
でかい音 ひくいステージ はやい時間 やばいライブ~2019.12.21 Base Ball Bear「Guitar!Drum!Bass!Tour」@小倉FUSE
2019年2度目の全国ツアー、そのセミファイナルである小倉公演に行ってきた。1月の1stEP『ポラリス』、2ndEP『Grape』を引っ提げ、また『ポラリス』のCD+DVD盤のリリースも行うという、自主レーベルならではの動きを見せ始めたツアーでもある。小倉公演はこれで3度目だが行くのは初めて。もう6年くらい1000人キャパのDRUM LOGOSで毎年観続けているので、小倉FUSEのひくいステージと天井に驚く。何とか関根さん側からナナメにステージを見渡すという、今まで観たことないアングルの場所を位置取ることに。
17:00という大変はやい時間にきっかり始まったライブ。オープニングナンバーの「試される」、1年に渡って披露されてきただけあって演奏は研ぎ澄まされまくり、フロアにも定着していることがよく分かる。2曲目「Stairway Generation」でも顕著だが、やはり関根史織のベースプレイがどんどん存在感を増している。舞台上でも関根が可動域も動線も最も自由度が高く、盛り上がりを先導する役割を果たしているのだ。堂々たるステージングを繰り出す関根の姿に3ピース体制を本格始動させて2年という歴史を強く感じた。
軽い挨拶を挟んだ後、『Grape』のリード曲「いまは僕の目を見て」の清廉なイントロが掻き鳴らされる。音源では流麗で染み入るような印象だが、ライブの場だとその誠実な想いが直に届いて熱い気持ちになる。秋をテーマにしながらも冬となってしまった<少し季節を超えてる>今にぴったりな「彼氏彼女の関係」も久々にツアーメニューに入った。キャッチーなリフ+四つ打ちのプロトタイプなこの曲を「抱きしめたい」のカップリングでのリテイク以来、13年ぶりの再編曲!よりさっぱりとした仕様もしっくり来ていたし、これ程青々しい曲を未だにフレッシュに歌える小出の喉にも感服する。
間髪入れず「不思議な夜」。リズム隊が主役になりつつあった2015年『C2』の収録曲であるため、この体制にもよく馴染む。弾む気持ちを乗せたようなサビ裏のコーラス、一緒に歌いたくなるのよね。この後のMCタイムでは、2019年を振り返る話から、堀之内大介からの感謝、関根の便乗感謝が繰り出される年末総括的な流れに。こちらこそだよ!と言いたかった。小出さんはほぼ何も覚えていなかったけれど、感謝のくだりで、「皆さんへのもっと大きな感謝がきっとこの先に待ってる」と口にしていたのが非常にグッときたし、その後で2019年のテーマソングたる「ポラリス」が鳴らされたのもね!
中盤「Flame」では空気を一変。ほろほろとした感傷が会場を満たした後、「Summer Melt」が歌われる物語性の高い曲順も完璧である。喪失感をコーヒーに融けていく氷に託したこの曲が、「Flame」における悲しみの受容とも共振して堪らない気分になった。とはいえ、そのしっとりとした空気を次の「ダビングデイズ」で一気に反転させるのも今のベボベのモードに沿っている。攻撃的なテンションを引き継いだ「PARK」はリリース時こそ異色のラップナンバーと称されたが1年間の鍛錬を経て、フロアにうねるような興奮を巻き起こすようになった。このノリはベボベの新しい武器となったのだ。
5月にマネージャーが変わり、制作チームも一新されたベボベ。不安も多かったようだが、しいたけ占いによれば2019年はいて座にとって潮目の年になるという言葉を信じて、今までと違う流れに飛び込んできたと語った小出。「苦しい時代ですが2020年代も頑張っていきましょう、俺は頑張るよ!」という言葉から名曲「changes」の眩いイントロが。何度となく重要な節目で鳴らされ、様々な意味を引き連れて育ってきた曲だ。3人ver.になった曲はよりずっしりとした重みを持つものに変貌し、新たな輝きを纏っていた。
終盤、狂暴なグルーヴがじわじわと絶頂へと誘っていく「十字架You and I」では関根史織がステージから降りて近距離で凶悪な低音を浴びせてくる。最新曲であるはずの「Grape Juice」もこの流れを形作る必殺ナンバーの一員に抜擢されて大活躍。意味性を排除してガシガシとアゲ倒してくれた。小倉FUSEの密閉度も相まって、いつもより遥かに体温が上がっている。いつの間にか「LOVE MATHEMATICS」の印象的なフレーズが鳴らされ、ライブは佳境へ。意味のない曲を2連発されるとだんだん頭のネジが外れていく。LOGOSで観る時とは一味違う身体に響くでかい音で、やばいライブが進んでいく。
ここに「CRAZY FOR YOUの季節」がドロップされる容赦ない構成。あの高速でパワフルなリフを、小出は涼しい顔して繰り出してくる。顔と音が合ってないのよ!アウトロには新しいギターフレーズも加えて熱狂を引き延ばしていく。新たなアイデアも貪欲に既発曲に取り入れる、今のスタンスを指し示していた。ヘトヘトになった体を癒すように、軽やかな「セプテンバー・ステップス」で締めくくったのもとても新鮮だった。アンコールで仕切り直す前にチルな時間を挟む優しさ。大人になったベボベの小粋さを感じる。
アンコールでは物販紹介の後に(僕はキャンバスリュックを買いましたよ)、「我々のデビュー曲を」と爽やかな風を運ぶ「GIRL FRIEND」を演奏。オーラスとなった「ドラマチック」は言わずとしれた代表曲だし、思い返せばこの日披露されたEP以外の過去曲はベボベにとって節目となった楽曲が多かった。重要曲を3人でリアレンジし、最新曲と共に現場で仕上げていく。そんな意義を持っていたのがこのツアーだったのではないだろうか。3ピースのベボベ及び新たに設立したDGP RECORDSのローンチを果たした勢いのままに、来月には新アルバム『C3』が届けられる。ツアー中に制作されていたこのアルバム。一体どんな音が鳴っているのか。早くごくごく飲みほしたい。
2019.12.21 Base Ball Bear「Guitar!Drum!Bass!Tour」@小倉FUSE セトリ
#コンテンツ会議 #コラム #エッセイ #音楽 #邦楽 #日記 #備忘録 #ライブ #ライブ日記 #ライブレポート #音楽コラム #ロック #バンド #邦ロック #BaseBallBear #ベボベ #ポラリス #Grape