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地動説に翻弄され続けた男の話
僕が大好きなチ。のアニメ版最新話までのかなりのネタバレを含みますが興味のある方は読んでみてください。
ノヴァクは僕がチ。の作中で一番好きなキャラです。声優が津田健次郎さんという時点で優勝が確定してるわけですが、それは置いといて。
まず彼は異端審問官の仕事をしています。異端審問官とは当時の教会に教えに反する人を捕まえ、拷問し、処刑する宗教警察のような職務です。
そしてまだ若い頃、彼は異端審問官としてある異端に出会います。その異端がチ。の一章の主人公である12歳の神童ラファウです。ラファウは当時禁じられていた地動説を研究した容疑で裁判にかけられますが、1回目の犯行ということもあり、改心の余地を与えられましたが、自らそれを断り、自死を選びます。
ノヴァクには地動説のために命をかけた彼のことが全く理解できませんでした。
一方でラファウとラファウに地動説を教えた異端の研究資料はとある山中に隠されたままでした。
そしてラファウの死から10年後、色々あって代闘士のオクジーという人物がその資料を見つけ、元異端の天才修道士バデーニの元にその資料を届けます。
そして不完全だった地動説の完成を目指すバデーニとオクジーの二人組にひょんなことから天文研究所で働く14歳の天才少女ヨレンタが加わります。
このヨレンタこそがノヴァクの実の娘だったのです。ノヴァクは早くに妻を亡くし、不器用ながらヨレンタを男手一つで大切に育てあげました。冬の寒い日も手がかじかまずに、彼女が好きな天体の勉強ができるよう特注の手袋まで用意する溺愛っぷりでした。そして念願だった天体研究所に彼女は採用され、離れて暮らすことになりました。
しかし異端審問官という血塗られた仕事をしていることだけは彼女には告げず、教会関係の仕事をしているとだけ伝えていました。
そしてある日バデーニとオクジーの異端研究について嗅ぎつけたノヴァクは彼らを捕まえに向かい、酒場で彼らと自分の娘が談笑しているところを目にします。その後異端審問官ということを伏せ、娘ヨレンタを含む3人に接触を試みます。そして酒場から出て解散し娘がバデーニとオクジーから離れた時にこの2人を捕まえに向かいます。一方この直前にヨレンタは、以前捕まりかけてノヴァクのことを知っていたオクジーから父が異端審問官だと言うことを聞かされてしまいます。
その後バデーニとオクジーを捕えたノヴァクは、2人を火炙りにかけて処刑しました。しかしこの隙にノヴァクの失脚を狙う司教の息子に、娘ヨレンタが捕えられます。しかしヨレンタは拷問を担当した新人異端審問官の助けでヨレンタは窮地を脱し、命からがら逃げ出すことに成功しました。しかしヨレンタはこの時、父からもらった大切な手袋を司教の息子に奪われたままでした。
そして司教の息子はノヴァクを社会的、そして精神的に追い詰めるために、逃げ出したヨレンタの死を偽装すべく、ヨレンタを逃した異端審問官を灰になるまで燃やします。
そして娘が捕えられたと聞きノヴァクが駆けつけた頃には、灰になった遺体だけが残され、形見として司教の息子から自分が昔あげたヨレンタの手袋を渡されます。
ヨレンタの命も、地動説もこれで終わりのはずでした。
それから25年後。最愛の娘の死により意気消沈したノヴァクは異端審問官を辞め、酒場で飲んだくれるだけの老人になっていました。
25年後の世界では教会正統派の凋落が激しく、各地の異端を解放し異端審問官を殺害してまわる異端解放戦線という組織が暗躍していました。
そんな彼の元に地動説の噂が舞い込みます。娘の仇であり、駆逐したと思った地動説がまたも復活したことに復讐心を燃やす彼は異端審問官に復帰し、今度こそ地動説を撲滅しようと動き始めます。
一方、25年前のあの事件から生きながらえたヨレンタはその後異端解放戦線を組織し、かつての友であるオクジーが書き残した、地動説が完成していく様を隣で見続けた感動を綴った手記を、当時の最新技術である活版印刷技術を用いて大量に複製し国中にばらまく計画を進めていました。
そして作戦も最終段階に近づく頃、娘の仇である地動説の駆逐に燃えるノヴァク率いる審問官たちがヨレンタの拠点を突き止め襲撃します。
もちろんノヴァクは死んだはずの娘が地動説を流布しようとする首謀者だとは思ってもいませんでした。
その一方でヨレンタは事前に襲撃を感知し、仲間に後の手記流布作戦を託し、時間稼ぎの為1人で拠点に残ります。
そして待ち構えるヨレンタの元に到着する審問官の一団。暗闇でよく見えない中、ノヴァクが馬車から降りて出てきます。そして彼女の方に目をやったその瞬間、ヨレンタは足元の大量の爆薬に火をつけ自決しました。自決の寸前爆薬の火に照らされた2人の目が合います。ノヴァクは彼女がヨレンタであると気付くことはありませんでしたが、おそらくヨレンタは目が合った審問官が父であることに気が付いたと思われます。
そして地動説の根本を遂に駆逐したと思い、弾け飛んできた千切れた手を握り無造作に拾い上げるノヴァク。
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そのシーンが、かつて親子2人が手を繋いで歩いたシーンと重なり最新話は幕を閉じました。
なんという皮肉でしょうか。観終わった後しばらく呆然としてしまいました。
地動説に翻弄され続けたノヴァクとヨレンタの数奇な人生。あまりにも皮肉で悲しい結末でしたがこれもまたチ。の魅力の一つです。
チ。は時代の変遷とともに主人公が代替わりしていく中で、教団側として共通して登場するノヴァクは裏主人公的な立ち位置だと感じます。
少し長くなってしまった上にかなりのネタバレを含んだ内容になってしまいましたが、もし興味を持たれた方はぜひチ。をご覧になってみてください。Netflixで全話観れます(ネトフリの回し者ではないです笑)