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理系大学生がガチめに中国語を勉強してみたら、想像以上におまけが沢山付いてきた件。

みなさんどうも、Keiです。
今回は、これまで6年程中国語を勉強してきた私が、個人的に感じている中国語を学ぶメリット、またその過程で大きく広がった世界について、トリビア的話も交えつつ記したいと思います。


私の中国語学習の歩み

本題に入る前に、私の中国語学習歴を軽く記しておく。

二外の授業で学習開始

大学1年の春、第二外国語の授業で中国語学習を開始した。
噂に聞く「中国語は発音が鬼畜」は本当で、最初の半年間はほぼ発音練習で終わったが、今まで知らなかった「声調」「無気音⇔有気音」「そり舌音」といった概念を知り、普段あまり使わない筋肉をフル活用している気がして楽しかった。
(私が中国や中国語に興味をもったきっかけは前回の記事で詳述しているので、こちらをご参照いただきたい)

台湾短期留学(3週間)

大学1年の春休み、大学のプログラムで台湾にて3週間、中国語語学留学した。(こちらも前回の記事参照)

HSK4→5→6級取得

台湾留学後、自分の実力測定の為にHSK (汉语水平考试 Hànyǚ Shuǐpíng Kǎoshì) 4級を受験した。この試験は読解(阅读)・聞き取り(听力)・作文(书写)の3項目からなり、総合点6割以上で合格となる。
よく中国語検定と比較されるが、HSKは問題文も全て中国語で出題され且つより実用的な内容となっており、国際的な中国語能力の証明として世界中で使えるのでお勧めである。中国語検定は1級が最上位だが、HSKは1級から始まり数字が大きくなるにつれて難しくなる。長らく6級が最上級であったが、最近改訂が行われ現在は9級までとなっている。

HSK4級に無事合格した後、大学の留学生チューター活動やYOUTUBE、ラジオ("中国广播电台"というスマホアプリを使用)で中国語の自学を続け、HSK5級→HSK6級と徐々にステップアップしていった。(HSK対策はask出版の参考書を主に使用)

有名な「マ→マ⤴マ↪マ⤵」。"いらすとや"より。

中国語のお陰でえらい広がった人脈

私は元々中国に長期留学するつもりで中国語を勉強していたが、コロナ禍の煽りをもろに食らって派遣中止となってしまった。
しかし、多少の中国語を身に着けていたお陰で、代わりに留学したオランダ、ヨーロッパで中国人や台湾人の友人を沢山作ることが出来た。
そしてこれは全く予想していなかったのだが、オランダではいわゆる中華レストランは勿論、普通のファストフード店の店員さんにも中華系の方が結構いらっしゃり、「オランダにいながら中国語で注文する」という稀有な経験をする事も出来た。

ヨーロッパ滞在中で一番印象に残っているのは、スウェーデン・ヨーテボリでの台湾人のお兄さんとの邂逅である。
その時、私はヨーテボリのチャルマース工科大学の研究室訪問の為に当地を訪れており、圧倒的安さに魅了されてホステル泊を選択した。8人1部屋の相部屋だったのだが、そこで偶々同室だったのがそのお兄さんである。
本職はフリーランスのダンサーで、ヨーロッパを巡業しつつ、その土地その土地で旅を楽しんでいる所だと言っていた。基本英語で喋っていたのだが、私がたまに中国語や台湾語(台湾で話されている福建語/閩南語の1種)の表現を織り交ぜると大変に驚き、そしてより心を開いてくれたように思えた。
言語学習は膨大な労力を要する割に、それに対するコスパが決して良いとは言えないが、根気よく続けていけばこのように良い事もあるんだなぁと感じ、大変嬉しかった。その方とはその場でインスタを交換し、今でもゆるーく繋がっている。ネットやSNSがある時代に生まれて本当によかった。

ヨーロッパの大学、特に大学院には多くの中国人・台湾人留学生がいる為(アジア系では最大勢力)、中国語が少しでも出来ると交友関係の幅がグッと広がり、より面白い体験が出来ること間違いなしである。

ヨーテボリのホステルにて。
窓の外をよく見ると寿司レストランがある。

北京語?広東語?上海語?魅惑の中国語s'ワールド

中国人同士でも言葉が通じない?

共通語が津々浦々に普及した現代の日本では想像し難いが、中国では「中国人同士でも言葉が通じない」という事態が普通に起こり得る。「中国には55の民族が暮らしている」という話を聞いたことがある人も多いかもしれないが、これは異民族間に限った話ではない。
所謂「中国語」を話す漢民族同士でも然りなのである。

一般的に日本で「中国語」と呼ばれているのは、中国語の北方方言(官話)をベースとした「普通話(プートンフア)」であり、標準語として遍く公の場で用いられ、基本的に教育もこの普通話で行われている。
ただし、中国語には「7大方言」と総称される多種多様な方言が存在し、特に長江以南に分布する
・呉語(代表格:上海語)
・閩語(代表格:閩南語)
・粤語(代表格:広東語)
・客家語
・贛語
・湘語(毛沢東の母語として有名)

