山を歩きながら考えたこと(須磨アルプス編②)
前回に引き続き、登山を通じて私たちが考えたことを書いていこうと思う。
ということで、須磨アルプス登山の続きです。
前回の記事はこちらから。↓↓↓
前回は米相場の値段を各地に旗を振って伝えていたという「旗振山」まで行った。今回は鉄拐山を経て、いよいよメインの「名勝 馬の背」に向かう。
鉄拐山
旗振山を抜けて、次は鉄拐山に向かう。全貌を見てわかる通り、鉄拐山の方が標高が下がるため、道はなだらかに降ったり、たまに登ってみたり。つい走り出してしまいたくなる、そんな道が続く。
途中、木々が開けたりしている場所もあり、たまに兵庫の街並みが垣間見える。さすが都会と言ったもので、建物が平地を埋め尽くし、緑が見えるのは丘か、山か、公園くらいなもの。自然豊かな秋田に長年住んでいた私たちからすれば、それは全くの別世界である。
自然とともに生きるとは
私たちは、割と緑が当たり前のように周りにある環境でこれまで生きてきた。僕に関して言えば生まれも育ちも秋田で、目をやれば常にそこには田んぼの風景があったし、パートナーも7年ほど秋田にいたので、山の香りなりそういうものにたくさん触れてきた。
大阪という都会に来ることは、そのような自然としばしのお別れであることは分かっていたが、やはり寂しいものがある。そして写真のような都市部独特の風景を見た時に、その寂しさというものがどこか大きくなったようにも思える。
小高い丘や山々を縫うようにしてまで、住宅や建物が張り巡らされた街。
きっと米相場を知らせる旗を振っていた時代には、もっと違う風景がこの山からも見えていたのかなと、ついつい考えてしまう。
なぜ自然を守るべきか。
それは、自然というものが人間の身体に似ている部分があるからだと思う。
人間の身体は、一度傷をつけてしまえば、それが完全に戻るまでにものすごいエネルギーと時間がかかる。もしくは、もう元には戻らない。
だから自らの手で、自らの命に終止符を打つようなことはしてはならないと、僕は考える。一度終止符を打ってしまったら、巻き戻しなんて言葉は効かない。
自然との関わりもどこか自分自身との関わり方と似ているように思う。一度壊した自然を人一人の力で、元あった形には戻せない。自然を傷つける行為というのは、そういうことである。巻き戻しが効かない。
だから、あの写真の風景を見てつい考えてしまうのだ。
景観としてのみならず、機能としての側面をみてもなお、私たち人間には自然を大切にする義務があると思う。
一方で、わたしたちは「自然ととともに生きる」ことについて、深く考えられているだろうか。
これからを担っていく世代として議論を重ねていきたいが、都会で生まれ育った同世代はどんなふうに考えるだろうか。
そのような意味でも、僕はなんとなく、学ぶ場は地方や田舎が有利なのではないかと感じている。(これは、あくまでも直感だが…)
防災を考える山歩き
山の上から街を見下ろすと、その土地の地形がよく見える。
海からどのくらい離れていて、周りにどんな建物や施設があって、街がどのように広がっているか。
そうすると、自然災害が発生した時の対策を勝手に考えてしまう。
まるでハザードアップを航空写真で見ているかのような気分になって、地震が来たら、大雨が来たら、土砂災害が起きたら、浸水が起きたら、そんな想像が頭をめぐる。
このような防災・対策は市町村や都道府県が担っているが、お殿様が考えていた時代もあったのだろうか。お城を小高いところに建てて縦に長く建てるのも、街を俯瞰するためというのが理由の一つだろう。高いところから街全体を眺めて、これまでの街の歴史を想い、これからの街の未来を考える。
だから「防災」という街づくりに欠かせないものを考える時にも、登山をしながら考えることはきっと役に立つと思う。歩きながら思いつくことはいくらでもあるし、感覚が研ぎ澄まされる分、頭が冴えて、新しい考えが思い浮かんだりもする。さらに高いところから街を俯瞰すれば、これから街をどのようにしていけばいいか、清々しく、そして堂々と考えられる。
山歩きにはそんな効果があるように思われる。
だから防災の他にも、何か考えたいことや、思い悩んだことがあれば、きっと山登りは何かヒントをくれるだろう。
となると、日本について考えるなら、やはり富士山を登るべきだろうか。
高倉台〜栂尾山〜横尾山
さて、自然や防災に思いを馳せながら、登山ルートはいよいよ終盤に。
