マハーバーラタ/4-21.月食の終わりに輝く満月
4-21.月食の終わりに輝く満月
翌日、それは美しい朝だった。
パーンダヴァ達は朝早く起き、香り付きの水で沐浴した。
柔らかいシルクの服を身にまとい、光り輝く宝石を身に着けた。
ヴィラータの宮廷に入り、ユディシュティラは玉座に座った。ドラウパディーはその隣に、四人の弟達はその周りに座った。
しばらくするとヴィラータ王が大臣や召使いたちを連れてやってきた。
自分の付き人カンカが玉座に座っているのを見て驚いた。
「カンカ。これはどういう意味だ? あなたにはこれまでいくつかの特権を認めてきたが、王の服を着て玉座に座ることを許した覚えはない。命が惜しいなら説明するんだ」
ユディシュティラは怒っているヴィラータ王に微笑むだけで、何も言わなかった。
アルジュナが話し始めた。
「マツヤ国王ヴィラータよ。言葉に気をつけなさい」
「ん? あなたはブリハンナラー? どうしたんだ、男の格好をして。どうなっているんだ、説明してくれ」
「ここに座っているお方はインドラの玉座にふさわしい方だ。彼はこの地上に生まれた最も偉大な方、王の中の王、パーンドゥの息子、ユディシュティラだ。太陽が回り続ける限り彼の名声はこの世界に生き続ける。真実と正義が宿る方だ。その彼があなたの玉座に座ることで名誉を与えています。何かご不満かな? 先ほどあなたはこの玉座に座るべきではないと言ったが、まだそう思うか? 言ってみなさい」
ヴィラータは驚きでしばらく黙ったまま立っていた。
「彼がカンカ、ではなくユディシュティラ? もしそうなら彼の四人の弟達はどこにいるというんだ? アルジュナは? ビーマは? ナクラとサハデーヴァは? 火の儀式で生まれたというドラウパディーは? 教えてください」
アルジュナはヴィラータ王に全員を紹介した。
ビーマがアルジュナを紹介した。
ちょうどその時ウッタラクマーラがやってきた。
「おお、神のおかげで私は自由に話せます。戦場で起きた真実を全世界に伝えられます。私達の国を守る為に戦ってくれたのはアルジュナでした。
私は偉大なアルジュナの御者を務めるという名誉を授かりました」
彼はパーンダヴァ兄弟の足元にひれ伏して喜びの涙を浮かべた。
ヴィラータ王はアルジュナを抱きしめた。
「神が私に味方した。神があなたをここに遣わして我が息子の命を救ってくれた」
彼はユディシュティラの足元にひれ伏した。体全体が涙で濡れた。
従者からチャマラを受け取ってユディシュティラを扇ぎ始めた。
ユディシュティラの足を洗った。
「ユディシュティラよ。私はこの地上で最も幸運な人間です。あなたが一年間この町にいてくれたことで名誉を与えてくれました。この宮廷はあなたという慈悲深い存在のおかげで新たな輝きを得ました。
どうかこの国を受け取ってください。私はあなたに仕えます。
きっとあなたはその限りない優しさと高貴さで、私から受けたたくさんの侮辱を許してくれるに違いありません」
ユディシュティラはヴィラータ王の右手を取った。
「怒るどころか感謝しかありません。この一年間ほど楽しかった日々はありません。あなたはよそ者である私達に愛情をもって接してくれました。あなたという大切な友を得られて幸せです」
ヴィラータ王はユディシュティラの優しい言葉に感激した。
ウッタラクマーラが言った。
「父よ。私はこの一年間クンティーの息子達と一緒に過ごすという幸運に恵まれました。そしてあなたは昨日、カウラヴァ達との戦いで助けてくれた人にウッタラーを捧げたいと言いました。その約束を果たしてはどうですか? 英雄アルジュナの妻として迎えてもらいましょう。私が妹を連れてきます」
ウッタラクマーラ王子は妹である王女ウッタラーを連れて戻ってきた。
ヴィラータ王は言った。
「我が国を救ってくれた英雄アルジュナよ。この娘はあなたがこの国に来てからあなたの生徒でした。今度は妻として受け入れていただければ大変光栄です。
ユディシュティラ王よ。どうかこれまでの私達の間違いを許してください。そしてあなたの弟の花嫁として我が娘を受け取ることで、私達を許したことを示してください」
その提案に対する返事に困ったユディシュティラはアルジュナの方を見た。
アルジュナは立ち上がって言った。
「兄上、マツヤ王国を手に入れる必要はありません。私達に必要なのは、戦争が始まった時に味方してくれるという約束だけです。
そして王女ウッタラーが私に捧げられました。愛ある提案に感謝します。
それはありがたいのですが、私は彼女を妻としては受け入れることはできません。彼女は私の生徒だったので娘のようなものです。その彼女を妻とすることはできません」
その言葉を聞いたヴィラータ王とウッタラクマーラ王子には失望の表情が浮かんだ。
アルジュナは微笑んで言葉を続けた。
「ですが、そんなに残念がらないでください。私は彼女を受け入れます。これまでも私の娘でしたし、これからも私の娘とします。
つまり、私は彼女の義父になります。我が息子アビマンニュの花嫁とするのがふさわしいと思います。彼はスバッドラーの息子、つまりクリシュナの甥にあたります。彼なら私の生徒の夫としてふさわしいです」
アルジュナはウッタラーに微笑みかけ、膝に座らせた。
「我が生徒ウッタラーよ。今日からあなたは私の娘です」
ユディシュティラはアルジュナの言葉に喜んだ。
そこへハスティナープラから使者がやってきた。
その場に居合わせた皆で伝言を聞くことにした。
「これはドゥルヨーダナ王の言葉である。
『パーンダヴァ兄弟の一人アルジュナが13年目が終わる前に私達によって発見された。よって、あなた方はもう12年森へ行くように』
以上があなた達への伝言です」
ユディシュティラは大声で笑い続けた。
「あなたの王の所へ戻り、私からの伝言を運びなさい。
『13年目が終わっていたかどうか、あなたの尊敬する祖父ビーシュマに尋ねなさい』
この質問の答えを準備するよう彼に頼むのです。準備ができるまでは私達のことは放っておきなさいと」