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ぼくが「とある魔術の禁書目録」の原作を読んで欲しい理由

こんにちは、シャントです。

いきなりですが、皆さんは「ライトノベル」読んでいますか?僕はいくつかの作品を読んでいますが、一番発売を楽しみにしているのはやはり「とある魔術の禁書目録」というシリーズです。2020年9月現在までで50巻近くが発売していて、僕はこのシリーズの原作読者が増えてほしいと常々考えています。という訳で今回はこの「とある魔術の禁書目録」の原作をなぜ読んで欲しいのかを含め、色々と述べていきたいと思います。良ければ最後までお付き合いください。

理由①地の文の良さ

「とある魔術の禁書目録」(これ以降は便宜上禁書とする)の原作の魅力を語る上で欠かせないのが地の文である。当たり前だが、アニメではキャラクターのセリフがメインとなるため、こうした地の文というのはキャラクターの動きなどで演出されている。禁書の場合たまにキャラクターが原作の地の文の内容を含んだセリフを話すことがあるが大部分が会話部分しか話さない。しかし、多くのテキスト原作の作品がそうであるように禁書は地の文にも魅力が詰まっている。それを見ていこう。

まず例として挙げたいのは旧約20巻での一方通行VS上条当麻である。この場面では一方通行視点で戦闘が進む。そもそも禁書は三人称形式で書かれ、他の人物視点に移動する「神の視点」で描写されるが、基本的には主人公一人の視点で進み、その多くは上条当麻の視点となっている。しかし、この場面では上条当麻が登場するにもかかわらず、その視点を第二の主人公である一方通行に譲っているのである。

当然、一方通行目線で展開されるため、感情や思考が数多く地の文に反映されるわけだが、注目したいのは相対する上条当麻が明確な敵として描写される点だ。この時点での一方通行は上条当麻の名前を知らないため地の文でも上条当麻はその名前ではなく、「無能力者の少年」となってる。これにより、超能力者である一方通行との対比になっているが、同時にこの場面で一方通行は「ヒーロー」としての上条当麻に八つ当たりをしており、「無能力者の少年」ながら数多くの妹達を救ったヒーローと学園都市第一位にも関わらず今目の前で苦しむ少女を救えない一方通行との対照的な関係も表現されている(ように思える)。読んでいると一方通行の絶望感や無力感がよく伝わってくるのだ。これは一方通行視点での地の文だからこそだと言える。

さらに、この一方通行の敵としての描写によって上条当麻が持つ恐ろしさというのがまた別側面で表れている。とあるシリーズを少しでもかじったことのある人なら分かると思うが、基本的に上条当麻という人間は非常に諦めが悪く、どんな苦境に陥っても心を折らない。作品を鑑賞しているこちらとしても彼のそうした振る舞いには心が震わされることが多い。では、彼と相対する者からの視点ではどうか。先ほどから述べているこの場面で一方通行は決して諦めることない上条当麻に恐怖しているのである。禁書の戦いとは信念のぶつかり合いの側面が大きいため、上条当麻のような何度でも立ち上がる存在というのは戦う相手にとって本当に恐ろしいのだ。一方通行視点での展開によって上条当麻が「敵」として描写された場合の恐ろしさが効果的に現れてくるのではないだろうか。

アニメでは上条当麻が一方通行との戦闘に巻き込まれるという構図のように見える。個人的にこれもすごく好きで成り行きながらも一方通行へと言葉を叩きつける様子が非常に上条当麻らしいところではあったので。しかし、原作での描かれ方はまた別であるため、このシーンをまた別の観点から味わえるのだ。こうしたところに原作、ひいてはそれに含まれる地の文の良さが内包されていると私は考えている。

理由②小説における「分かりやすさ」

ここでいう「分かりやすさ」とはアニメと比べてのものである。はっきり言っておくと禁書のアニメ化というのはそこまで評判がいいわけではない。特に三期は二クールの話数の中に原作小説9巻分が詰め込まれているために、展開が早すぎたり尺が足りていなかったりと原作読者からの評判はあまり高くないというのが現実である。僕自身こういう気持ちがやはり少なからずあり、「尺がもっと足りていれば…」と何度も思ったことがある。

そのため、多くの原作読者は「原作小説を読んでくれ!」と思っているのではないだろうか(と私は勝手に考えている)。当たり前の話だが、原作が小説である以上、小説を読めば何もカットされていないまっさらな状態の作品を読むことができる。これによって、カットされたことや展開が早いことによって生まれる理解の困難を避けられるのではないだろうか。小説であるために自分のペースで読み進められることもこれを手助けするだろう。アニメと違うのは時間に縛られないということであり、禁書は内容的な複雑さを含む作品であることから、こうした小説媒体が一番作品を味わう上では適しているように思える。

