母と子の笑顔を増やすために~事務局スタッフが感じた現地の変化
皆さん初めまして、東京事務局で東ティモール事業を担当している冨澤です!
とうとう師走ですね。来週には今年の漢字が発表されるとのこと。我が家はクリスマスツリーを飾りつけ、サンタさんのクッキーを買って、年末感たっぷりです。
さて、私がシェアに入職して一年、先日初めて東ティモールに足を踏み入れることができました。今回は私が東ティモールの現場で目撃した、シェアの事業が地域にもたらした変化についてお話しできればと思います。
私自身がシェアに関わることになったきっかけ
今回ブログを書くのは初めてなので、少し自分の自己紹介から始めたいと思います。私はシェアに入る前は助産師として東京の総合病院で産前産後や出産、そして新生児のケアに関わってきました。助産師としての経験を10年以上積んだ後、2020年に産んだ第一子は生まれた直後から具合が悪く、詳しく調べたところ放っておけば死に至る心臓の病気があることが分かりました。幸いコロナ禍で医療がひっ迫している中でも医療レベルの高い日本で手術と術後ケアをうけることができ、現在では毎日走り回るまでになっています。
突然分かった重症の心疾患をすぐに手術して管理してもらえるなんて何て恵まれているんだろうと感じました。一方で海外では医療や保健にたどり着くことができず、防ぎえる疾患で亡くなる母子や、複雑ではない疾患でも、蘇生や治療が出来ずに亡くなる母子がいることを改めて思い出し、そのような人たちが基本的な母子保健サービスにアクセスできるお手伝いをしたいと思い、第二子の出産を機に病院を退職し、シェアの事業担当となりました。
シェア東ティモール事業は何をしているの?
シェア東ティモールで実施している母子保健サービス活性化事業(愛称:HAKBESIK)は僻地に暮らす住民が健康な生活を送ることができるように、保健医療へのアクセスを改善する活動を行っています。アクセス改善と一言で言っても、母子側を含めた住民の課題や、医療従事者側が提供する保健医療サービスの問題があります。その双方の課題改善のために保健ボランティアの育成や、地域の保健医療従事者の研修、それを統括する保健行政のマネジメントのサポートなどをしています。
その一つ、地域の保健医療従事者の研修として、シェアは昨年から「清潔で安全な分娩トレーニング」を国立医療研修所と共同で実施しています。昨年に引き続き、今年も地域の医療従事者を招いて実施しました。この研修では、正常分娩と呼ばれる経膣的なお産について、その流れと基本的なケアを実践的に学んでいきます。
日本では助産師教育を卒業した後、助産師業務を独り立ちできる程度までは手厚い職場内の教育制度があるのですが、東ティモールでは学校での助産師教育を卒業してすぐに独り立ちして業務をしなければいけない場合も多く、特に地域に派遣される助産師は診断・ケアそして搬送の決断まで自分ですべてせざるを得ない環境にあります。また卒後教育もないため、自信がないケアはそのまま、新しい情報をアップデートすることのないまま現場に入ることになります。
現地で見ることができた地域の人たちの変化
今回私が訪問したセシリアさんは臨床経験8年目の助産師、駐在しているのはアタウロ島の中心からずっと離れたビケリ村のヘルスポストです。ヘルスポストとは主に看護師や助産師が駐在をする簡易な診療設備で、妊婦健診や産後健診、そして正常分娩の介助を行います。セシリアさんは、この診療所に来る妊婦さんはヘルスポストで、出産場所で自宅を選んだ人はお宅に行って分娩介助をしています。簡素な最低限の設備の中で母と子の安全を守る姿に敬服します。
今回の研修では経験のある助産師でも最新の情報を得ることができた様子で、今回学んだケアについて教えてくれました。卒後教育の環境がない東ティモールではこのように改めて分娩に関して学ぶことで、アップデートされた根拠に基づく安全なケアを提供できるようになります。
また、お会いすることは叶いませんでしたが、他の村に駐在している若い助産師は、この研修を受けたことで自分のケアに自信を持つことができ、ヘルスポストで分娩介助ができるようになったという報告ももらいました。以前は自信がないがために、陣痛が来た妊婦さんにも島の中心の病院に行ってもらうなど分娩の対応は断っていたとのことで、保健医療へのアクセスという意味では大きな変化をもたらすことができたようです。
もちろん、一回の研修で分娩介助が完璧にできるようになるわけではなく、出産は十人十色で一例一例経過が違うわけなので、継続的にフォローアップして質を向上させる必要がありますが、ヘルスポストという箱が機能するという意味でとても意味のある一歩だなと思いました。
また、シェアの現地スタッフの日々の関わりが少しずつ変化をもたらしていることも見ることができました。保健医療施設において、データの管理というのは非常に重要です。それぞれの患者さんが過去どのような受診をしたのか、子どもたちは決められた予防接種を打っているか、妊婦さんは健診をきちんと受けて問題なく過ごしているのか。島の中心にある保健センターでは、患者情報はきれいに整理され、それぞれの予防接種率の推移についてデータをまとめ、妊婦さんについては出産予定日毎に情報が整理され、ドロップアウトがないように電話したりしてフォローアップしているそうです。
以前と比べてかなり様子が改善されているとのことで、シェアの現地スタッフが、ほぼ毎日施設に行って、保健センターのスタッフと良好な関係性を築き、行動変容に向けたアドバイスをしているのが徐々に形になってきていると感じました。
母と子の笑顔を増やすために
保健医療へのアクセスは妊娠・出産に関連する母子の死亡に大きく関連します。今回直接見ることはできませんでしたが、医療施設へのトレーニングに加えて、シェアでは保健ボランティアに保健教育に関するトレーニングを提供し、妊娠したら妊婦健診が必要であること、専門家の立ち合う清潔で安全な出産の必要があること、妊娠中の健康的な生活についてなどの情報を住民に広めてもらっています。
シェアの活動によって、住民が保健についての正しい知識を得て、医療従事者は自信を持ってケアを提供でき、保健医療施設でもデータが整理・活用されることで、サポートが必要な住民に広く行き届くように。保健医療へのアクセスが改善することで少しでも悲しいニュースが減り笑顔が増えていく社会をつくることができるように。
シェア東ティモールをこれからも応援よろしくお願いいたします。
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