ここが解放区~7.12 ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2019「ホームタウン」@福岡サンパレス
2018年12月リリースの9thアルバム『ホームタウン』、レコ発ツアーの福岡公演その2。3~4月はライブハウス編で各地にゲストに迎える形式。そして5月以降はここ数年のアルバムツアーではお馴染みのホール編である。個人的には4月のZepp Fukuoka公演以来3カ月ぶり。アジカンの長尺のライブをこんな短い期間で観れることなんて地方では滅多にないため、スケジュールが発表された時はとても舞い上がってしまった。普段はどれほど好きなアーティストでも1ツアー1公演しか参加しないのだけど、今回ばかりは流石に迷わず2公演である。セットリストもちょっと変えるって言ってたし!
退勤が遅かったせいで自転車を爆走させながら職場から向かったサンパレス。ステージにはきしめんのような布が無数に垂れ下がり、巨大なレースカーテンのように飾り付けられていた。「クロックワーク」のイントロが流れ出し、メンバーとサポート鍵盤・シモリョーが立ち位置に。そのままゆっくりと同曲を奏でライブは幕を開けた。ニンジャーライトがしなやかに揺蕩い、時折バックドロップのネオンサインが灯り、一気に空間を染め上げる。続くのは「ホームタウン」。ここで、きしめんたちに映像が投影される。カーテンかと思いきや、実は細切れにされたスクリーンだったのだ。
アルバム冒頭3曲を再現するオープニング。「レインボーフラッグ」のクラップはホールで鳴るとすこぶる抜けが良くて痛快だ。続くはイントロで歓声が上がった「君の街まで」。こちらも手拍子が楽しい。パワーポップアルバムな『ホームタウン』にもハマるし、ツアーソングとして聴くのが最高にグッとくる。「荒野を歩け」では、きしめんスクリーンにはアルバムのジャケットに描かれていた少女がカラフルに揺れる。アルバムレコ発のホールツアーは映像表現も含めて堅く作り込まれたコンセプチュアルなものが多かったが、今回は軽やかなムードが貫かれていたのも印象的だ。
ライブハウス編も沸かせた「ライカ」「迷子犬と雨のビート」が連続して投下。ゴッチが犬の連載をしているからこの曲たちが?と思わなくもないのだけど、宇宙で彷徨うライカを見つけ抱きしめながら並行世界へと救い出すようなイメージも湧いてくる曲順だ。ひとしきり幸福感で満たした後、サイケデリックにとろけるノイズインプロを経ての「UCLA」、そこから再びアルバムの曲順へ戻る。歌詞の内容通り、オレンジの照明がスクリーンをのっぺりと濡らした「モータプール」は特に痺れた。「ダンシングガール」から「ラストダンスは悲しみを乗せて」の”踊ること“に因んだ2曲で前半は終了。
後藤正文、喜多健介の2名からなる「場末のパブにやってきたさすらいのギターデュオ」により「サーカス」が。ゴッチはブルースハープも吹いていた。途中から伊地知潔、山田貴洋も登場。山ちゃんはグロッケンを披露。いつもは低音を担う彼による可愛らしい音色にほっこりする。ここからアコースティックパートだ。ネオアコ調に仕上げた「大洋航路」はアジカンらしからぬ爽やかさに満ちていた(山ちゃんはこの曲ではピアニカを!)。ラスト、「ブルートレイン」は削ぎ落としながらも原曲のスリリングさを損なわない見事なリアレンジ。小さなセットにおいても潔のスティック捌きは逸品だ。
きしめんスクリーンを撤収しての後半は、急にスピッツ「グラスホッパー」のカバーを披露。『Wonder Future』と同時期のレコーディングにも関わらず、キュートなパワーポップなこの1曲が突如ここで演奏されたこと、もしや『ホームタウン』へ辿り着く遠因となったのでは?と勘繰ってしまうなぁ!それ以降もコアな選曲が続く。「グラスホッパー」のサビでの"健さんの歌"を引き継いでの「八景」、そして"山ちゃんのコーラス"を引き継いでの「イエロー」と、ボーカルリレー形式の謎の流れに笑った。「イエロー」の緊張感を落とさずに「Easter/復活祭」へと突入し、会場はレッドゾーンに!