また、これは感情的な話になってしまうのだが、アニメのみを見て禁書についての評価を下してほしくないという思いも原作読者の多くが抱いていると思う。かくいう僕も例にもれずそうであり、アニメ部分(特に三期範囲)を見て禁書を「難しくてよく分からなかった」という感想を抱いた人にこそ原作小説をゆっくりと読んで理解を深めて作品世界を味わって欲しいと考えている。

*補足しておくと、禁書は描写や設定の複雑さを考えるとそもそも映像化に向いている作品ではないと私は考えている。しかし、三期に比べ一期や二期は尺が足りなさすぎるということなどはなく、評判も悪くない。僕自身も三期に不満は多かれ少なかれあるものの非常に嫌っているというわけではなく、声優の方々の熱演や映像として見たかった部分が見ることができたことなど好ましい部分もとても多い。これは三期より出来のいい(と僕が勝手に思っている)一期や二期に関しては言わずもがなである。本記事は安易にアニメのネガキャンをし、小説の持ち上げをすることを目的とするものではなく、あくまで小説を読んで欲しいということを紹介するものであるということを念頭に置いておいてほしい。

理由③未アニメ化範囲の魅力

禁書のアニメ化された範囲と言えば、1巻から22巻までのいわゆる「旧約」と言われる部分である。しかし、現時点では「新約」シリーズとさらには「創約」と呼ばれるシリーズにまで続いており、未アニメ化範囲は旧約よりも多い25巻となっている。これを読んでいる方の中には「旧約まで読んでいたけど、新約の途中で脱落してしまった」という方もいるかもしれない。はっきり言おう。非常にもったいない。リタイヤするには惜しいほど、新約シリーズには魅力が詰まっているのである。

まず一つ目は本格的に科学と魔術が交差を始めるという点だ。新約では今まで学園都市でも上条当麻ぐらいしか知っていなかった魔術の世界に他の主要キャラも入っていくことになる。魔術の存在や仕組みを知っている、知っていないに関わらず、学園都市の面々が表の世界では秘匿されているという魔術に関わるというだけで旧約とはまた違った面白さを感じることができるのではないだろうか。

二つ目としては新約シリーズが「尖って」いるということがある。これに関しては欠点というかとっつきにくさにも繋がる可能性があるが、ここはあえて魅力として挙げておきたい。旧約が王道のアツさを多く含んでいたのに対して、新約は王道から外れた、少し変わったあるいは斬新とも言うべき展開になる場合がそこそこある。あとがきを読むとわかるが、新約の展開には作者の鎌池和馬による「挑戦」が表れており、そういう意味での「尖り」が発生しているのだろう。例えば、新約3巻はほぼ全てがカメラ目線で進む。読んだ当時はかなり読みにくかった印象があるが、あれは新約の「尖り」がよく出ているように思える。もちろん、新約でも禁書のアツさは健在であるため、そこは心配ご無用である。

三つめは旧約から持ち越された伏線が徐々に回収されているという点である。アレイスター・クロウリーの過去、上条当麻の右手の秘密、学園都市の作られた理由などなどこれまで読者が気になってきた内容が多く明らかになるのだ。中には更なる謎を呼ぶものもあるが(禁書にありがちである)、今まで読者間で考察されてきた謎が明らかになるのはやはり興奮するものがあるだろう。そうした伏線が回収される展開を含め、禁書を途中まで読んでいた人たちにこそ、それらを味わって欲しいと私は思っている。

他にも新約シリーズの魅力は多く存在する。ここで挙げた以外のものに関しては実際に読んで感じていただきたい。

おわりに

さて、禁書の原作についてここまで語ってきたわけですが、上手く説明できていたでしょか。こんなに原作推してますけど、僕自身新約アニメ化は来てほしいし来るまでずっと待っているつもりです(オタクは待てる生き物であると思っているので)。やっぱり映像化で見たい部分も多いんですよね、一端覧祭編の怪物たち集合や新約9巻の何もない上条家とか。なんで新約アニメ、どうかお願いします。

禁書って原作の巻数はめっちゃ多いし話はやや複雑と読み進めるのにしんどい要素もあります。しかし、それを差し引いても魅力に溢れたものであるというのも事実だと考えています。そういえば、公式からの原作供給が年に数回ちゃんとあるというのも忘れてはいけませんね。ラノベ界では非常にありがたい。というわけで、アニメは見た方、原作を途中までは読んだ方、様々いるとは思いますが、この記事を読んだ後に原作を追う気になっていただければ僕としてはめちゃくちゃ嬉しいです。とあるの沼に沈みながら待っています。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。それでは、今回はこのへんで終わりにしましょう。ではまた!

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