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アイドルを観ること-ももクロ/BiSH/ばってん少女隊

女性アイドルのライブに度々足を運ぶ。彼女たちのライブにおいてグッとくる場面は人それぞれだろうけど、僕の中では決定的なものが一つあって。それは、メンバー全員が同じダンスを踊り、同じメロディで同じ歌詞を歌っている瞬間。その状況それ自体に毎度、毎曲、毎サビ、毎秒感動しっぱなしなのだ。アイデンティティも起源も何もかも異なる人間たちが、一塊となって何かを届ける美しさに見惚れてしまう。

グループの数だけ結成の理由はあり、一概には言えないのかもしれないけれど、アイドルは同じ学校の同級生で組んだとか、幼馴染で組んだとか、バンドの結成のような理由は少ない気がする。主に"大人"の思惑で集った女の子たち。ともすれば決して人生が交わらなかったかもしれない彼女たちが、どういうわけか一つの楽曲に向けて、同じように手足を動かし、同じ発声をするため同じ形で唇を動かすという行為、そこに奇跡めいた何かを感じて心が動かされているのだろう。偶然なのにまるで必然みたいに声を重ねてる状態がとても眩しいと思う。

11/23から11/25にかけて3組のアイドルを観た。結論は上に書いたことが全てで、既に自分の中で出ているのだけど、その思いを確固たるものにさせる3日間だった。

11/23 ばってん少女隊 6th Single「BDM」リリースイベント『ビックリ・ドッキリ・メガ』@天神コア屋上

ももクロの福岡の妹分と言えばどんな人にもすんなり伝わる。お披露目ライブから見ており、リリースごとに定期的に足を運べている。最古参って名乗れる程にデビュー時から追えているグループは今のところばっしょーだけなので、思い入れも深いし、先輩グループと絡んでるところ見ると「ウチの子たち頑張ってる、、」と勝手に感慨深くもなる。

スカコアを軸にしたロックサウンドと、やや幼めで素朴な雰囲気に合わせて元気の良さと博多弁を強調した詞世界の合わせ技はなかなかユニークなもので。ももクロやエビ中など、お姉さんグループが切り拓いた土壌をしっかりと踏みしめながら、自分たちの確固たる方向性を掴んでいる頼もしさがある。

この日光っていたのは何といっても新曲「BDM」である。KEYTALKの小野武正が作詞作曲を手掛けた、ストレートでファストなロックナンバー。キュートな部分を抑制し、ストイックにカッコよさを追求したシングルはこれが初めて。フリコピするより否応なしに拳を突き上げたくなるサビの熱いメロディ。詩情溢れる歌詞も相まって、まるで祈りのようにこちらの心にそっとエールを捧げてくれる。

そもそものグループの成り立ちからして、大きなバックボーンとブランドが存在し、最初のライブから安定した集客数を誇っていた彼女たち。逆に言えばそれ以上になかなか突き抜け切れていない現状もこの3年間を追ってきたがゆえによく理解できる。「BDM」という明らかに頭一つ抜けたアンセムが生まれたこれからが飛躍の時だと信じている。

あと、アイドルを観る意義として、「疑似恋愛」ってよく言われるんだけど僕はそれはあまりないかも。特に彼女たちみたいなスターダストプロモーションのアイドルにおいては。可愛いとは思うけど、それはアザラシの赤ちゃんとかを観る可愛さに近い。今回2ショットを撮ったのはピンク担当・西垣有彩さん。耳goodでした。

11/23 BiSH「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR」@福岡市民会館

そもそもは過激な活動の末、華々しく散ったBiSの意志を継ぐアイドル。二匹目のドジョウなんて言われてたし、最初期はメンバーも安定しないし、どこ行くか分からぬ破滅性もあり、そのスリルを楽しむコンテンツだったのだけど、しばらく観ぬうちにアイドルシーンを飛び越え音楽シーンの最前線まで辿り着いていて。そのブレイクっぷりを肌で感じる2日間だった。

福岡市民会館公演、2000人のキャパは即完。ホールライブは福岡では初、さらに幕が開くとステージ上に巨大な牢獄のような柵が設置されているというクセある世界観も相まって、最初こそ堅かったのだけど、2曲目「GiANT KiLLERS」、3曲目「MONSTERS」という、急発進な流れに会場は沸点に。ロック界隈が無視できなくなるほどに、ライブハウスという場所で勝利を収めてきたラウドで激情が迸る楽曲たちは、ホールという場においてもしっかりと正しいスケール感を持って届いていた。

