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アホの方のメガネのケイ君

私も眼鏡をしているが、
眼鏡をしている子供たちも多いわけで。

当時小学5年生だったケイ君が初めて店に来た時、
常連小学生たちが彼のことを紹介してくれた。
「おっちゃん、こっちの子がかしこ(賢い)の方のメガネで、
こっちの子がアホの方のメガネね」
「アホとかしこがおるんか?」
「そやで」
すると、ケイ君が、
「アホのメガネで〜す!」
と挨拶してくれた。

何日か経って、
ケイ君は毎週末、一人で店に来るようになった。

ケイ君は家庭の事情(離婚)で引っ越して来てまだ数ヶ月だと言う。
すでに何回か引っ越しを経験しているようだ。

まだ数ヶ月で「アホ」と言われるのはどうなんだろうと思い聞いてみた。
「なんでアホって言われてるん?」
「自分で言うてん」
「なんで自分で言うねん?」
「その方が友だちできるやろ」
「なるほどなあ」
「アホでもアホ、アホ言うて話しかけられる方がええねん」
「ケイ君、賢いな!」

ケイ君はサメが好きで、
空想の魚の絵を描いて持って来てくれた。


「ええもんやったら買い取る(かき氷無料券と交換)で!」
と言うと、何回か持って来た。

ある日、
「おっちゃん、お母さんが再婚するねん」
「そうか」
「そやけど、結婚したら千葉県に引っ越さなあかんねん」
「じゃあ、また引っ越しか?」
「そやなあ」

ケイ君には妹いるのだが、
妹が1歳の時に親が離婚し、
ケイ君は母に、妹は父にと別れ離れになっている。
それから会っていないそうだ。
親に振り回されるのは可哀想な気もする。

「おっちゃん、再婚相手に会ってきた」
「どうやった?」
「長髪やったわ」
「ええ人やったか?」
「うん」
「そっか。良かったな。いつ引っ越すんや?」
「卒業式の次の日」

卒業式は3ヶ月後だった。

再婚のご褒美?なのかどうかはわからないが、
ケイ君はスマホを与えられた。

「おっちゃん、昨日スマホもらってん!」
「おっ! すごいやん!」
「LINE交換して!」
「ええよ」

ケイ君は今年の春に千葉県へ引っ越した。
それでもたまにLINEをくれる。
先日は、柔道部で県大会に出るとLINEをくれた。

こんな子どもたちが増えたら、
世界から戦争なんて無くなるのになあって思った。

(らおばん)

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古本喫茶店主らおばん
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