嫌な予感のLCCでシステム障害に巻き込まれ
7月19日に発生した世界規模のシステム障害に巻き込まれた話です。
嫌な予感しかしないLCC
「マッターホルンとアウシュヴィッツに行こう」と思い立って旅程を検討する中で、ジュネーブから入ってクラクフから出国するオープンジョーを探し始めた。各航空会社のHPを検索してタイムテーブルと料金からエミレーツの航空券を購入した。
購入時からの一番の懸念は、クラクフ→ドバイの便がLCC(格安航空会社)の「フライ・ドバイ」運行のコードシェア便であるという点だった。
LCCには乗ったことはないが、LCC自体はありかな、と思っていた。ただ、通常キャリア(エミレーツ)の料金で、LCC(フライ・ドバイ)に乗せられるのは釈然としないものがある。とは言え、トータルでみて一番妥当だと判断してエミレーツにした。
エミレーツは過去数回利用しているが、羽田→ドバイ間で、エコノミー席がオーバーブッキングのためビジネス席に変更になったことがある。それが最初で最後のビジネス体験だから、印象の良い航空会社ではある。
出発地クラクフ空港までは電車の本数も少なく、英語表記も少ないポーランドは、スイスとは比較にならない不安満載状況、12:50のフライト時刻3時間半前に空港到着。チェックイン開始までしばらく待って、チェックイン。チェックインカウンターには、アラブ系の乗客が集まっているのは当然だが、子供連れの家族が多い。これが大いなる伏線になる。
搭乗時刻を少し遅れて搭乗開始、進んでは止まりで遅々としている。ポーランド語とアラビア語らしきアナウンスの間に、たまに英語らしきアナウンスが混じるが聞き取り不能。
何とか搭乗バスに乗り込むもののバスは出発しない。その間も子供達は楽しそうに大声で話し、楽しい家族旅行の風情。
案内はないが、出発遅延は確実。まあ、LCCに限らずよくあることではある。
機内はカオスの7時間半
やっとのことで乗り込んだ機内は、ほぼ満席、若干の遅延で飛び立つかと思いきや、その気配はない。乗客はアラブ・インド系が8割で、残りがヨーロッパ系、東洋人は我々2人だけ。座席モニターはついているものの、もちろん稼働はしない。相変わらず大したアナウンスもないが、乗客は「こんなもんだろう」という感じで呑気、子供達は楽しそうに騒いでいる。
少しうとうととした。かなり眠ったと思ったが、15分ほどだった。うしろの座席には、アラブ系の若いお母さんが2人の男の子連れている。幼稚園児くらいの元気な男の子が、うしろから「ドンドン」するので目が覚めた。
乗客は皆穏やかであるが、楽しくて仕方ない子供達は、徐々にヒートアップしてくる。乗客の平均年齢は、かなり低いように思う。賑やかで結構ではあるが、状況が分からないことの不安もあって、ストレスが高まってくる。腹痛がしてきた。
1時間経過しても何の変化もない。子供達が機内を走り回るが、親は温かく見守るだけ。4人の子供を1人で連れているお母さんもいる。日本のように、いちいち子供の行儀に構っていられないだろう。
2時間ほど経過して、アナウンスが入る。「離陸許可が下りた」的なことを言っているようだが定かでない。数分後、客室乗務員が仕事を始めた。一安心ではあるが、フライトはこれからだ。ドバイまでは5時間半。腹痛が増してきた。
映画、音楽、ゲームなどの機内エンタメのない中では、ひたすら寝るだけであるが、子供達はひたすら騒いでいる。うしろの「悪ガキ」は「ドンドン」を繰り返す。寝られない。子供達もそのうち充電切れなって静かになるだろう、という願いは、最後まで叶えられることはなかった。
2時間遅延のあとの5時間半フライト、計7時間半の苦行を乗り越えて、ドバイの明かりが眼下に見えてきた。
着陸時は、さすがにシートベルトを着用して、子供達も少し大人しくなった。と同時に、何故か今まで聞こえなかった赤ちゃんの泣き声が響き出した。赤ちゃんの泣き声を聞きながら、心が落ち着いてきた。
「赤ちゃんは仕方ない」
サウナ風呂のようなドバイに到着した。
カオスの機内で唯一の心の支えは、ドバイでの乗り換え時間が6時間もあることだった。2時間遅延で、逆に何とか我慢できる乗り換え時間内に収まった。
ドバイ到着後、世界的に大規模なシステム障害が発生したことを知った。その影響だったのか、違ったのか、いずれにしてもこの程度の遅延で済んだのは幸運であった。
ドバイからの帰国便は、成田行きのエアバスA380、現役で世界一大きい航空機である。
成田到着時の「長時間のフライト、お疲れさまです」的なお決まりのアナウンスに対して、「この天国のような機内なら何時間乗っていても平気だわ」とツッコンだ。