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クリープハイプ「こんな日が来るなら、もう幸せと言い切れるよ 3月30日」@福岡サンパレス

クリープハイプのメジャー5thアルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々」、そのレコ発ツアーの追加公演、その福岡編である。ツアータイトルは「こんな日が来るなら、もう幸せと言い切れるよ」。ここ最近のクリープハイプ、あらゆるネーミングに多幸感が溢れまくっている。当初は、逆張り的なものだろうと思っていたのだが、アルバムを聴けばこの題は真っ直ぐに名づけられたものだと分かる。メジャー以降の荒波に自ら飛び込んでいくような活動を観続けている身としては、どこか安らいだ気持ちにもなれる作品だ。


入場SEもなく、さっと位置についた4人。尾崎世界観の弾き語りで始まったのは「exダーリン」。1年前の「懐かしい曲も歌うから」ツアー福岡公演、アンコール最後に照明を全て落として暗闇の中で弾き語りで歌ってくれた曲である。まるでその続きだ、、、と思うしかない。今回は1サビ終わりでバンドインするアレンジだ。1年前のラストシーンのその先が鳴り響き、気分は超エモーショナル。「自由に楽しんでください。盛り上がっても盛り上がらなくても、そこにいるって分かるので」というMCが場を形作ってく。

爽快なイントロを掻き鳴らし、アルバムタイトルを擁する「泣き笑い」。こちらも1年前のツアーで新曲として披露されていたな、と。音源化、そして昨年のツアーでの演奏も経て、上質な脂が乗りきっているグルーヴだ。その後も、アルバムのトリガーとなった「イト」、しなやかでポップな「一生のお願い」と、開放感あるアルバム曲が次々と演奏されていく。そっと飛び跳ねたくなるような心地よいリズム。とりわけ「お引っ越し」の別離をも晴れやかに愛おしく描いた様はホールを温かな切なさで満たしてくれていた。

また、今回の席が3階の最前列どセンターという滅多にない見晴らしだったので、4人全員の動きを視界に入れっぱなしで観れる喜びがあった。そんなことを思っていると、どっしりとしたリズムを土台に構えて「炭、酸々」という突然のレア選曲!カップリングにも適切なタイミングでしっかり光を当ててくれる良いバンドだ。特に「さっきの話」は、新作とも呼応するストレートな優しさが刻まれていたことにハッとした。何気ない時間に一瞬よぎるような、"何でもなさ"を歌い続けてきたバンドなんだと強く実感した。

今日はなんだか 余計な事ばかり話し過ぎてしまうわどうでも良い事 探してみるけどどれもこれも全部が大事な物ばかりで困ってしまうわ                                           クリープハイプ「さっきの話」

サビを弾き語る形で突入したリード曲「栞」。中盤なのに銀テープも飛び、最早クライマックスでも構わないという最高潮の盛り上がり。季節もぴったり、感傷を否応なしに駆り立てられいく。そして<2人ならきっとうまくいく>と信じていた「オレンジ」へと繋げれば、そこに自然にドラマが生まれてしまう。愛を交わすことへの悲喜こもごもはクリープハイプの音楽の根底にあるもの。そんな流れを「百八円の恋」の"痛さ"でトドメを刺す。癒えないし、言えない傷のこと。叫びにも似た声に託されたその思いに気圧された。

前半の「かえるの唄」「目覚まし時計」に続き、この日3度目となるカオナシメインボーカル曲「私を束ねて」をスイッチに、「社会の窓と同じ構成」「社会の窓」「ウワノソラ」という、ライブハウスであれば大暴れ必至な選曲が連投されていった。後のMCでカオナシも語っていたが「ワーッとした曲をホールでやるのはいいですね」というのも納得である。もみくちゃにされず、彼らのエッジの部分を堪能できるのも指定席ならでは。素晴らしい見晴らしの中、4人が沸々と滾る思いを演奏にぶつけているのを目撃できた。

「いつも他の人が歌わないことを歌っているバンドが、たまには思いをストレートに伝えてもいいんじゃないか」という思いで、今回のアルバムを作ったことが明かされたMCから、ツアータイトルを擁する「燃えるごみの日」を丁寧に歌い上げる。そしてポジティブなエネルギー溢れる「陽」へ。体がぽかぽかしてくる。その後に鳴り響いた「イノチミジカシコイセヨオトメ」からは、焦燥感よりも、切実な"明日"への渇望が聴こえてきた。<生まれ変わってもクリープハイプが良い>という歌詞改変、そりゃ胸打つだろ!

「助かるポーネ」という現場に居た人にしかニュアンスの伝わりづらいワードも飛び出しながら、最後の1曲へ。「アンコールはありません」と前置きし、ギターを弾きながら「家に帰って1曲でも多く残っていたらいいな、と思います。忘れてしまうことも多いけど、でもそれはそれでいいな、と。クリープハイプのお客さんは忘れることも大切にできる人たちだと思うので」と語り、オリコン7位を記録して2012年当時、彼らの状況を加速させた「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」が歌われる。

2013年のツアーで演奏された時と同じ、序曲をつけての披露。<最後の曲だね 君の歌が本当に好きだ><アンコールはどうする 君の事だからきっとないね>という、状況をそのまま映し出す歌詞。「俺ももう35歳だよ」と語っていた尾崎が歌う<僕も随分年をとったよ こんな事で感傷的になってさ> というフレーズがまた、メジャーデビュー7年、今のメンバーになって10年という歴史がまざまざと投影される。アルバムとは関係のなく、エンディングには意外な選曲に思われたが、長く歌い続けることで生まれた滋味がそこにはあった。MVと同じく最後に赤い紙吹雪が舞う演出が為され、幕は下りた。

尾崎自身が「クリープハイプのピークは2013年だ」と語っていた頃があり、この日も「4年前に同じ会場でやった時は全然埋まってなくて、」と語るなど、あらゆる角度から過去との対峙を行い続けているバンド。しかし続けることで、今作のような直球でも広く受け入れられるアルバムが完成し、4年越しのサンパレスは立ち見まで完売(「あんぱんなら相当評価されるくらい詰まってる」とのこと)であった。どんな季節も糧にして、未だに順調に上昇しているのだから、エゴサも気にしちゃう姿のままで、在り続けて欲しい。

クリープハイプ「こんな日が来るなら、もう幸せと言い切れるよ 3月30日」@福岡サンパレス セットリスト

1.exダーリン
2.泣き笑い
3.イト
4.一生のお願い
5.炭、酸々
6.禁煙
7.おばけでいいからはやくきて
8.かえるの唄
9.さっきの話
10.グルグル
11.目覚まし時計
12.お引っ越し
13.栞
14.オレンジ
15.百八円の恋
16.私を束ねて
17.社会の窓と同じ構成
18.社会の窓
19.ウワノソラ
20.燃えるごみの日
21.陽
21.イノチミジカシコイセヨオトメ
23. おやすみ泣き声、さよなら歌姫

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