北京のコロナの話少し、中国知財 現地知財メディアが紹介する2022年の事件
コロナの感染爆発が少し落ち着いた北京です。現地にいる私の個人的な感覚としては、2022年10月中旬に現政権の3期目が確定したあたりから、コロナ政策は変わらないと人民が失望し、開き直ったためか、はたまた、オミクロンの感染力が強すぎたのか、感染がくすぶり始め、厳重な対応の甲斐なく、11月下旬には実質的に制御不能状態(陽性患者が出た建物を封鎖すると、封鎖する団地やスーパーが多すぎて、最も基本となる食料の流通にすら支障が出る)となり、デモも相まって、政策転換した、、、ように思えます。現政権にとっては、厳重な対応が限界に来ていたので、却ってデモを理由に政策転換できて良かったのでは、、、とも思えます。まあ、これで、日本と同じように、政府はコロナ拡大になす術がなくても、死者が出ようとも、政府が批判されない国民のコンセンサスが出来上がったように思います。
で、色々日本のメディアでも騒がれていますが、11月末頃に政策転換してからは、あっという間でした。これまで3日おき、時には3日連続で、コンビニ並みに乱立されたPCR検査ステーションでPCR検査を受け続けていたのですが、ある日突然、検査ステーションの数が減りました。そのため、検査ステーションには長蛇の列ができ、おそらくこれも一因となって、感染爆発が起きました。
私自身も、11月中旬から基本リモートワークで外出するのはPCR検査くらい、というかなり感染を意識した生活をしていたにも関わらず、12月上旬にはあっさりと感染してしまいました(検査キット陽性)。そこから家族全員に感染が広がるのも時間の問題でした。職場の同僚や友人、その家族も陽性の報告が相次ぎ、北京市で5割以上が感染した、というのは、私の周囲を見る限り全く違和感ありません。とにかく、家族も、親戚も、同僚も、友人も感染していて、感染に無縁な人を探すのほうが難しいくらいです。
12月第2週あたりが新規陽性のピークだったようで、今週は人通りも戻りつつあります。ラッシュアワーの19時台の地下鉄は、平常時の2/3程度かな、という印象です。
葬儀場に車列ができているという情報もあります。ただ、やはり多くは基礎疾患のある高齢の方が多いので、死者が増えたので経済に大きな混乱が出る、、、かどうかは一概に言えないと思います。このへんは高齢者の方が多い日本と、ちょっと考え方が異なるかもしれません。
人民も、制限のない自由を得た代わりに感染予防、対策は自己責任になったことが分かっているので、できる限りの対応をしています。中国の方は、上の政策に下が翻弄されることは、当たり前のことだと思っているので、各人が自らの考えに沿って行動しています。
さて、一応病状から回復し、業務も一段落したので、中国知財ウォッチングを続けます。国家知識産権局のサイトでは、特に目新しく興味を引くトピックがなかったので、今回は、現地知財メディアIPRDailyが12月30日に発表した、2022年のホットな知的財産事件(https://mp.weixin.qq.com/s/ltqYHbwIdNYXviYVe6UPEQ)を、簡単にまとめてご紹介したいと思います。
1.リチウム電池専利訴訟:業界で有名なリチウム電池企業寧徳新能源(CATL)が珠海冠宇を今年中国と米国で訴えている中国の訴訟は立案されたが開廷審理はまだお子小名割れておらず、係争専利は6件、訴額合計6600万元である。
CATLは他にも中国国内企業を不正競争紛争で訴え、和解しているとし、リチウム電池リーダー企業が知的財産紛争で活発な動きをしている、としています。
2.国内外の自動車メーカーによる知財紛争:AudiがWeilaiをドイツで商標権侵害で訴え、Weimaと吉利による営業秘密紛争が注目を集めている。
3.有名人に関する知的財産紛争:日本ではブルース・リーの名前で知られる李小龍の親族が、中華料理ファーストフードの全国チェーンを展開する「真功夫」を肖像の人格尊重と財産利益を侵害したとして訴えた、というもの。11月になって、国家知識産権局が真功夫公司が有する20件の図形商標を無効とする裁定をしており、現在法院の審理待ちである。
→北京でもあちこちにある、中国料理のファストフード(ホイコーローセットとか)チェーンの「真功夫」ですが、確かにブルース・リーっぽい肖像が店内に掲げられています。記事にも書いてあるように、多くの現地の方は真功夫公司がブルース・リーと何らかの関係があると認識するように思います。権利関係にうるさくなかった時代に使い始めて、今になって問題が出てきた、、、ように感じます。
4.「譚談交通」著作権侵害問題:現地SNS、動画プラットフォームの、WeiboやBILIBILIなどで動画を公開していた作者が、全ての動画を削除し、該動画を素材とする二次作品の動画もクレームを受けて取り下げられた、という事件です。記事にも書かれていますが、家内にも聞いたところでは、投稿者は警察官で、自分が交通関係の法執行を擦る際に動画を撮影し、その本人のユーモアのセンスが大衆受けして、人気があったそうです。しかし、法執行の対象者も撮影されていたため、同意を得ずに第三者を撮影したことが問題になったようです。IPRDailyの記事によると、投稿者は四川の法律事務所の声明をWeibo上で公開して、動画を新たにアップするとしたそうです。
5.巨大企業の知財宣伝:
ファーウェイが「専利許諾業務レポート」を公開したこと、シャオミが知的財産ホワイトペーパーを公開したこと、OPPOがファーウェイとグローバル特許クロスライセンスを締結したこと、が取り上げられています。
OPPOは、本ノート記事でも紹介したように、シャープとの標準必須特許ライセンス訴訟で、中国で訴訟禁止令を勝ち取るなど、かなり知財に関して積極的に行動している企業ですね。
グローバルに競争する中国企業にとって、知財紛争は非常に身近なものになっています。その一方で、商標権、著作権侵害件数は相当な件数に及びます。このような高度な知財紛争と、模倣品海賊版対応のような従前の侵害事件が同居し続ける、、、これが中国知財の特徴といえそうです。