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その先の青さに/9.29 ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2023『サーフ ブンガク カマクラ』@ Zepp Fukuoka(ゲスト:THEティバ)

こんな日がやってくるなんて思わなかった。今年、15年ぶりに再録された名盤『サーフ ブンガク カマクラ』、それを引っ提げてのツアーである。2009年に当時の全曲を披露したツアーはあったが当時は高校受験で行けなかった。もうほぼサーフの曲を聴くチャンスは無いと思われたが、生きてるといいことはあるものだ。

福岡公演のフロントアクトはTHEティバ。素晴らしいガレージロックを聴かせてくれた。音源はへろっとしたヨレが魅力と思ってたけどライブは強烈にメリハリが効いてた痺れた。ルーズな感じでいてしっかり聴かせる歌心。藤原さくらと松尾レミが組み合わさったような魅力。サポートベース含め、ステージ映えしまくり。


そしてアジカンである。「鵠沼サーフ」や「江ノ島エスカー」といったあの頃からライブで聴ける日を待ち望んだ曲たちも、「石上ヒルズ」のような新曲も等しく感慨深い。正直このツアーを逃したら次いつ会えるか分からない!「荒野を歩け」や「ホームタウン」といった近年のパワーポップ曲もしっかりと華を添えていた。

「七里ヶ浜スカイウォーク」以降のブロックでは『サーフ〜』のノスタルジーが爆発。「腰越クライベイビー」の感傷、「極楽寺ハートブレイク」の甘酸っぱさ、「長谷サンズ」の翳り、それぞれにキャラの立った良いアルバムだと実感するし、アジカンの身軽な演奏がその豊かな情感をめいっぱいに広げていたように思う。

ここで唐突に「桜草」がぶち込まれたのは非常に不意をつかれたし、ずっと「え?え?」と小さい声で呟いていた。あのドロドロに内省的な『ファンクラブ』からまさか選曲されるとは。しかしリズムパターンやギターの太さは実はパワーポップライクでまた驚く。歌詞や制作風景を取っ払い、新たな光を当てた選曲と言える。

この流れで「桜草」とは歴史を重ねたからこそできた構成だろう。そうした経年変化は「日坂ダウンヒル」などでも強く感じる。老いることを受け入れ、馴染めない輪を眺めながら自分を生きること。その先にある成熟した青さを今のアジカンは歌う。「西方コーストストーリー」の爽やかさがその姿勢を強く物語っていた。


ここでさらに大きなブツが。Weezerの「Surf Wax America」のカバーだ。日本語詞もまじえ、ウェーブも起こしてみせる遊び心。そこから「柳小路パラレルユニバース」「稲村ヶ崎ジェーン」の開放感は史上。歌っている内容含め、最も身軽な今のアジカンだからこそ身体性に訴え続けるこんなライブが可能になったのだ。


「ループ&ループ」と「アンダースタンド」という特大アンセムが久々にセトリ入りする事件的な終盤。ずっしりとした「由比ヶ浜カイト」が終盤を予感させてくる。そしてたっぷりと郷愁を募らせる「和田塚ワンダーズ」に加え、思いがけず「ボーイズ&ガールズ」が続くというのがこのツアーのハイライトと言えるだろう。

「稲村ヶ崎〜」終わりのミスでリハスタのようなやり直しがあった時間など、バンドの和やかさがよく伝わったこの日。様々な時期を経て、今4人が並んで演奏してるという事実に泣きそうになる場面も多い。年齢を重ねる喜びと哀愁、そして《始まったばかり》というメッセージが並ぶこの2曲には強く勇気づけられた。


アンコールではおそらく日替わりの「ソラニン」に加え、「遥か彼方」「羅針盤」という『崩壊アンプリファー』の開幕2曲を立て続けにかまして最高潮に達する。サーフ曲の若々しさに連動し、衝動的なこの2曲が正しい場所で完璧に鳴っていたように思う。”ライブハウスを熱狂させてきたバンド“として覇者の風格。

祭りの余韻にじっくりと浸らす「鎌倉グッドバイ」に間髪入れず向かうのも美しかった。旅の終わり、しかし江ノ電は常に往復運行ではないか。時間は進むが魂はいつでも瑞々しさを求め、いつだって戻れるし、いつだって降りて休んでもいい。『サーフ〜』のツアーが放つメッセージとしてこれ以上なく逞しいものだった。

《setlist》
1. 藤沢ルーザー
2. 石上ヒルズ
3. 鵠沼サーフ
4. 荒野を歩け
5. 江ノ島エスカー
6. ホームタウン
-MC-
7. 七里ヶ浜スカイウォーク
8. 追浜フィーリンダウン
9. 腰越クライベイビー
10. 極楽寺ハートブレイク
11. 長谷サンズ
12. 桜草
-MC-
13. 日坂ダウンヒル
14. 西方コーストストーリー
15. Surf Wax America (Weezerカバー)
16. 柳小路パラレルユニバース
17. 稲村ヶ崎ジェーン
-MC-
18. ループ&ループ
19. アンダースタンド
20. 由比ヶ浜カイト
21. 和田塚ワンダーズ
22. ボーイズ&ガールズ

-encore-
23.ソラニン
24.遥か彼方
25.羅針盤
26. 鎌倉グッドバイ


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