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2021年4月の記事一覧
想い巡る「街の上で」
見知らぬ人に呼び止められ、突然身の上話をされて、それが随分と妙に思えても、「あぁそれほどまでに募る想いがあったんだ」と思えるのではないだろうか。そんな映画だったと思う。今泉力哉監督、2020年の「mellow」以来のオリジナル脚本作「街の上で」は、人とその想いが巡りゆく物語である。
下北沢の古着屋の店長・荒川青(若葉竜也)を主人公に据え、その元恋人・雪(穂志もえか)、近所の古本屋店員・田辺(古川
メンタルヘルスと社会構造とポップカルチャーの話
精神科医として1年間働き、何人もの患者さんを診てきて強く思うのが、この社会を健康なままで生きることはかなり困難なことであるということ。優しく繊細で、様々なことに気を回し、耐え忍ぼうとする人ほど心が疲れきってしまうということ。そして、図太く独善的で、誰かに気を遣わせ、他人を意識できない人が、無自覚に人を傷つけ、知らぬ間に病因となっていること。
精神科の問診はまず早い段階でこれまで患者が歩んできた人