【世界を知る】見過ごされる命:東ティモールの若年妊娠とその背景
日本の皆さま、元気でお過ごしですか?今月は私、ロジーニャがブログを担当します。
2023年、私たちが思春期リプロダクティブ・ヘルス事業を開始したことをご存知でしょうか。事業の背景となった東ティモールの実情をお伝えします。
受け入れられない10代の妊娠~保健センターの現場から
首都ディリの人口密集地、ドン・アレイソ郡にあるコモロ保健センター。
年間6千人の妊婦が訪れます。母子保健責任者である助産師オリンダさんは東ティモールでの若年妊娠の課題について語ります。
「コモロ保健センターでは年間300名の10代の妊婦健診を受け入れています。多くの若年妊婦は、初回に産科を受診するのではなく、おりものが出て陰部がかゆい、お腹・お尻が痛いという理由で一般外来を受診します。おかしいなと思った助産師が、尿検査を促し、妊娠が発覚するというケースが多いです。自分が妊娠していると気付いていない、もしくは妊娠を受け入れられないため、一般外来に来るのです。」
10代の妊婦たちに妊娠を告げると「信じられない・・・私はまだ学校で学びたいのに」といって泣き始めるそうです。さまざまな不安が彼女たちを襲います。特に、両親や、居候している親族に告げられない子が大半なので、助産師が代わりに電話で妊娠を告げることもあります。自分の子どもが妊娠したことを受け入れられなかったり、暴力をふるい罵ったりする親もいるそうです。それが原因で自殺や赤ちゃんの遺棄に追い込まれるケースもあります。
「たくさんのケースを私は見てきました。助産師として、少しでも多くの命を救いたいです。若年妊娠した母親も、彼女が産む赤ちゃんも大切な命です。家族みんなで受け入れられるようにケアをしたいと考えています。ただ、ここで働く全員が、どのように若年妊娠の子へ対応すればいいのかを理解できているとは言えません。」
オリンダさんは、正しいケアの提供が妊産婦や赤ちゃんの命を守るために必要だと言います。
東ティモールの若年妊娠と性教育の現状
とても悲しいことですが、東ティモールでは若年妊娠と新生児遺棄が年々増えています。13歳から15歳の若者によるケースもあります。
私は5人の子を持つ母として重大な課題だと感じます。2016年のディリ県保健局のデータでは、15-19歳の女性の7%が妊娠を経験していました。同年齢の女性の死亡例のうち2割が妊娠・出産に関連しており、若年妊娠は健康リスクが高いのが特徴です。
コモロ保健センターのあるドン・アレイソ郡は、親元を離れて中学校や高校へ通う地方出身の子どもたちが多くいます。私たちが昨年行った調査でもこの地域の生徒の約4割が両親から離れて暮らしていました。独立前と比べてインターネット環境は飛躍的に良くなり、中高生でもスマホを所持しています。Facebookなどを介して男女が出会い、望まない妊娠に至るケースもあります。
性に関して正しい知識や情報を得るには、学校での性教育が不可欠だと私たちは考えます。学校への聞き取りでわかったのは、教員でも性について教えられた記憶がない、どのように教えれば良いのかわからない、教えるのが恥ずかしい、そもそも“保健”という教科に注視していられない、教員の数が不足している、など様々な理由で、教育省のカリキュラムはあるのに、性教育は実施されていませんでした。私はインドネシア占領時代に教育を受けた世代ですが、私も中学校や高校で性について教育を受けた記憶はほとんどありません。
国の政策に沿い、シェアがリプロダクティブ・ヘルス分野で貢献すること
東ティモール保健省(日本の厚生労働省に相当)も何もしていない訳ではありません。数年前から思春期(Adolescent)課を立ち上げ、若年層の健康課題へ取り組み始めたところです。また、2030年までの保健セクター国家戦略計画で「妊産婦死亡率や新生児死亡率を減らすため、母子保健や妊産婦に関する情報提供に力を入れる」とし、「リプロダクティブ・ヘルスと家族計画の政策を見直し、実施していく」と発表しました。ディリ県保健局長からの打診もあり、シェアもこの課題に取り組むことになりました。
私はシェアで仕事を初めて15年です。シェアのアプローチで大切にしていることは、人を育てる、という事です。このモットーはずっと変わりません。東ティモールの若者が抱えている課題に対応するためには、学校や保健センターの役割が欠かせません。教員による性教育、保健センターでの若年妊婦へのケアの提供に関し、シェアとして取り組めることがあると考え、事業はスタートしたのです。
実はこの事業を継続・展開するために資金が不足しています。そこで4月22日から日本でクラウドファンディングを行うことになりました。東ティモールの若者を支え、彼らの健康な未来のために、皆さまの応援をよろしくお願いします。
*応援よろしくお願いいたします*
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