元彼の呪縛で10年間イラストレーターを使えなかった話。
今日したいのは、言いたいことを言ってくれなかった元カレを密かに恨んでいる・・・ではなく、「やりたいと思ったことはやってみよう。続けるかどうかはそれから考えればOK」という話。
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2011年ごろだったと思う。
大学生だったわたしは、当時の元カレと本屋にいた。小説もビジネス書も専門書も、店内をくまなく回ってあれやこれやと話をするのが好きだった。
あるとき、わたしはイラレの素材集を手にした。
当時は素材をダウンロードするという概念がまだなく、本にCD-ROMがついたパターン集がたくさんあった。「女性向けデザインの素材集」みたいなタイトルで、ぱらぱらめくるとかわいいチラシや名刺なんかの作例がたくさん。
「これ、かわいいね」
思わず声が出た。
イラストレーターってよくわかんないけど、マスターしたらわたしもこんな風にかわいいものが作れるようになるのかな。こんなものを作る仕事もあるんだろうな。選択肢が広がりそう。楽しそう。
そんなことを考えていた矢先に帰ってきた返事は、こうだった。
「お前、イラレはむずいぞ」
元カレはこれ以外には何も言っていない。
でもわたしのなかではこんな風に再生された。
「お前になんかイラレは無理。本を買うなんてお金を捨てるようなもん。時間の無駄。仕事にするなんて無謀。寝言は寝て言え」
わたしは落胆した。
なんども言うが、元カレが言ったのは「イラレはむずいぞ」の一言だけである。自分でもちょっと無理かな?と感じていたのだと思う。だから勝手に元彼の言葉を悪い方に増幅して、勝手に諦めた。
わたしは手に持っていた本をそっと棚に戻した。
そうして誕生したのが、イラレ食わず嫌いなわたしである。
何度もイラレを始める機会はあった。
学生時代、広告のアルバイトをはじめたとき。
副業でwebデザインの仕事をするという選択肢があると知ったとき。
ブログをはじめてサムネイルを作ることになったとき。
でもずっと避けてきた。
わたしにはイラレは無理だから。難しいから。
それなのに、イラレを使うことになった。
イラレはむずいぞ事件から、実に10年が経過した時である。
プログラミングスクールのカリキュラムにイラレとフォトショが入っていたのだ。
あんなに無理って思っていたのに・・・こんなところで出会うとは・・・しぶしぶインストールした。
どうせ無理だしサクッと終わらせて次に行こう。絶対今月しか使わないから月額プランでいいや。
半分投げやりな気持ちでチュートリアルを見る。
自分でもやってみる。簡単なイラストを描いて、ためしにチラシを模写して・・・
そうしてイラレ開始3日でできたのがこれだ。
ケーキのイラストはひろってきた素材を使ったものの、簡単な背景や文字入れなんかはすぐにできた。
わたしは腰を抜かしてしまった。
「イラレはむずいぞ」とは、いったいなんだったのだろう。
この10年間に大幅アップデートがあって、ものすごく使いやすくなったのか?
プレミアプロを使っていたから使いやすく感じたのか?
確かにそれもある。
でも一番大きな原因は、イラレを難しいと決めつけていたわたしなのだ。
元カレの言うことなんて聞き流しておけばよかった。
あの本屋で多少強引にでも、本を買っちゃえばよかった。
そのあとも、「イラレなんて無理」と思った瞬間、全部。
自分には無理と決めるのは、やってみたあとでいいのだ。
やる前から決めつけることほどもったいないことはない。
正直めちゃくちゃ後悔しているけど、過去は変えられないので仕方ないしこれからの人生でイラレを使い倒せば問題ないかなと思う。
迷ったらやってみて。
やってみてから無理って言って。
それから、誰かが「これいいな」って言ってたら、「いいんじゃない?やってみたら?」って返してほしい。そっと背中を押すことになるかもしれないから。