は普通話との言語的距離が大きく、かつ各言語グループ間の違いも甚だしい為、お互いに通じない。喩えるならば、ゲルマン圏の各言語(英語・ドイツ語・オランダ語・スウェーデン語etc…)くらいの違いはあると思われる。
近年では普通話教育の浸透で「方言の違いで意思疎通が困難」という場面は減ってきたようだが、例えば商談中の秘密の相談で、一種の「暗号」として方言を使うといった場面はあるらしい。

また、世界中に広がる華人社会では、元来移民の出身地毎にそれぞれの方言が話されており、有名どころで言うとシンガポールは福建人、マレーシアのクアラルンプールは広東人、タイは潮州人が多い……といった具合に地域差がある。
こちらも近年では普通話(東南アジアの華人社会では"華語"と呼ぶことが多い)が華人間の共通言語として用いられることが多くなってきているようだが、特に高齢者層では中国語方言しか話せないという方々も一定数存在する。その一方で、若年層では完全に中国語(普通話)が母語となり、親世代・祖父母世代が話す中国語方言は分からないという人も増えている。

中国の漢系言語分布図。『百度百科』より引用。
なお、この図内で中国語方言は10種類に分類されている。

「中国語ワールド」「華人社会」をより深くまで知る為に

標準中国語が浸透する過程で生じた「世代間で話す言語が違う」という状況は、主に情報伝達面で色々と問題を引き起こしているようである。
最近だと、シンガポール政府が制作した高齢者に多言語でコロナワクチン接種を呼びかける動画中国語版(福建語・広東語・潮州語などのミックス)マレー語 & タミル語版}が話題となった。

それだけ各方言間の違いが大きいという現れであり、例えばヨーロッパ大陸に持っていったら間違いなくそれぞれ別言語として認定されるであろう。しかし、ここまでの違いがあるにも関わらず、なぜ「方言」として扱われているのだろうか?
その一因として、中華文化圏では多種多様な話し言葉が併存してきた一方で、共通の書き言葉(いわゆる"漢文")が一貫して使われてきたという歴史がある。(「軍隊を持つ方言は言語と呼ばれる」という格言があるように、固より言語/方言の区別は恣意的なものであるが、ここではあまり深く触れないことにする。)

それでも、各地で育まれてきた土着の方言はその土地その土地の文化や歴史を反映しており、また「○○人」としてのアイデンティティを保つ上でも非常に重要な役割を担っている。
「ことば」を学ぶという事は、同時にその言語が話される地域の歴史や文化、そしてその言語を使う人の思考プロセスを学ぶ事に他ならないのだ。

という訳で、私は中華文化圏をより深層まで理解するべく、標準中国語に加えて代表的な中国語方言である広東語・台湾語・上海語を学んでいる。

白水社の「ニューエクスプレス」シリーズ。
CD音源も付属しているので、日本語で学べる入門書としてうってつけである。

これら3言語は、文法こそ似ているが、それぞれ声調の数も違えば母音や子音の数・要素も全く異なる。もちろん漢語共通の語彙も多く存在するが、各言語独自の表現も沢山あり、学んでいて飽きない。
(漢族がその土地に移ってくる前に住んでいた先住民の言語が基層になっているのが一因とのことである)

<例>
・声調の数: 4 (普通話) / 6 (広東語) / 7 (台湾語) / 5 (上海語)
・母音の数: 7 (普通話) / 7 (広東語) / 6 (台湾語) / 10 (上海語)
・子音の数: 21 (普通話) / 19 (広東語) / 17 (台湾語) / 28 (上海語)
*広東語には母音の長/短の区別が、台湾語には鼻音化母音が存在する為、数え方によって若干数は変わってくる。

「こんにちは」
你好。ニーハオ (普通話)
你好。ネイホー (広東語)
你好。リーホー (台湾語)
侬好。ノーンホー (上海語)

「ありがとう」
谢谢。シエシエ (普通話)
多謝。トーチェ (広東語)
多謝。トーシァー (台湾語)
谢谢侬。シャジァノーン (上海語)

「私は日本人です」
我是日本人。ウォー シー リ゛ーペンレ゛ン (普通話)
我係日本人。ンオー ハーイ ヤップンヤン(広東語)
我是日本人。ゴァ シー ジップンラン (台湾語)
我是日本人。ンオー ズー ゼッペンニン (上海語)

「これ何?」
这是什么? チャー シー シェンマ?  (普通話)
呢個係乜嘢? ニーコー ハーイ マッイェー? (広東語)
這是甚麽? セー シー シムミッ? (台湾語)
搿个是啥物事? ガッガッ ズー サーマッズー? (上海語)

「遊ぶ」
玩 ワーン (普通話/広東語)
𨑨迌 チット― (台湾語)
白相 バッシァン (上海語)

*片仮名表記はあくまで目安である。

結び

最後の方はいささか雑学大会のようになってしまったが、少しでも中国語ワールドの魅力が伝わっていれば幸いである。
最後に、私のお気に入りの台湾語と上海語のフレーズを一つずつ紹介して締めとする。
台湾語「ニャーニャー niā-niā」
(~だけ、普通話では"而已")
上海語「アッララッラ âkla lěkla」
(私達は~にいる、普通話では"我们在")

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