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中国知財 判例解説(商標・懲罰的賠償) 知的財産懲罰的賠償典型案例No.6 欧普照明股份有限公司与广州市華塑料制品有限公司侵害商標权紛争再審

中国では2021年6月1日の改正専利法の施行により、専利、商標、著作権、不競法の全てで、懲罰的賠償制度が導入されました。権利者としては賠償額の上昇に繋がる制度の導入は歓迎ですが、被告となる可能性を考えると、その制度の詳細が気になるところです。

懲罰的賠償制度について、最高人民法院は、2021年3月に知的財産民事案件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈[2021[ 4号を出し、その適用要件などを説明しています。また、最高人民法院は、やはり2021年3月に、知的財産民事案件における懲罰的賠償の適用典型案例 6件を発表しています。今回はこの中から、No.6の欧普公司与華昇公司侵害商標权紛争案[(2019)粤民再147号,広東省高級人民法院]をご紹介します。

本件は商標権侵害事件で、一審、二審では非侵害と認定されたものの、広東省高級人民法院の再審により商標権侵害が認定されました。懲罰的賠償の計算では、まず 1.従来の損害賠償の考え方で損害額の基数を確定する、2.侵害の故意性及び情状の深刻性をそれぞれ検討したうえで倍数を確定する、3.基数*倍数により懲罰的賠償額を確定する、という流れで行われました。以下、順番に見ていきます。

1.損害額の基数

原告は複数のネットモールのうち、天猫旗艦店の情報しか入手できず、被告は京東の販売収入データしか提供しなかったため、法院は原告が証拠を提出して主張した、「商標ライセンス使用料の倍数」を基準に損害賠償額を認定することを許可しました。具体的に、
(1)商標ライセンス契約とそれを履行した証拠、及び商標の高い知名度から、契約記載の36.5万元/年を採用し、
(2)被告が生産品質不合格の行政処罰を受けた2016年2月から、二審判決の日まで(1.75年)を、損害賠償が必要な期間とし、
(3)商標ライセンス契約では、販売業者の経営場所のみでの使用、宣伝が許諾されているのに対し、被告の販売方式はオンライン、オフラインで全国更にはグローバルであり、商標使用の程度と範囲が大きいとし、少なくとも商標ライセンス使用料は36.5万元*2倍であるとし、これに(2)の期間1.75年を乗じて、127.75万元を基数としました。
中国では、権利者の損失や、侵害者の利益の具体的な計算が難しく、ほとんどのケースで「法定賠償額」が採用されているため、本ケースのように商標ライセンス使用料が損害額の基数となるケースは稀だと思います(その意味では、本案例は「典型案例」というよりは「指導案例」的なものと思います)。

2.倍数の認定
続いて、倍数の認定です。上述したように倍数の認定では、故意性の認定と、情状の深刻性を認定します。上述した司法解釈は、これらの認定について、いくつかの考慮要素を記載しています。

(1)「悪意」について、
i) 被告は同一地区同一業界の事業者として、広東著名商標、中国馳名商標に認定された原告商標を明らかに知っている、
ii)被告の商標出願が原告の係争商標により拒絶されたにも関わらず、使用を続け、ただ乗りの意図が明らかである
として侵害者の悪意を認定しました。

(2)「情状が深刻」について、
i) 侵害を停止せず、権利侵害製品の種類が多く、販売数量も巨大である、

ii) 生産規模を拡大し、新会社を設立して電灯製品の研究開発、生産に専門に従事させ、

iii)  生産品質不合格の行政処罰を受け、原告が蓄積した信用にマイナス評価をもたらし、消費者利益に損害を与え、社会公共安全に影響を与えた、
としました。
結果として、上記(1)、(2)の状況から、法院は商標法(2013年)の最高倍数である「三倍」を倍数として認定しました。

3.懲罰的賠償額を確定
 最終的な賠償額の確定では、 基数の127.75万元 * 三倍 ですが、権利者の訴訟請求額は300万元であったため、最終的な損害賠償額300万元が支持されました。請求額をもう少し高くすれば、より高額な賠償額が認められたのかもしれませんが、もしかすると請求額300万元に寄せるために、上記のような認定にしたのかもしれません。このへんはやはり裁判官の裁量です。

本典型案例の「典型意義」によれば、賠償額の基数と倍数を精密に計算して確定させたとして、重要な法律適用の指導価値があるとされています。

説明はここまでです。司法解釈により、悪意の認定や上場の深刻性の認定について、ある程度の考慮要素が示されているので、複数の懲罰的賠償案例を調査、比較することで、ある程度「倍数」が予測可能になるかな、、、とは思います。


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