鉄拐山の頂上を抜けると、一度市街地(高倉台)に出る。ここが初心者でも安心できるポイントの一つで、トイレを済ませたい人、何か食べ物などを買いたい人はスーパーがあるので寄ると良いだろう。
市街地を抜けると、いよいよ『名勝 馬の背』を目掛けて最後の上りに。人工のコンクリート急勾配を登り切ってしまえば、メインの崖地帯までもう少し。ただ、この階段がとにかくきつい。ひたすらにまっすぐ伸びていることもあって、とてつもなく長い道のりに感じる。何度休憩をして息を整えたことか… 周りには太陽を遮るものは一切ないので、夏場は特に要注意である。
コンクリートの階段を上り切ってちょっと行くと、今度は栂尾山山頂というところに出る。展望台があり、ここからの眺めもまた良いものがある。先程とは反対側の、つまりはこれまで登ってきた側を一望できる。
横尾山山頂まで少し上りを行けば、次第に『名勝 馬の背』らしい岩場が姿を見せ始める。途中、ロープのようなものが置かれていたりと、滑ると危険な箇所がいくつかあり、集中力が求められる。今までとは異なる雰囲気が感じられるコースに、胸が一気に高まる。
この辺は岩山に魅せられるせいか、時間感覚を忘れて楽しんでしまう。
いろんな登り方を試してみて、お気に入りの風景を見つけたい。そして、見つけて欲しい。
東山〜板宿駅(下山)
メインである『名勝 馬の背』を抜けると、いよいよ下山。
東山を目指して、あとは市街地に出て最寄駅である板宿駅に向かう。
板宿駅側からの登山客も多いようで、東山に差し掛かる頃になると多くの人と出会った。東山では休憩ができるベンチもあり、カップラーメンを食べたりしている人もいた。
最後のパワーチャージをして、板宿駅の方向をしっかり確認してからこの東山をあとにしよう。実は東山を下山するルートもいくつかあるようで、わたしたちは間違えて、板宿駅から一駅離れた妙法寺駅というところにたどり着いてしまったこともある。ルート的に帰られなくはないが、基本中の基本である方向確認を怠らないようにしたい。
まとめ
最後は間違って妙法寺駅に着いてしまったが、私たちは本格的な近畿登山は初めてで、超低山ルートとはいえヘトヘトになってしまった。
7:30頃から登り始めて、下山してみると時刻は11:00に。
およそ3時間半(休憩込)歩いて、歩いた距離は約7km。最高峰は横尾山山頂の312.1m。
さほど高さもなく、初心者が山に慣れるにはちょうど良いコースに感じた。
途中市街地に出るタイミングもあるので、そこも安心ポイント。万が一体調が悪くなっても対応が容易にできる点がいい。『名勝 馬の背』周辺の岩場地帯が少し危ないかもしれないが、十分注意して歩けばなんてことはない。
むしろ普段体験できない地形に、きっと胸がワクワクするだろう。
最後に:登山靴を買おう!
今回、私たちは登山初心者丸出しで、靴も家にあるランニングシューズや登山靴もどきで挑んでしまった。まあこのコースならそれらの靴でも登れないことはないのだが、体力の消費や登りやすさ、怪我のリスク等を考慮すれば、登山靴があるに越したことはない。もし、登山前に時間とお金の余裕があれば、近くのショップで自分の足にあった登山靴を買っておくのがおすすめだ。
ちなみに私たちは、この須磨アルプスを下山後、mont-bellショップで登山靴を手に入れた。出発した時点では下山後購入するだなんて思っていなかったが、これからたくさん登山をすることも考えると良い選択だった。確かに少し値は張るが、登山中に自分の命を守ってくれるカナメになることを考えると、決して高いお買い物ではないと思う。
登山靴を選ぶ時は、ぜひ店員さんにいろいろな質問をして欲しい。山登りに詳しい人が多いので、とても実用的なアドバイスや専門的な視点に立った話をしてくれる。確実に自分に合った靴を選べるのはもちろんのこと、そのほかにも登山にまつわる様々な知識が得られるので、ぜひ声をかけてみよう。
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そんなこんなで、須磨アルプス編はここまで。
須磨アルプス登山をする方の参考になれば幸いだ。
そしていくらからでも登山を始めたいと思っている人のあと押しになれば、それはそれで嬉しい限り。
また登山した記録から、山登りで考えたことまで、色々と書いていこうと思う。
それでは、また。
2021.08.07
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