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10.3 吉澤嘉代子「お茶会ツアー2019」@佐賀 Restaurant & Cafe 浪漫座
吉澤嘉代子がミニマルな編成で意外な場所にやってくる毎年恒例の「お茶会ツアー」、2019年の初日である佐賀へ行ってきた。佐賀には6年住んでたけど、この会場は初めて。何でも1906年建造の旧古賀銀行という九州5代財閥の1人が運営する銀行の建物だったとのこと。現在はカフェとレストランで、時折クラシックやピアノのコンサートが行われている品のある会場。吉澤嘉代子は、鍵盤奏者として伊澤一葉(the HIATUS/東京事変)を引き連れての2人体制。
そっと定位置につき、1曲目は吉澤嘉代子も着座しての「月曜日戦争」。原曲のファニーさは抑え、ピアノと歌のみでしっとりと歌い上げ、憂いを帯びた響きを持つ。なるほどこれがお茶会か、、とうっとりしてしまう。続いてはスタンドマイクでの「綺麗」〜「手品」。本来は華やかなアレンジが印象的な曲だが、軽快さはそのままさっぱりとしたナンバーに仕上がっている。シンプルなデモ版を披露する場というより新たな解釈で歌い直したような聴き心地だ。
「吉澤嘉代子検定」(正解するとルマンドが貰える)、「吉澤嘉代子ゲーム」(せんだみつおゲームである)というミニコーナーをゆるく進行していく姿は実にたどたどしく、先程までの堂々たる歌唱が嘘のようだ。作り込んだステージとは違うラフさ、これもお茶会の醍醐味とのこと。そんな雰囲気から一転し、「よるの向日葵」と「残ってる」をじっくり聴かせられるとなかなかに恐ろしい。突然、歌に没入する彼女、その切り替えはナチュラル、それでいて演劇的だ。
伊澤一葉がタクシー運転手に扮する「地獄タクシー」は、原曲のビッグバンドアレンジから大きく変貌し、その不気味さを際立てるシックで渋い伴奏がクールだった。運転手役の台詞には完全に千鳥・大悟の"よだれだこ"が憑依していて笑ってしまったけれど。そして「シーラカンス通り」では、歪んだビリビリとしたキーボードの音色の中で、アコギをじゃかじゃか奏でながら艶っぽく歌唱。単なるアコースティックセットではない、アクの効いたアレンジも楽しめた。
「スナックかよこ」なるコーナーでは、吉澤・伊澤がファンの質問に答えるものだったが、本人たち曰く「カタギじゃない水商売」な2人ゆえ、社会生活を生きる我々の質問に対する返答はだいぶグダグダなものであった笑。その流れでファンの1人をステージに上げて、カラオケセットで「アボカド」を。何この試み!毎回やってるらしいけど、ファンの子もすごい度胸!しっかり歌いあげてコーナーを締めくくっていた。観客をふわりと巻き込んでいくスタイル。
続いてはカバーコーナー。提供曲にも逸品が多い彼女ゆえ、こういった催しは貴重である。まずは私立恵比寿中学から。既に3楽曲も提供しているわけだが、最新の「曇天」を。エビ中が歌うとやや大人びた背伸び感がある曲だったが、吉澤本人の歌唱だとまるで「残ってる」のパラレルワールドにも聴こえる退廃感があった。そして、初披露のYUKI「魔法はまだ」のセルフカバー。ダンスミュージックのテイストも取り入れた原曲をうまく活かし、淡く軽やかな歌唱だった。
「最後の2曲は、大事な曲」と告げ、まずは「movie」が。シンセによる導入から、サビにかけて剥き身なアレンジへと移り変わっていく。派手さはないが、徐々に展開する様はさながら映画のよう。そして本編最後は「一角獣」。彼女の視点は常に、現実も空想も一つの地平としてとらえ、そのどちらもを真なるもの、愛すべきものとして見つめている。この小編成においても、その想像力はこちらの<心の一番綺麗な場所>にも流れ込み、深淵の風景を立ち上げてくれた。
アンコールに応え、5年前のデビュー曲「美少女」を披露。皆で歌うととても心が晴れるメロディだし、一貫した美学があるなぁと感心してしまう。伊澤が退場し、最後に一人で新曲「抱きしめたいの(仮)」を。フジテレビ系「セブンルール」の番組内CMソング、そのフルバージョンはつい最近できたばかりだという。きゅんとなるメロディと、強い肯定感の詰まった1曲。これがどのようなアレンジを施して我々の元へ届けられるのか、今から楽しみでならない。
10.3 吉澤嘉代子「お茶会ツアー2019」@佐賀 Restaurant & Cafe 浪漫座
-setlist-
1.月曜日戦争
2.綺麗
3.手品
4.よるの向日葵
5.残ってる
6.地獄タクシー
7.シーラカンス通り
8.アボカド
9.曇天(私立恵比寿中学)
10.魔法はまだ(YUKI)
11.movie
12.一角獣
-encore-
13.美少女
14.抱きしめたいの(仮)
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