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叙述トリックのすゝめ

こんばんは。今日は、ミステリにおける「叙述」について語りたいと思います。

叙述トリックって?

そもそも読みづらい字をしてますよね。「じょじゅつ」と読むのですが、そもそもどんな意味なんでしょうか。Googleでちょっと調べてみると、次のように書いてありました。

[名](スル)物事について順を追って述べること。また、その述べたもの。「事件をありのままに—する」
(叙述(じょじゅつ)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書) より

分かりやすく言えば、何かを順番に説明する、ということです。「記述」と似たような意味合いで使えるかもしれません。ではこれがどうミステリと繋がるのでしょうか。それは、「文章自体にひっかけがある」というのが最もシンプルな説明です。
詳しく説明しましょう。

叙述トリックは「著者もグル」である

世間一般のイメージがどうかはわかりませんが、皆さんが思い浮かべるミステリってこんな感じではないでしょうか。

ある屋敷の部屋でその屋敷の主が殺されているのが発見された。その部屋は鍵が閉まっていて、窓も内側から鍵がかけられていた。机には書きかけの手紙があったが、何かが書かれた部分は破り捨てられていた…。

こういうミステリだと、著者は「読者側」に立ってくれることが多いんです。つまり、現場の状況を細かく説明したり、それぞれの人物の関係や性格を描写したりと、なるべく公平に読者に情報、つまりヒントを与えてくれます。当然、読んでいて結末が「そんなんありかよ」とならないよう、著者はなるべく多くの情報をわたしたちにくれるということです。

でも叙述トリックでは違います。その、私たちに与えてくれる情報にワナが仕掛けてあるのです。分かりやすいのは一人称でしょうか。「私」とだけ書かれていても、それが男性か女性かを判断するのは難しいですよね。口調がちょっと男性ぽくても「実は女性でした」というふうに文章を使って私たちをだましに来るのが叙述トリックなんです。

どこがおもしろいのか?

とにかく騙されます。ミステリを読んでいると「ああ、これが伏線なのかな」なんてホームズ気取りの推理をしてしまいますが、叙述トリックを見破るのは相当難しいです。とにかく叙述というのは私たちの先入観を刺激してきます。例えば男性か女性かが明言されていなくても、「カフェでランチを楽しんだ」「ウィンドウショッピングを楽しんだ」なんて文章があったら、「女性なのかな」と無意識のうちに思ってしまうのが人間です。そういった人間の先入観を使ったものだからこそ、気づいた時の驚きはとてつもないですね。

拍子抜けしてしまう場合も

でも人によっては少しがっかりすることも。「え、そんなのありかよ」と思っても、「だってそうだとは一言も書いてないでしょ?」と著者は私たちを煽り倒してきます。頑張って真面目に考察したのに、ふたをあけてみればがっかり、なんてこともあるのでご注意です。

これからの叙述ミステリ

これは叙述トリックそのものとはあまり関係がないんですが、私が最近思っていることを話そうと思います。とにかく最近のミステリは映像化を意識していると思っちゃうんですよね。AmazonとかNetflixがより一般的になってきたこともあって、人気作品は映像化する傾向がより強まっているんじゃないかなと思ってます。
そう言った時に映像化できないのがこの叙述トリックなんです。例えば先ほどの男性か女性か分からなくするという例でいえば映像化したら見た目ですぐわかっちゃいますし(キャスト見たらばれちゃいますよね)、映像化の時代に叙述ミステリが廃れないことを祈るばかりです。

おすすめの作品

叙述ミステリに限らずミステリ界屈指の名作です。

なんと先ほどの話に関わらず映像化した叙述ミステリです。気になる方は映像化された作品もどうぞ。

「このミス」大賞を受賞した名作です。頭を空っぽにして読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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