中盤、名曲「オーケストラ」を初めて生で聴けた。鳥肌が止まらない。元々は脱退したメンバーに向けて綴られた歌詞、いつしかファンとの約束の歌のように鳴り響き始めるという美しき変化。BiSHがこれ程の求心力を持つことになった最大の理由は、ただ単純に楽曲そのものが魅力的だったからだろうと確信した。

また、BiSHは作詞をマネージャーとメンバー自身で行っているという部分にも強く惹かれる。グループの現状やその時の心情が生々しく楽曲に反映され、ストーリーを自らのペンで推進させている。個人的に、BiSHの無口担当・リンリンが作詞した曲はどれも大好きだ。寡黙なキャラにそぐわないポップパンクのような楽曲に対して多く詞を書いているのだけど、そのどれもが自身のノスタルジーと現在地を混ぜ合わせたようなドキュメント性の高い言葉が目立つ。「オーケストラ」に続いて披露された「Here's looking at you,kid」はリンリンの友人との仲直りの歌だが、ここまで辿り着いたBiSHに乾杯しているようにも聞こえて強く胸を打った。

BiSHのワンマンを観るのはこれが初めてだったのだけど発見があった。僕がアイドルを観るうえで好きなポイントである「メンバー皆で歌う」パートがとても少ない。メンバー個々の歌声が強靭なことがその理由だろう。しかしゆえに、「スパーク」や「BiSH-星が瞬く夜に-」のラストで声を重ねた瞬間に生まれるドラマ性はかなり高い。BiSHは元々は素人ばかりをオーディションで選んだグループ。出身も年齢もバラバラな人物が、今ここで交差しているというかけがえない一瞬を感じ、「尊い、、」ってコレだな、って。


11/24 BiSH メジャー5thシングル「stereo future」発売記念ミニライブ@天神コア屋上

圧巻のライブの翌日に行われたミニライブ兼特典会。商業施設の屋上ってこんなに人が載って大丈夫なのか、と心配になるくらいの集客。前日同じ会場ばってん少女隊もちゃんと人は集まってたけど、ここまでの密集度ではなかった。フリーライブだし、興味本位で来た人たちが多くいたことも含め、時代の先端部に躍り出つつあるあることを始まる前から知らしめてくれた。

セットリストは前日披露していない曲ばかり。ゆえにヒットナンバーと呼べるような曲は少なく渋い選曲だったのだが、キャッチーさはどんな曲にも込めてある。秋の温かな昼下がりに、「VOMiT SONG」のようなネガティブな楽曲がキラキラと振り注いでいたのは痛快で仕方なかった。

この日は特典会にも参加。前日、遠くの席から観たときにちょこまか動いてるのが可愛かったのでモモコグミカンパニーとチェキを撮った。僕はどうも、アイドルグループにおいて一番背が高いか低いメンバーのどっちかを好きになる傾向があるようだ。動きがほかの人と違って見えるところにグッとくるのかな。何にせよ、耳goodでした。


11/25 ももいろクローバーZ ジャパンツアー「青春」@鳥栖市民文化会館

思えば、僕にアイドルというエンターテイメントをもたらしたのは彼女たちだった。均一化されたヒット街道、そこを異物のまま頂点まで突き進んで行ったももクロの姿はあまりにも面白く、痛快なもので。行くとこまで行き着いてもなお、女性アイドルとしていつまでも続けていくという覚悟を感じる姿勢は、選ばれしグループなのだな、とひたすら関心している。

今回参加したのは、2年掛かりの47都道府県ツアー。残すところ3公演となった佐賀ではももクロのライブが開催されるのは初。その期待に応える、堂々たるコンサートだったことは言うまでもない。大会場で用いるような派手な演出やコンセプトはない、メンバーのパフォーマンスが全てという、徹底的に削ぎ落され、無駄なく真っ直ぐに仕上がったショーだった。

ツアータイトル「青春」にちなみ、彼女たちが青春を感じる楽曲を披露していくブロックがあった。多くの人々の青春とは全く違う日々を送ってきた彼女たち。その時覚えた感情をそっとこちらに差し出すような特別な時間だった。特にリーダー百田夏菜子が、悔しい気持ちを覚えたときにデモが届いたという「白金の夜明け」は、アルバムツアーで聴いた時とが異なる、リアルな手触りを持って届けられていた。

