから昇格審査(試験)があるケースがほとんどなので更に時間がかかります。つまり「一定年数在籍しないと昇格できない」のです。転職意欲を阻害する要因の一つです。

年齢が昇格の障害になるケースもまだ多く見られます。正式な制度ではありませんが、同じ能力を持った2人が昇格を争う時、年齢が若い方が不利です。「彼はまだ若い」よく判らない理由で決定します(最近はやりの「おやじネットワーク(OBN)」が登場します)。転職者を中途採用する時も「彼は優秀そうだが40歳なので課長で採用しよう」となります。昇格に相応しい実力を発揮しても、「職務Gアップに数年かかる」障害が立ちはだかります。転職意欲を阻害するもう一つの理由です。

在籍年数が長ければ組織の流儀に慣れているので組織運営がスムーズ、判らないではないです。年齢が若い課長は年上の部下を使いづらい、あります。でも多様性(ダイバーシティ)を重視する昨今、在籍年数や年齢を考慮する人事制度は多様性を阻害しませんか?

この風習を打破するには?「ドラスティックな女性登用の促進施策」を提案します。
昨今指摘される「女性登用阻害の要因に子育て休職がある」点ですが、「職務Gアップポイント取得に数年かかる」と休職期間中昇格ポイントを獲得できず、女性昇格の障害となります。これを無くす必要があります。では具体的にどうするか

現在政府が打ち出している「2030年までに女性役員30%」の方針を「2030年までに女性部長職25%のクウォーター制」にすることを提案します。クウォーター制はスウェーデンなどで「女性議員を一定割合にしなければいけない」政治制度に活用され女性活躍に寄与しています。
役員は社外取締役起用で達成出来ますが、女性部長職25%はそうはいきません。在籍年数・適切な年齢という風習を続けることは無理でしょう。優秀な女性は奪い合いになり、男女の賃金格差は解消に向かいます。
女性部長25%以上の基準を達成した企業に法人税率軽減して後押ししては如何でしょう。

雇用の流動化を達成するにはここまで踏み込まなければ難しいと思います。それが、日本経済の活性化に繋がるのであれば、一考に値するのでは…

ではまた次回

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