ヘヴィな曲調を畳み掛けるように「センスレス」が。フェスでは1曲目になることも多いこの曲、終盤で鳴らされるとひときわアンセム感が強まる。この曲、どのタイミングで手を挙げるか迷うのよな。僕は断然、「世界中を~」まで待機する派。そんな昂ぶりを絶やさないまま、「Standard/スタンダード」。ゴッチが叫ぶ曲はどうしたって胸が熱くなる。この曲は切なる願いの奔流だ。本編ラストはアルバムと同様に「さようならソルジャー」、「ボーイズ&ガールズ」。大きなメロディがホールいっぱいに鳴り響く。テンポは違えど、この2曲が持つ祈りのフィーリングは我々を優しく照らし出した。
アンコールでは、最新シングル「Dororo」を。2分42秒の短時間ながらも、パブリックイメージを凝縮した最新型のサウンド。ライブでの即効性は抜群だった。そして『ホームタウン』付属の『Can't Sleep EP』から、THE CHARM PARKが提供した「はじまりの季節」が。メンバー以外が作った楽曲だろうとアジカンでしかない状態にしてしまう業深さがここ最近明らかになったわけだが、その最たるものだなぁと。全編を締めくくったのは、4月のZeppと同様に「解放区」だ。その時はまだ音源化されておらず、突然のポエトリーリーディングに驚いたものだが、その完成形は実に雄大で温かだ。
「タフな時代を生き抜いて、また会いましょう」というゴッチのMCが強く残った。社会と対峙し時に鋭い言葉を投げかける彼の、その根底にあるのは音楽を信じる気持ちなのだと思う。だからこそ、何度もライブという場では自由であって欲しいと我々に言い続ける。「解放区」はそのメッセージを鮮烈に伝え、我々の肉体を揺さぶって自由の名の下に引きずり出してくれる。誰もが全開の大声で応えた<解放区 Freedom>の合唱、これからのアジカンのライブで馴染みの光景にしていきたい。本当に、<消してリライトして>以来の、そういうポテンシャルを秘めた楽曲だと思わざるを得なかった。
名前を茶化すように呼ぶ客を「うっせぇ」と一蹴しつつも、キャーキャー言われたかった話に持っていき面白く仕立てていたし、だんだん"朗らかおじさん"になってきたと語っていたし、確かにどんどん寛容なバンドになっていると思う。先日のメンバーでカラオケに行ってSMAPを歌ったというツイートなど、2011年頃の彼らを考えれば、どんないいこと?って話で。アコースティックコーナーでも、俺らが1対3になって解散しても、、などと言っていたが、明確な解散危機があった時には言えなかったジョークだ。きっとずっと続くことを彼ら自身が悟り、楽しもうとしているから今のアジカンは最高なのだ。23年目にして新たな楽器の導入など、楽しみは尽きない。末永く!
7.12 ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2019「ホームタウン」@福岡サンパレス
1.クロックワーク
2.ホームタウン
3.レインボーフラッグ
4.君の街まで
5.荒野を歩け
6.ライカ
7.迷子犬と雨のビート
8.UCLA
9.モータープール
10.ダンシングガール
11.ラストダンスは悲しみを乗せて
12.サーカス(Acoustic Set)
13.大洋航路(Acoustic Set)
14.ブルートレイン(Acoustic Set)
15.グラスホッパー (スピッツ Cover)
16.八景
17.イエロー
18.Easter/ 復活祭
19.センスレス(日替わり)
20.Standard/スタンダード(日替わり)
21.さようならソルジャー
22.ボーイズ&ガールズ
-encore-
23.Dororo(日替わり)
24.はじまりの季節(日替わり)
25.解放区 / Liberation Zone
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