活動10年目となればある程度の安定は約束される、と思うかもしれない。しかし、今年1月、メンバーの有安杏果が脱退。この4人なってからはまだ1年も経っていない。それを踏まえると、この完成度と安心感はどれほどの努力から生まれたのかと、途方もない気持ちになる。ももクロの劇的な歩みが刻まれた楽曲さえあれば、高純度のストーリーが生まれるのだ。

ライブを締めくくった「Re:Story」が素晴らしかった。今年8月に配信されたばかりの新曲。当たり前のようにそこにある絆をじっくりと確かめ合うような歌詞が、このタイミングではひどく沁みる。有安の圧倒的な歌声はももクロの楽曲の中心にあった。残された4人は、過去の楽曲を何か他のもので補おうとするのではなく、そのまま歌い続けることを選んでいた。居ないということ、は居たということ。去った仲間の存在も肯定し、再び物語を進めた彼女たちの姿は逞しかった。

3連休を全てアイドルに費やしておいてなんだが、実際アイドルというカルチャーに対しての疑念は尽きない。CDを複数枚買うと握手ができたり写真を撮ったりできる、でかい声で曲中にコールを叫ぶ、振り付けをコピーする、など。これは果たして一体何なのか、という思いを常に抱きつつも、僕は特典会にも参加するし、コールも叫ぶし、簡単な振り付けは一緒にやる。やれば楽しいので、やる。

かつてはアイドルに抵抗しかなかった。人に作ってもらった歌を歌い、多大なる出費をこちらに課して稼ぐ、何という商売なのだ、と。バンドやシンガーとは根本から何もかも違うものだと思っていた。最初にももクロを聴き始めた時も、どこかで、従来の存在に対してのカウンターだったから、という思いがあったような気がする。

ただ今となっては不思議なもので、すっかりアイドルを観ることは当たり前なものになってしまった。これは、自分の中でグッとくるポイントを見つけ出せたのが大きい。というか、よく考えると、「ひとつの作品に向けて複数の異なる人物が動作を行う」ということはバンドであってもそうだし、シンガーであってもそうだし、何なら映画やドラマなんかもそういう性質を持っている。つまり僕は、ポップカルチャー全般においてグッとくるポイントは共通していた、と。唐突に、自分がこの趣味に求める要素に気付き、この文章は終わりでーす。あと以下に、この3日間5公演のセットリストを。

11/23 ばってん少女隊 6th Single「BDM」リリースイベント『ビックリ・ドッキリ・メガ』@天神コア屋上
1部

1.ハカタダンスホールベイベー
2.夢のスコール
3.おっしょい!
4.Going My Way
5.よかよかダンス
6.BDM
2部
1.ますとばい
2.ばってん少女。
3.BDM
4.スターダスト
5.びびび美少女
6.夢のキャンバス
-もう一献(アンコール)-
1.MEGRRY GO ROUND
2.ころりん HAPPY FANTASY

11/23 BiSH「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR」@福岡市民会館
1.PAiNT iT BLACK
2.GiANT KiLLERS
3.MONSTERS
4.本当本気
5.spare of despair
6.SMACK baby SMACK
7.Nothing.
8.JAM
9.オーケストラ
10.Here's looking at you,kid
11.ろっくんろおるのかみさま
12.HiDE the BLUE
13.パール
14.スパーク
15.DA DANCE!!
16.プロミスザスター
17.FOR HiM
18.サラバかな
19.OTNK
20.beautifulさ
-encore-
21.NON TiE‐UP
22.stereo future(新曲)
-double encore-
23.BiSH-星が瞬く夜に-

11/24 BiSH メジャー5thシングル「stereo future」発売記念ミニライブ@天神コア屋上
リハ:社会のルール
1.VOMiT SONG
2.stereo future
3.S・H・i・T(新曲)
4. Life is beautiful
5.BiSH-星が瞬く夜に-

11/25 ももいろクローバーZ ジャパンツアー「青春」@鳥栖市民文化会館
1.行くぜっ! 怪盗少女
2.猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
3.マホロバケーション
4.ザ・ゴールデン・ヒストリー
5.泣いてもいいんだよ
6.Z女戦争
7.白金の夜明け
8.行く春来る春
9.青春賦
10.Chai Maxx
11.黒い週末
12.月と銀紙飛行船
13.天国のでたらめ
14.笑一笑 ~シャオイーシャオ!~
15.桃色空
16.走れ!
17.スターダストセレナーデ
-encore-
18.Survival of the Fittest -interlude-
19.BLAST!
20.Re:Story

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