PEDROが飛び込んできた夏~2019.08.01 DOG IN CLASSROOM TOUR@福岡DRUM Be-1
BiSHの無口担当、アユニ・Dによるソロプロジェクト、PEDROによる初の全国ツアー「DOG IN CLASSROOM TOUR」福岡公演を観た。外は夕刻なのに殺人的猛暑。夏、それもジメジメとした鬱陶しい熱帯夜を描いた曲が多いPEDROを観るには最適な気候。そんなぬるい外気を置き去りにして、弾丸の如く過ぎ去った90分間であった。言葉数も少なく、本編の終わりはスパッと、アンコールもちゃっとやってぱっと帰るような。なのにずっしりとした余韻。アングラっぽいんだけど華があるし、危なっかしい感じもありつつ、やはりキュート。見映えもよく、とかくフォトジェニックなバンドだった。
PEDROはベース&ボーカルのアユニ・D、ギター&コーラスの田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)、そしてサポートドラムの3ピースバンド編成。キャリアも出自もバラバラな3人、発足から1年少しという荒削りな雰囲気すら一つの魅力となっていた。アユニの、スンとした表情で放たれるぶっといベース音は風格があり、土台となるパワフルなドラムは頭空っぽになれる気持ち良さ。そこにかの田渕ひさ子があのジャッキジャキなギタープレイで華を添える。そして何より、アユニのあの駄々っ子のようなピーキーな歌声!睨みつけるように、そしてたまにはにかむ顔は恐ろしくもチャーミング。
1曲目「STUPID HERO」の1音目からバカでかい音量で圧倒された。アッパーな曲だったけど序盤はお客さん大人しかったのはその音にびっくりしてたからなのかな。4曲目「NIGHT NIGHT」からは徐々に会場も湧き始めて。昨年のミニアルバム「zoozoosea」と今年のフルアルバム「THUMB SUCKER」を全曲きっちり網羅したセットリストは、コンパクトながら初期衝動まみれでエネルギッシュ。ひときわ切ない「甘くないトーキョー」や、四つ打ちで駆け抜ける「ironic baby」辺りは特に良かった。彼女の歌声は神経質なようであり、そこにきゅんとなる瞬間も多いのよ。あの乱暴な煽りっぷりもイイ!
アユニって、おとなしそうで色白な見た目、カメラ前で笑顔を見せない取っつきにくさ、不機嫌を隠さない感じなど、サブカルクソ野郎たちが様々なカルチャー文脈を付与したくなる要素がそもそも満点で。PEDROで彼女が書く歌はメジャーアイドルとは思えぬダウナー成分がたっぷりで、ほらやっぱり!と我々を喜ばせるのであった。ベースをアタック強めに弾いているのも彼女の攻撃性を表しているよう。まだ楽器を初めて1年程度らしいけど、既にBiSHでのダンスと同様に肉体の動きの一つとして取り込んでいたように思う。どんどんセルフプロデュース化していったらこの先もっと化けるかも。
「座右の銘は、"いじけず気にせず期待せず"だ」と語ったMCが良かった。それゆえにいじけるし、気にするし、期待するのだ、と展開していく話で。PEDROの楽曲も常にどこか居心地悪そうで悪態をつき、そんな自分の傷に浸りがちであるが、その先にありえるかもしれない何かへの期待が満ちているものが多い。そのギリギリでナイーブな希望こそが、アユニを突き動かしているのだろう。これからどう広がるか分からないPEDROだけど、いつか炎天下の夏フェス会場などで彼女のあの吐き捨てるような、それでいて心を掴んで離さない歌唱を、今日みたいなバカでかい音量で聴いてみたいものだ。
2019.08.01 PEDRO「DOG IN CLASSROOM TOUR」@福岡DRUM Be-1 setlist
1.STUPID HERO
2.アナタワールド
3.玄関物語
4.NIGHT NIGHT
5.GALILEO
6.ボケナス青春
7.SKYFISH GIRL
8.甘くないトーキョー
9.MAD DANCE
10.ハッピーに生きてくれ
11.NOSTALGIC NOSTRADAMUS
12.ironic baby
13.自律神経出張中
14.ゴミ屑ロンリネス
15.おちこぼれブルース
16.猫背矯正中
17.Dickins
-encore-
18.EDGE OF NINETEEN
19.うた
20.ラブというソング
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